掲載日:2018年09月12日 トピックス
写真・文/絶版バイクス編集部 記事提供/絶版バイクス編集部
※この記事は「絶版バイクス vol.28」に掲載された内容を再編集したものです。
1979年に発売されたホンダCB750Fは、クラス最強の4バルブDOHCのエンジンとスポーティで未来感のあるデザインによって、ライバルを一気に古めかしくさせる魅力に溢れていた。地元石川県で当時17歳だったKさんは、限定解除の狭き門をくぐり抜けて限定車のCB750Fボルドール(ボル1)を新車で購入。
家を建てる当初から1階はKさんのためのスペースとみなされ、リビングやキッチンなどは2階から上に設置。娘さんのピアノが置かれたのは想定外だったが、ツールキャビネットやヘルメットはここにまとめられ、バイクを眺めてリラックスすることも多い。左奥は高校生時代に新車で購入したボルドール1。
社会人になって住所が変わっても、新車登録時の「石」一文字のナンバーで乗り続けたKさんは、10年後に友人が乗らなくなったCB750Fボルドール2(ボル2)の面倒も見ることに。しかし1990年代になると仕事が忙しく、バイクは義夫の家に預けるようになり、1994年の転勤をきっかけに完全に乗らなくなってしまう。
2台のCBをレストアしている時は、ハンドツールをまとめた特製ツールボードを傍らに、車体をバラバラに分解。奥さんや娘さんたちはその部品を横目に通学や外出をしていたというから、何とも奇妙な光景ではある。今もこのスペースでメンテナンスを行っている。
家族のバイクだからと快く預かってくれてはいたものの、置きっ放しのバイクは傷みが早い。あっという間に10年を過ぎる頃には見るも無惨な姿に成り果ててしまった。「本格的にバイクいじりができるのは定年になってからだろうな……」と将来を想像していたが、そこまで待っていたら赤サビになって消えてしまうと背筋が寒くなりレストアを決意。
玄関扉は一般住宅用サイズ。Kさん自身はもっと間口の広いドアを希望したが、全体の間取りからバランスが取れないと却下されたという。3年前、1970年代末のホンダフラッグシップモデルとしてどうしても欲しかったCBXを手に入れた時はドアを抜けられるか心配したが、ギリギリクリアできた。
10年ほど前に建て替えた自宅は、将来的にバイク用ガレージとしても機能するよう、玄関から入った土間部分に余裕のある間取りとした。今は大きくなった娘さんたちが小さな頃は、カーペットを敷くことで子供部屋として使っていたこともある。
最初からガレージとして使うことを宣言すれば家族からの意見や反発を受ける可能性があるが、家族の成長によって弾力的に運用できるスペースとして申請しておけば、認可される期待が高まる。このため玄関は人とバイクが共用することになるが、導線は1本で済むので土地の使い方の制約は減る。
自家塗装のフレームやエンジン、指紋が薄くなるほど磨いた表コムスター、プロの手による外装リペイントによって、新車で購入した1979年当時の雰囲気が完全に維持されているボルドール1。5万7,000kmあまりの走行距離は実走だ。
ここに2台のCBを運び入れ、復活作業を開始。当初はボル2を部品取りにしてボル1を復活させるつもりだったが、FZベースのボル1とFBベースのボル2ではパーツの互換性が低く、結局は2台ともレストアすることに。ガレージ、というより室内で足周りを外しフレームからエンジンを降ろし、フレームはウレタン缶スプレーを使って庭でペイント。異音もなく内部の程度が良かったエンジンもコンプリート状態で自家塗装。クランクケースカバーなどのアルミパーツは電動ドリルにバフ布を付けて研磨した力作である。外装部品はペイントショップに依頼したが、完成した車両は玄関で作業したとは思えない質感の高さである。
友人から譲り受けたボルドール2は、CB-Fオーナーズクラブのメンバーから「2台あるならボル2も直して乗りたいですよね」と言われて律儀にレストア。難易度の高い赤フレームに黒エンジンのペイントも、驚くほど上手い。
定年するより10年以上早くレストアを開始して良かったと思うのは、CB-Fオーナーズクラブに加入して多くのF好きと繋がれたことと、ヤフオクで純正部品が調達できること。年齢を重ねるに従ってノーマル指向が強くなり、マフラーなど程度の良い大物部品もヤフオクで探すことが多いそうだ。
新車で買った思い出とともに廃車の危機から救出したボル1、行程1,000km超えのツーリングも楽にこなせるボル2に加えてCBR929RRとCBXの4と、通勤用スクーターまで収まる玄関内側に広がるガレージ。「バイクと暮らす日常」をこれ以上ない濃密さで実践できる空間である。
神奈川県 Kさん/高等専門学校(高専)で5年学んだ後に大学に編入し、自動車メーカーのエンジニアとして働くKさん。学校柄バイクの免許は容認されており、クラスの大半がバイクに乗り、40人クラスの15人ほどは今も現役で乗っている。
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