
掲載日:2013年03月21日 エクストリーム › モトクロス
文・まとめ/宮本 将平
先週のデイトナでポイントリーダーのデイビー・ミルサップス(スズキ)が今シーズン初の惨敗(10位)を喫したのと対照的に、ランキング2位のライアン・ビロポート(カワサキ)が勝利したため、ミルサップスはキックオフから9ラウンド守っていたレッドプレートをビロポートへ譲る事となった。序盤戦こそリザルトにまだらがあり、なかなかディフェンディングチャンピオンの仕事が出来なかったビロポートも、気が付けばデイトナラウンドを終えた時点で5勝。特に、ラウンド7のアーリントン以降は優勝3回、2位1回という圧倒的な強さを見せている。ただ、2位のミルサップスもわずか2ポイントのビハインドでしっかりトップに戻る可能性がある。そして、3位のライアン・ダンジー(KTM)もほとんどのレースでポディウムに登る強さを見せていて、未だしっかりタイトルを狙えるポジションにいる。
彼らとは対照的に、プラクティス、ヒートレースではビロポートと互角以上で戦うジェイムズ・スチュワート(スズキ)は、メインレースではなかなか結果を出す事が出来ず苦しんでいる。最近は、2012年シーズンでよくあったスリップダウンなどが目立ってきている。今回のトラックはコンパクトでソフト、毎ラップコンディションが悪化するような難しいトラックだったが、ヒートレースはビロポート、スチュワートの2人が勝利し、他のトップライダーたちもそれぞれ上位フィニッシュでメインレースへと進んだ。
メインレース(20周)、ホールショットはミルサップス、後ろにスチュワート、マット・ゴーキー(KTM)、ビロポートが続く。1ラップ目の最初のリズムセクションでミルサップスはミスをし、すぐにスチュワートにトップを譲ってしまう。すぐ後ろを走るビロポートも早々とゴーキーをパスし、トップの2人にリードを与えない。3ラップ目、フィニッシュジャンプの手前で、8位を走っていたトレイ・カナード(ホンダ)がジャスティン・バーシア(ホンダ)に並ばれ、そのままスクラブしながらフィニッシュジャンプに入った2人は接触。カナードは空中分解し体だけで地面に叩きつけられ、ここでDNF(Did Not Finish リタイア)となってしまった。代わってトップ集団は、スチュワートが2位のミルサップスに約2秒のアドバンテージを築いていて、快調な様子を見せていたが、5ラップ目に轍が深くなってきたヘアピンコーナーでつまづき、エンジンをストップさせてしまう。その間にビロポート、ミルサップス、ダンジー、アンドリュー・ショート(KTM)がスチュワートをパスして行ったため、スチュワートは先週と同様、自滅という形でトップグループから姿を消す。ここからダンジーは、前を走るミルサップスをキレのあるアグレッシブルなライディングでパスし、トップのビロポートへの距離を詰め始める。10ラップ目、ビロポートのミスの間に距離を縮めたダンジーだったがパスするまでには至らず、ビロポートもダンジーからのプレッシャーにも動じないライディングでトップを守り続ける。ファイナルラップ、トップ争いはビロポートがある程度のリードを保ちながら快走を続けていたが、3位争いが熱くなっていた。フィニッシュジャンプ後のフラットなヘアピンコーナーで、ミルサップスがスリップダウンした隙に一度は後退したスチュワートが前に出る。その後はビロポート、ダンジー、スチュワートという順位のままでフィニッシュとなった。
今回も中盤戦以降、圧倒的な強さを見せているビロポートがパーフェクトレースで勝利した。この轍だらけの難しいコンディションの中、ほぼノーミスで20ラップを走り切ったのは流石。そろそろシーズンも中盤から後半に差し掛かる2013シーズンだが、タイトルは徐々にビロポート、ミルサップス、ダンジーの3人に絞られて来た。その後ろで4位を争っている、チャド・リード(ホンダ)、バーシア、カナードの3人もポイント差があまり無いため、これからますますヒートアップして来るだろう。次週は国境を越え、カナダ、トロントでのラウンド12。来週も絶対に熱いレースになる予感がする。
順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 | メーカー | ベストタイム | |
1 | 1 | R・ビロポート | Monster Energy Kawasaki | Kawasaki | 50.902 | |
2 | 5 | R・ダンジー | Red Bull KTM | KTM | 50.991 | |
3 | 7 | J・スチュワート | Yoshimura Suzuki | Suzuki | 51.242 | |
4 | 18 | D・ミルサップス | Rockstar Energy Drink | Suzuki | 51.293 | |
5 | 51 | J・バーシア | Team Honda Muscle Milk | Honda | 52.165 | |
6 | 22 | C・リード | TWOTWO Mortorsports | Honda | 51.552 | |
7 | 29 | A・ショート | BTOSports.com/KTM | KTM | 52.086 | |
8 | 62 | M・ゴーキー | BTOSports.com/KTM | KTM | 52.356 | |
9 | 17 | E・トマック | GEICO Honda | Honda | 52.139 | |
10 | 46 | W・ペイック | - | Suzuki | 53.810 | |
11 | 20 | B・ティックル | RCH Suzuki | Suzuki | 52.877 | |
12 | 75 | J・ヒル | RCH Suzuki | Suzuki | 53.371 | |
13 | 10 | J・ブレイトン | JGRMX Toyota Yamaha | Yamaha | 53.979 | |
14 | 49 | P・ニコレッティー | N-Fab TiLUBE Yamaha | Yamaha | 54.673 | |
15 | 85 | K・パートリッジ | - | Honda | 54.857 | |
16 | 64 | J・サイプス | - | Kawasaki | 54.789 | |
17 | 800 | M・アレッシ | Motoconcepts Racing | Suzuki | 54.735 | |
18 | 39 | R・キナイリー | N-Fab TiLUBE Yamaha | Yamaha | 55.437 | |
19 | 41 | T・カナード | Musklemilk HONDA | Honda | 54.180 | |
20 | 12 | J・ワイマー | Monster Energy Kawasaki | Kawasaki | 57.856 |
順位 | ゼッケン | ライダー名 | メーカー | ポイント | |
1 | 1 | R・ビロポート | Kawasaki | 227 | |
2 | 18 | D・ミルサップス | Suzuki | 218 | |
3 | 5 | R・ダンジー | KTM | 210 | |
4 | 22 | C・リード | Honda | 178 | |
5 | 51 | J・バーシア | Honda | 168 | |
6 | 41 | T・カナード | Honda | 165 | |
7 | 7 | J・スチュワート | Suzuki | 155 | |
8 | 29 | A・ショート | Honda | 136 | |
9 | 10 | J・ブレイトン | Yamaha | 112 | |
10 | 20 | B・ティックル | Suzuki | 109 | |
11 | 62 | M・ゴーキー | KTM | 108 | |
12 | 800 | M・アレッシ | Suzuki | 83 | |
13 | 12 | J・ワイマー | Kawasaki | 79 | |
14 | 46 | W・ペイック | Suzuki | 56 | |
15 | 17 | E・トマック | Honda | 52 | |
16 | 33 | J・グラント | Yamaha | 40 | |
17 | 55 | J・アルバートソン | Honda | 38 | |
18 | 11 | K・チゾム | Yamaha | 38 | |
19 | 47 | M・ラモイン | Kawasaki | 34 | |
20 | 39 | R・キナイリー | Yamaha | 31 |
マービン・ムスキャン(KTM)がホールショットから完璧なレースで勝利を飾ったデイトナから一週間、今週はインディアナポリスで250クラスイーストのラウンド5が開催された。ポイントスタンディングではウィル・ハーン(ホンダ)、ディーン・ウィルソン(カワサキ)、ムスキャン、ブレイク・ウォートン(スズキ)の4ライダーがタイトルを争う大混戦のシーズンとなっているが、なんとヒートレースでランキング2位に着けているウィルソンが1ラップ目のリズムセクションでのクラッシュで大ケガを負い、LCQ(ラストチャンスクォリファイ)にさえ進む事が出来ないという事態が起きてしまった。昨年も、スーパークロスシーズン中のクラッシュによるケガでタイトルを逃し、さらにはアウトドアシーズンもケガでエントリーが出来なかったウィルソンにとっては、今シーズンも厳しい状況となってしまった。タイトルを争っている他の3ライダーは順当にメインレースへと駒を進めたが、ウィルソンがタイトル争いから脱落してしまったのはファンにとっても、残念な結果だ。
メインレース(15周)、ホールショットを奪ったのはウォートン。カイル・ピーターズ(ホンダ)がすぐにトップを奪うが、リズムセクションの出口でウォートンが再びトップを奪い返す。先週のウィナー、ムスキャンはスタート直後にジェームス・デコティス(ホンダ)が引っ掛けたタフブロックにぶつかるという不運に見舞われ、後方からのスタートとなってしまう。またハーン、ジェレミー・マーティン(ヤマハ)も同じくスタートで前に出る事が出来ず、後方からのレースとなってしまった。トップのウォートンは徐々に後続との距離を開け始め、5ラップ目には2位を走るピーターズに約4秒のリードを確保していた。しかし後ろからはムスキャンが驚異的なペースで追い上げ、7ラップ目にはついにポジションを5位までアップさせた。一方、ポイントリーダーのハーンも徐々にポジションを上げ、8ラップ目にはムスキャンのすぐ後ろにまで着ける。
10ラップ目、絶好調のムスキャンはさらに3位を単独で走っていたA J・カンタザーロ(カワサキ)をリズムセクションで捕らえ、ポディウム圏内へとポジションをアップ。さらに前を走るピーターズをもパスし、残り1.5周の時点でトップのウォートンに約3.5秒というところまで迫っていた。そして迎えたファイナルラップ、なんと優勝目前だったウォートンがフープスでクラッシュ。徐々に後から迫って来ていたムスキャンにプレッシャーを感じていたのだろうか。もちろんムスキャンはその隙にトップを奪い、そのままトップでチェッカーを受けた。2位にはプライベーターのピーターズ、3位にはポイントリーダーのハーンが入った。転倒したウォートンは、結局5位でフィニッシュという、ラストで劇的な動きのあったレースとなった。
ムスキャンの2連勝で幕を閉じた今週のインディアナポリスラウンド。タイトル争いを繰り広げていたウィルソンは今回のノーポイントにより、完全にタイトル争いからは取り残されてしまった。また、今回惜しくも優勝を逃したウォートンも、トップのハーンからは20ポイント離されてしまったため、こちらもタイトル獲得は難しくなってきたように見える。タイトルを争うハーン、ムスキャンの2人は共に2勝づつ挙げ、ポイント差もわずか9ポイント。残り4ラウンドとなった250クラスイーストはどう展開していくのだろうか。
順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 | メーカー | ベストタイム | |
1 | 25 | M・ムスキャン | Red Bull KTM | KTM | 52.509 | |
2 | 50 | K・ピーターズ | AG Motorsports | Honda | 53.886 | |
3 | 19 | W・ハーン | GEICO Honda | Honda | 53.366 | |
4 | 73 | A J・カタンザーロ | Pilgrim Powersports | Kawasaki | 53.626 | |
5 | 317 | J・ヒル | Monster Energy/Pro Circuit/Kawasaki | Kawasaki | 54.187 | |
6 | 42 | V・フリージー | - | Honda | 54.753 | |
7 | 248 | M・オールデンバーグ | Core MX Performance | Honda | 54.813 | |
8 | 67 | G・フェイス | Motoconcepts Racing | Honda | 54.016 | |
9 | 13 | B・ウォートン | Rockstar Energy Drink | Suzuki | 53.201 | |
10 | 69 | P・ラーセン | Eleven 10 Mods | Yamaha | 55.015 | |
11 | 552 | S・クラーク | Sher Racing | KTM | 56.077 | |
12 | 613 | J・デコティス | High octane Harley Davidson | Honda | 55.223 | |
13 | 167 | Z・ベル | GEICO Honda | Honda | 54.589 | |
14 | 71 | Z・フリーバーグ | maykers/witts end racing | Honda | 55.199 | |
15 | 412 | L・キルバーガー | - | Honda | 55.821 | |
16 | 48 | C・トンプソン | - | Honda | 54.754 | |
17 | 393 | D・ヒーレイン | A&Y Racing | Honda | 55.598 | |
18 | 194 | J・リチャードソン | XPR Racing | Honda | 54.656 | |
19 | 87 | L・ビンセント | Munn Racing KTM | KTM | 54.865 | |
20 | 77 | J・マーティン | Star Racing Yamaha | Yamaha | 53.770 |
順位 | ゼッケン | ライダー名 | メーカー | ポイント | |
1 | 19 | W・ハーン | Honda | 112 | |
2 | 25 | M・ムスキャン | KTM | 103 | |
3 | 13 | B・ウォートン | Suzuki | 88 | |
4 | 15 | D・ウィルソン | Kawasaki | 87 | |
5 | 50 | K・ピーターズ | Honda? | 67 | |
6 | 317 | J・ヒル | Kawasaki | 67 | |
7 | 42 | V・フリージー | Honda | 65 | |
8 | 77 | J・マーティン | Yamaha | 53 | |
9 | 67 | G・フェイス | Honda | 40 | |
10 | 613 | J・デコティス | Honda | 43 | |
11 | 248 | M・オールデンバーグ | Honda | 49 | |
12 | 48 | C・トンプソン | Honda | 42 | |
13 | 167 | Z・ベル | Honda | 37 | |
14 | 73 | A J・カタンザーロ | Kawasaki | 36 | |
15 | 69 | P・ラーセン | Honda? | 30 | |
16 | 87 | L・ビンセント | KTM | 30 | |
17 | 71 | Z・フリーバーグ | Honda | 29 | |
18 | 412 | L・キルバーガー | Honda | 17 | |
19 | 552 | S・クラーク | KTM | 16 | |
20 | 194 | J・リチャードソン | Honda | 14 |
WEB・GRAPHIC DESIGNER/PHOTOGRAPHER 元プロMXライダー。トランスワールドMX編集部を経て、同社でデザイナーとして勤務。退社後に独立、いわきで バンザイマガジン (FMXフリーマガジン)を立ち上げ、編集長を勤めている。
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