【ホンダ CRF1100Lアフリカツイン〈s〉 試乗記】ロングツーリングからダート遊びまでバランスよく楽しめる“脚長”アドベンチャーマシン

掲載日:2024年06月01日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

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HONDA CRF1100L Africa Twin〈s〉

国産アドベンチャーツアラーの中でも、抜群の人気と完成度の高さを誇るのが、ホンダのCRF1100L Africa Twin(アフリカツイン)シリーズだ。排気量アップなど度重なる改良を重ねているが、このほどさらに進化した2024年モデルが発売となった。その熟成度はどれほどになったのか、今回はCRF1100Lアフリカツイン〈s〉のMTモデルに試乗して確かめてみた。

ホンダ CRF1100Lアフリカツイン〈s〉 特徴

細かい改良で熟成を重ねる
王道のアドベンチャーツアラー

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まず初めに、ホンダのアフリカツインシリーズについてごく簡単におさらいしておこう。アフリカツインの名は、かつて1988年~2000年にかけて発売されていた大排気量オフロードモデルに由来する。その名を復活させ、2016年に登場したのがCRF1000Lアフリカツインだ。クラッチ操作の必要がないDCTモデルが用意されたこともあり、アドベンチャーモデル人気を支える車種となった。その後バリエーションモデルとして燃料タンクが大型化された「アドベンチャースポーツ」の発売や、スロットルバイワイヤ化、ライディングモードの搭載、グリップヒーターやETC2.0車載器の標準装備化など細かい変更が加えられた。

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2020年には排気量がアップされたCRF1100Lアフリカツインへとモデルチェンジが行われ、その際にシート高や最低地上高が少し低くなり乗りやすくなった。そこでオフロードでの走行性能を重視し、前後サスのストロークを伸ばしたモデルとしてCRF1100Lアフリカツイン〈s〉が登場。2022年には平成32年(令和2年)排出ガス規制に適合するマイナーチェンジが行われ、その際にデイタイムランニングライト(DRL)の採用やリアキャリアの標準装備化などが行われた。この時点でのシリーズはスタンダードなアフリカツインと、燃料タンクを大型化し電子制御サスを採用した「アドベンチャースポーツES」という2つの車体にそれぞれマニュアルクラッチとDCT、ノーマル車高と脚長の〈s〉が用意され、ラインナップは8種類にもなっていた。

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2024年モデルでは〈s〉とアドベンチャースポーツES、それぞれにマニュアルミッションとDCTという4種に絞られ、アドベンチャースポーツESはフロントが21インチから19インチに変更されたことでよりツアラー寄りに。オフロードも楽しむなら〈s〉、という、よりしたはっきりとキャラクター分けがされたラインナップとなった。

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今回試乗したCRF1100Lアフリカツイン〈s〉は、2024年モデルから5段階に調整できるスクリーンとチューブレスタイヤを新たに採用。圧縮比とバルブタイミングの変更などにより最大トルクの向上が図られるなど、細かい点がリファインされている。

ホンダ CRF1100Lアフリカツイン〈s〉 試乗インプレッション

シリーズの中でもオフロード走行を重視
「その気にさせてくれる」マシン

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筆者は身長170cmで足は短めという体格だが、CRF1100Lアフリカツイン<s>の実車を目の前にすると、腰高というかシートが高めだな、と感じる。シート高は870(ローポジションは850)mmで、同じアフリカツインでもアドベンチャースポーツESのほうはシート高が840(ローポジションは820)mmで、<s>のほうが30mm高い設定だ。どちらも大きい印象だが、24Lタンクを持つアドベンチャースポーツESは横に大きく、18Lタンクの<s>はスリムではあるが縦方向に大きい印象だ。

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シートをローポジションにセットして跨ると、両足ではツンツン、片足では母指球まで着くため十分支えられるものの、重さがあるのでグラリと来たときは不安がある。サイドスタンドからマシンを起こすにも、ちょっとした気合いが必要だった。だが、一旦走り出してしまえばそんな不安もどこへやら。ライディングモードをスポーティな「ツアー」にセットすると、一般道での信号待ちからのスタートはもちろん、首都高速など短い区間での合流においても、トルクフルで力強いダッシュを見せてくれる。しかも「あれ、アフリカツインの加速ってこんなに荒々しかったっけ?」と思うほど。従来モデルで試乗したのがDCT仕様だったこともあるかもしれないが、その際の加速はもっとジェントルな印象だった。今回のマイナーチェンジで圧縮比とバルブタイミングの変更により最大トルクがアップしているが、おそらくその効果もあるのだろう、よりワイルドな加速感が味わえる仕上げになったと感じる。「街中やツーリング先ではもっとゆったりでいい」というライダーには、「アーバン」モードにすれば穏やかな味付けの走りを選ぶことができる。

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オフロード志向が強め、とはいっても、ツアラーとしての資質も従来通り十分持ち合わせていることに変わりはない。操縦安定性の高い車体は、高速道路でもどっしりとした安定感があり、レーンチェンジや追い越しの際には瞬時に必要なパワーを引き出せるなど、ゆったりとした走りとクイックな動作をどちらも楽しめる余裕がある。クルーズコントロールと高さ調節が可能になったスクリーンのおかげで、遠距離ツーリングにおいても疲労が少なく、ライダーを飽きさせない。アフリカツインシリーズのツアラーとしての性能の高さは、すでに読者の皆さんなら十分ご存じのことだろう。

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ではダートではどうなのか、がやはり気になるところだ。CRF1100Lアフリカツイン<s>は、フロントフォークのストロークが230mmとクラス最長、リアサスのストロークは220mmで、これはアドベンチャースポーツESよりもそれぞれ20mm長い。また最低地上高も30mm多い250mmとなっている。要はかなりの脚長仕様ということだ。これがもたらしてくれるのは、軽快さと安心感の両立だ。フラットな林道を走っていても、時に深めの轍や段差が現れたりすることがあるが、そんな時でもサスの底突きをあまり気にすることなく走れたり、不意のラインの乱れに対しても余裕をもって修正できる走破性の高さを確保できるのは、フロント21インチと脚の長いサスのおかげだと感じる。今回はMT仕様のため、大きめの石や段差を乗り越えたりする際にも、半クラッチを使って意のままにパワーの伝達をコントロールすることができたため、「ちょっとぐらい荒れた場所で遊んでも大丈夫かな?」という気持ちにさせてくれた。実際には231kgという車重のため、よっぽど腕に自信がない限りはそうそう攻めた走りはできないが、マシン任せであっても「その気にさせてくれる」のは、大いに意味のあることではないだろうか。

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オンロードを中心に長距離をどこまでも疲れず走りたいならツアラー志向の「アドベンチャースポーツES」、それに対して<s>は、ロングツーリングから林道走行、時にはちょっとハードなダート遊びまでバランス良く楽しみたい、というライダーに向いているマシンといえるだろう。

ホンダ CRF1100Lアフリカツイン〈s〉 詳細写真

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昼間はデイタイムランニングライト(DRL)、暗くなると自動的にロービーム点灯に切り替わるモードを搭載。キャンセルして手動切り替えもできる。

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6.5インチのタッチパネル式フルカラー液晶を採用。ライディングモードや各種設定を直射日光下でも見やすく表示するほか、スマホと接続して様々なアプリを利用できる。

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ハンドル左側のスイッチボックスには、メーターの表示切替やファンクションスイッチなどが所狭しと配置されている。きちんと使いこなすには説明書の熟読が必要かも。

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ハンドル右側はスターター/キルスイッチと、クルーズコントロールの操作ボタン、ファンクションスイッチというシンプルな配置だ。

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スクリーンには新たに5段階の調節機能が採用された。両サイドのパーツを同時につまむとスクリーンを上下に動かせる。

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写真はスクリーンを最大まで伸ばした状態。低い位置よりも立ちが強くなるが、計算された穴の形状のためか、高速走行でも巻き込み風が少なく防風効果は向上している。透明部にはバイオ由来で環境に優しい素材を採用。

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カウル内側左サイドには、シガーソケットタイプのアクセサリー電源を装備。上向きなので雨天時の使用は厳しい。

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カウル内側の右サイドにはUSBタイプAのアクセサリー電源ポートを備える。差し込み口がかなり奥まっているので少々使いづらいかも。

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シートはセット位置によって870mm/850mmに可変できるアジャスタブル式を採用。写真はローポジションで、リアシートとの間には段差ができている。

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リアキャリアを標準で装備。10kg以下まで対応するガッチリとしたもので、純正アクセサリーのトップボックスのベースとしても利用できる。

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最低地上高が250mmもあるため、少々の段差や石を乗り越えるぐらいは問題ないが、スキッドプレートを標準で装備しているため、さらに安心感がある。

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220mmのアクスルストロークを確保したリアサスペンションは、ダイヤルによって簡単にプリロードの調整が可能だ。

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シート下にはETC2.0車載器を標準で装備。フロントシートの裏側には書類収納スペースがあり、リアシートの裏側にはドライバーとヘキサゴンレンチが格納されている。

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ステップにはラバーが装着され、振動を軽減。ペダルは可倒式となっている。サイドスタンドの底面積はもう少し広くしてほしいところだ。

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フロントのタイヤサイズは90/90-21M/C 54H、今回のマイナーチェンジでチューブレスとなった。銘柄はMETZELERのKAROO STREETを履く。ブレーキのローター径は310mmだ。

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リアのタイヤサイズは150/70R18M/C 70Hで、ディスクブレーキのローター径は256mmだ。オンロード、オフロードそれぞれに適したモードが選べる選択式ABSを採用している。

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スッキリしたデザインを持つリアビュー。灯火類はすべてLEDで、テール/ブレーキランプは大き目で被視認性も十分確保されている。

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ライダーは身長170cmで足は短め。CRF1100Lアフリカツイン<s>のシート高は870mm/850mmの2段階に調整できる。写真はローポジションの850mmで、両足ではつま先がやっと着く。片足では母指球まで接地するが、車体を傾けないよう注意が必要だった。

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