掲載日:2011年05月31日 バイク基本整備のイロハ › 工具の使い方実践
ステアリングステムに用いられ、「ステムナット」とか「スロッテッドナット」などと呼ばれるナットは、丸い外周の何カ所かに切り込みが入った独特の形状で知られています。ナットというものの、スパナやメガネレンチでは回すことができないこのナットをいじるには、アーチ状の先端にフックが付いた専用のレンチが必要です。
さまざまな径のナットに対応する
可変サイズのフックレンチ
スライド式リングスパナ(上)と一緒に写っているのは、クラッチケーブルやアクセルワイヤーなど鋼の「より線」をスパッと切断するワイヤーカッターです。ワイヤー切断を通常のニッパーで行うと、より線がバラバラにほぐれてしまいシャープな切断面が得られない。このカッターは、焼きの入ったステンレスならφ2mm、それ以外ならφ4mmのワイヤーまでスパッと切断できます。2枚の刃がそれぞれ鋭い片刃で、押し切るように切断するのでより線も美しい断面で仕上がるのが特徴です。 |
締め付け具合によってハンドルの操作性に大きな影響を与えるステアリングステムナット。このナットはフレームのヘッドパイプ上下にセットされたステムベアリングに加える圧力を決めていて、締めすぎればハンドルの切れが重くなってスムーズなコーナリングの妨げになり、緩めすぎれば路面からの衝撃によってガタつきが出るなど、デリケートな扱いが求められる部分です。
通常、ボルトやナットは締め切って止めるものが多い中で、ステムナットはちょうど良い具合に締めるという、ビギナーにはちょっと難しい要素を含んでいるのです。加えて、ここに使われているナットはドーナッツの外周に何カ所かの切り欠きが入った独特の形状で、スパナやモンキーレンチでは回せないという特徴があります。ベテランの中には、この切り欠きにマイナスドライバーやピンポンチやタガネを当てて叩いて回す人もいるようですが、微妙な調整が難しいのは言うまでもありません。
そんなステムナットを回すのに適した工具がフックレンチ、リングスパナと呼ばれるアイテムです。薄いプレートで円弧を描いた先端に突起(またはピン)を持つフックレンチは、ナットの切り欠きに引っかかるようにデザインされていて、微妙な締め付け調整を可能にします。トップブリッジとヘッドパイプの狭い隙間にあることが多いステムナットは、それ自体の厚みが少ないため、工具にも薄さが求められるのです。
このリングスパナ、基本的には回すナットの大きさによっていくつものサイズが用意されています。スパナのように1mm刻みということはありませんが、直径40mmのナットと60mmのナットではフックレンチの円弧の大きさが異なるため、別のレンチを用意する必要があります。
そうした不便さを解消するために存在するのが、モンキーレンチのようなウォームギアで開口幅を調整できるスライド式のリングスパナです。バイク用品メーカーのデイトナが発売する製品は、ピンと反対側の受け側が無段階で移動することで、直径35mmから75mmのナットを締めたり緩めたりすることができるのです。この工具はステアリングステムナットの締め付けや調整に使えるのはもちろんですが、リアサスペンションのプリロード調整にも重宝します。アジャストナットの径が75mmを超えるような、ダンパーボディの太い1本サスでは使えないものもありますが、一般的な2本サスならほぼすべての調整が可能となるはずです。
ただ、ナットやそれがセットされた場所や、あるいはサスペンションのプリロードアジャストナットの中には、切り欠きではなく丸穴が開いているものもあるためこのレンチのピンが掛かりづらい、あるいは形状が合わない場合もあるかも知れません。その際は、先端が丸ピンタイプのレンチを用意しましょう。
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