掲載日:2011年04月26日 バイク基本整備のイロハ › 工具の使い方実践
ねじとドライバーの形状からして、プラスねじでは回転力を与えると互いに離れていこうとする「カムアウト」は避けられません。そのためドライバーのグリップは回すだけでなく効率よく押すことができるデザインを採用しています。今回紹介するT型ドライバーは、一層強い押しつけ力を得るのに最適なアイテムです。
力を入れやすいだけでなく
早回しにも適したデザイン
プラスねじの多くはエンジンパーツや車体周りのパーツ、さらにハンドルスイッチなどの操作系パーツの固定などに使われています。一般的にボルトやナットよりもねじ径が細く、締め付けトルクも比較的小さいはず。それゆえ、わりと気安くドライバーを当てている人もいるのではないでしょうか。
しかし、これまでドライバーの紹介を続けてきた中で何度となく説明したとおり、ねじ1本を回すだけにもドライバー先端とねじ溝のサイズのマッチングや、特にプラスねじにつきまとう「カムアウト現象」を軽減するためにドライバーをねじにしっかり押しつけながら回すといった使用方法など、なかなか奥が深いものがあります。
ねじを締める時、緩める時でどちらが緊張するかといえば、比べるまでもなく圧倒的に緩める時が緊張するし、ねじ溝を傷める危険性が高い。回そうとするねじがどれも状態が良好で、いつも適正なトルクで締まっているとは限らないし、ちょっと古いバイクをいじれば、ねじ山がサビていたり、ねじ溝が崩れていたりと何らかの問題を抱えたねじに当たる方が多いくらいです。そんなねじに遭遇したら、例えば防錆潤滑剤をスプレーしたりねじの頭を修正したり、インパクトドライバーを使ったりしますが、いずれの場合もねじを押す力が重要であることは間違いありません。
通常のドライバーのグリップも、握って回す動作とともにねじへの押しつけ力を伝えやすいデザインを採用しているものが多いのですが、中には押す力に特化したドライバーもあります。コーケンブランドでおなじみの山下工業研究所製のT型ドライバーは、細いドライバー軸に幅の広い軸型ハンドルを溶接した、T型レンチと同じデザインのドライバーです。両手でハンドルを押さえつければ、普通のドライバーグリップで押すよりも、はるかに大きな力でプラスねじを押すことができます。そしてハンドルに体重を掛けるようにしながらねじを回せば、カムアウト現象も起こしづらいという特徴もあります。樽型のグリップこそありませんが、構造的には貫通ドライバーと同じなので、固着したねじに対しては軸部のエンドをハンマーで叩いてショックドライバーのように活用することも可能です。
また、一度固着が緩まれば、その後は軸部を指で摘みながらハンドル端をもう一方の指で弾けば、竹とんぼが回るようにハンドル部がクルクルと回って、スピーディにねじを緩めることができるようになります。エンジンのクランクケースカバーのように、多くのねじで固定されている部品を着脱する際、連続してねじを回すのにとても便利なのです。
T型ドライバーは一般的なドライバーにくらべてちょっと特殊なイメージがあるかも知れませんが、じつはベテランサンメカやプロの愛用者も多いアイテムです。グリップタイプのドライバーは一通り持っていて、ちょっと目先の変わった製品が欲しい時には、チェックしてみると良いでしょう。
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