掲載日:2018年08月28日 トピックス
写真・文/絶版バイクス編集部 記事提供/絶版バイクス編集部
※この記事は「絶版バイクス vol.28」に掲載された内容を再編集したものです。
1980~90年代のレーサーレプリカ世代にとって雑誌「バリバリマシン」はバイブルでありアイドルでもあった。どこの峠で誰が速いのか。それぞれが思い思いのカスタムで派手にカスタムしたマシンでチームを組み、コーナリングを競った時代。乗り続けているライダー、再び乗り始めたライダーも、あれから20年を経て、ガレージで和気あいあいと過ごせる仲間となった。
サーフィンやマリンスポーツが盛んで、箱根にも近い湘南に暮らす内藤智和さん。中学生の頃からバリバリマシンを立ち読みし、17歳でNSR250Rロスマンズ(MC21)を購入。休みの日は地元小田原から芦ノ湖、宮ヶ瀬方面まで出かけて峠を攻めるのが日課だった。
社会人として仕事を始めると徐々に峠から足が遠のき、結婚や子育てでNSRに触れる機会も減っていく。それでもいつか再び乗るつもりでナンバーだけは切らなかったが、軽自動車税を毎年払う張り合いも薄れ32歳の時に売却。NSRロスと言えば大袈裟だが、峠に通い詰めた頃の思い出が多い分だけ寂しさは大きかった。それからはスクーターや3輪のジャイロをカスタムして遊んでいたが、同世代がリターンしたり、今も走り続けていることを知ると矢も盾もたまらずもう一度MC21型NSRを購入。
それと前後して工務店の後輩に建築を依頼したのが、元は農機具小屋があった場所に建つ現在のガレージである。トヨタクレスタ(現在ナンバー返納中)とNSR、散歩用のスクーターが収まるガレージは一般住宅と同じ在来工法で建てられ、一部はロフト構造となっている。釘やビスが自由に打てる木造建築の利点を生かし、棚や作業台をDIYで追加し、アメリカンな雑貨をディスプレイすることでメンテ作業時の使い勝手と居心地の良さを両立。バイクの周辺には十分なスペースがあるから、仕事が終わって時間に余裕のあるときは平日でもNSRをいじることもあるそうだ。
そしてこのガレージの現在の重要な役割が、今もレプリカに乗るバイク仲間が集まる場となっていること。二十数年前にはマシンや走りを知っていても口も聞かなかったNSR乗りが、今では互いに子供の自慢と奥さんへの文句(?)に相づちを打って笑う。もちろん「あの部品を替えた」「この加工はどうだ」とバイクの話が途切れることはない。
休日に峠に走りに行っても家族とショッピングモールに出かける時間までには確実に帰宅するし、一日中走り続けるほどの体力がそもそもないという現実も、40代の現役レプリカライダーの悲哀を感じさせて微笑ましい。バイクは1990年代仕様でも、ライダーは間違いなくオジサンなのだ。けれども、同じ経験をしてきた同世代ならではの気心の知れた居心地の良さがこのガレージにはある。