【Page6】あらためて見る250トレール4車の細部

掲載日:2010年02月17日 特集記事旅とアソビの250トレール    

2009年1月1日発行 月刊ガルル No.273より記事提供

旅とアソビの250トレール Viva 250!

あらためて見る250トレール4車の細部

 

今回のツーリングを経てからあらためて4車を比較すると、排ガス規制をクリアすることでライディングフィールもかなり洗練された、という一面が見えてきた。WRはあらゆるシーンでライダーのイメージ以上の走りを実現した。エンジン、フレーム、足まわりのすべてが最新なので、ある意味当然の結果と言えるかもしれない。

しかし、既存の車体にインジェクションやキャタライザーを装備して排ガス規制をクリアしてきたKLXとセローも、カタログスペック以上に快活な走りを披露してくれた。KLXはかつての「闘う4スト」のイメージは薄れたけれど、逆にトレールモデルらしい扱いやすさが幅広いライダー層に感じられるように仕上がっていた。

セローは足着き性のよさはそのままに、フルサイズ250トレールと遜色ない高速巡航性能も手にしていた。全域でレスポンスがよく、軽快な挙動を実現し、ビギナーにも乗りやすい特性になっていた。これら3車と比較すると、キャブレターのXRにはガサツさを感じてしまう。林道での軽快な乗り味は未だに健在で、転倒する気がしない安心感もあった。だが、標高や気温によってレスポンスが左右され、高速道路では振動やメカノイズが大きく、疲労の原因となった。軽快感よりもガサツさを感じるシーンが多く、そこに古さを感じてしまう。

WR、KLX、セローが3車3様の新たな魅力を身につけて規制をクリアしてきた今、次世代XRはどんなマシンとなって登場するのか? 期待せずにはいられないのだ。

価格:70万1400円

ホイールベース:1425mm シート高:895mm
最低地上高:300mm

TT-R250以来、久々の登場となったフルサイズ4スト250トレール。それまでの基準を大幅に超えるレーサー並みの動力性能を実現しつつ、トレールらしい乗りやすさも兼ね備えている。万能という言葉がふさしい1台。

価格:51万8000円

ホイールベース:1430mm シート高:890mm
最低地上高:285mm

キックオンリーの元祖「闘う4スト」KLX250SRとして誕生。その後セル付きモデルKLX250ESと統合され、新たにKLX250となった。熟成されるほどマイルドな特性となった、扱いやすいフルサイズ250だ。

 

価格:54万6000円

ホイールベース:1425mm シート高:875mm
最低地上高:285mm

扱いやすさと信頼性に定評あるRFVCエンジンを搭載。突出した性能はない代わりに、全方位でバランスよくまとめられている。4スト250トレールの定番と呼ばれた。ガス規制により現在は生産中止となっている。

価格:51万4500円

ホイールベース:1360mm シート高:810mm
最低地上高:285mm

セロー225として誕生してから20年目に、フルモデルチェンジを敢行。排気量をアップし、セロー250へと進化した。オンロードでの快適性を大幅に向上し、トレッキングからトレール寄りの味付けになっている。

 

ボア×ストローク:77.0mm×53.6mm

最高出力:23kW(31ps)/10000rpm

最大トルク:24Nm(2.4kgfm)/8000rpm

ボア×ストローク:72.0mm×61.2mm

最高出力:18kW(24ps)/9000rpm

最大トルク:21Nm(2.1kgfm)/7000rpm

ボア×ストローク:73.0mm×59.5mm

最高出力:21kW(28ps)/8000rpm

最大トルク:25Nm(2.6kgfm)/7000rpm

ボア×ストローク:74.0mm×58.0mm

最高出力:14kW(18ps)/7500rpm

最大トルク:19Nm(1.9kgfm)/6500rpm

 

とかく最高出力に目を奪われがちだが、注目すべきは最大トルクとその発生回転数。頭打ちは早いにも関わらず、XRがダートで軽快な走りを見せる秘密は最大トルクの太さにあった。WRは文字通り高回転型だが、開けて走るよう急かされることもある。セローは低速域からレスポンスがよく、発生回転も低めなので、数値以上のトルク感がある。KLXはエンジン回転がマイルドなため、数値ほどのトルク変動がなく、フラットな印象だ。

 

トレールバイクのヘッドライトは、かつて提灯と呼ばれた時期もあった。その頃のモデルと比較すれば、今回の4車はすべて十分な光量を確保していると言える。その中でも一段と明るいのがKLXだ。新設計フロントカウルには2灯式ヘッドライトが組み込まれ、光量、照射範囲とも他を圧倒する明るさを発揮し、ナイトランでの安心感は全員が認めたほど。XRは後にマルチリフレクターを採用し、より明るくてクリアな視界を確保した。

 

WRは初期の動きで路面からの衝撃をいなし、林道でサスストロークを使い切るなんて感じられないほどだった。K L XとX Rはサスストロークをたっぷりと使うセッティング。サスを動かして乗るライダーには、乗りやすさと乗り心地のよさを与えてくれる設定になっている。唯一の正立サスのセロー。低速域でのしなやかさが抜群なのだが、そこから少しペースを上げていくと、底突きしやすくなってしまう。もう少しストローク量がほしいという意見が聞かれた。

 

XRのアナログはスピード変化を視覚的に捉えやすいが、機能は少ない。WRはコンパクトながら、オンタイム制エンデューロやラリーにも使える多機能デジタル。だが、慣れるまでは見にくさを感じることもある。セローはツイントリップに時計とシンプルだが、表示も大きく視認性は文句なし。KLXはデュアルトリップ、時計のほかにタコメーターを搭載。ダートで見る余裕はないが、舗装路では回転数をしっかり把握でき楽しい。

 

WRはイニシャル調整、伸び側圧側の減衰力調整ができるフルアジャスタブル式で、ホイールトラベルは270mm。KLXも同じくプリロード調整、伸び側圧側を16段階に調整可能なユニトラックサスペンション。XRも伸び側22 段階、圧側24段階に調整できるプロリンク式で、ホイールトラベルは260mm。セローはボトムリンク式モノクロスサスペンションで、ホイールトラベルは225mm。

 

XRとセローのチェーンアジャスターはスネイルカムだが、WRとKLXはレーサータイプのチェーンアジャスターを採用している。スネイルカムは調整作業は楽だが、精密な調整はできない。レーサータイプは調整作業に少し手間がかかるが、精密に調整できるので、パワーロスを最小限に抑えることができる。また、KLXは新設計のD断面アルミスイングアームを新たに採用し、バネ下重量の軽減に貢献している。

 

XRは工具を使うことなくエアクリーナー交換ができるが、残りの3車は工具を使わないと交換できない。WRはサイドカバー、セローはシートを取りはずせばいいのだが、KLXはサイドカバー、シートなどエアクリーナーボックスへアクセスするまでも手がかかる。日常のメンテナンスでは問題ないが、レース参戦時などのメンテナンス性は悪いと言わざるを得ない。FI車は、いじられたくないという空気を漂わせているようだ。

 

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