掲載日:2010年05月17日 特集記事
記事提供/2010年1月24日発行 月刊ロードライダー 3月号
Report/石橋知也 Photo/渕本智信
パニアケースが付いただけではない。ジェントルで味わいある走りは、まさに伝統の日本製4気筒。都会も田舎道も高速道路もこの1台があればいい。本当に熟成されたツアラーの誕生だ。
ST専用がもたらす
快適性と扱いやすさ
専用アップハンドルは、昔の北米仕様を思い出した。低いコンチハンこそ本来の姿というのが日本の風潮だが、僕はモデルによっては例えばかつてのホンダCX500(日本名GL)などは、アップハンの北米仕様の方が軽々と扱えて気に入っていた。このSTのハンドルも同じで、窮屈感もないし、フロントが軽過ぎることもない。ST専用のワイドスクリーンも、ST用ハンドルのアップライトな乗車姿勢でちょうどいいウィンドプロテクションになり、かなりの速度域まで、そのままの姿勢で乗っていられる。
パニアケースは空力や運動性の悪化を招くことがあるけれど、STに限っては空荷でも片側10kgぐらいの積載でも、基本的なハンドリングに変化がなく、さすがだ(2人乗り+積載だとリヤの反応がゆったり目にはなる)。また、見た目にはかなり左右に出っ張っているけれど、少し慣れると都内のすり抜けもこなせて、結局10日ぐらい使ったけれども、外さずに毎日乗っていて支障はなし。
それより2本サスにありがちな高速域でうねりやギャップに乗ったときのリヤのドタバタ感 (左右のサスまわりがバラバラに動く感じ)、その動きでフロントを押してしまうような感じがほとんどない。これはSTでフレーム各部を補強したおかげかもしれない。スプリングの巻きなどを含め設定を変更した前後サス(全モデル)はとても動きが良く、ギャップも、まるでないかのようにスムーズに通過して乗り心地は極上だ。
エンジンは、シルキーでアイドリング付近から大排気量らしい豊かなトルクもあって、街中ですぐにトップの5速で入れられ、高速道路でも5速のままで楽々追い越しができる。このバイクに6速はいらない。というよりトルクを生かして5速で走るのが楽しい。8500rpmしか回らない4気筒ではなく、それで十分なパフォーマンスを持ち、味がある。全閉からのドンツキも、減速時の過度なエンブレもなく、PGM-FIのセッティングは素晴らしい。ブレーキは、慣れないうちはフットブレーキ(前後連動ABS)の効きが弱いと感じるけれど、これはあえてダルな設定にしてあるためで、強めに踏めば、ちょうどいい具合に前後が効き、神経質な操作は不要。逆にフロントはABS専用の、効力の立ち上がりが早い片押し3Pのおかげで、車重をものともしないシャープかつ強力なブレーキングが可能だ。スポーツライディングもカバーしてしまうSTなのだが、唯一気をつければならないのがバンク角だ。特に右は、サイレンサーがパニアケース装着で他モデルよりテールパイプ部から下がっているから注意したい。このバイクは、これまでのCB1300系からの派生モデルではなく、STというジェントルなオールラウンドツアラーとして考えてもらいたい。それほどの仕上がりと味があり、心豊かになる1台なのだ。
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