【ホンダ ディオ110 試乗記】スポーツコミューターのグローバルスタンダード

掲載日:2021年04月20日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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HONDA Dio110

昨今人気の高い原付二種区分のスクーターの中でも、スポーツ性の高いホンダのDio110がフルモデルチェンジ。軽快なフットワークとパワフルなエンジンで、ストリートでの使い勝手が飛躍的に向上している。

ディオの出自はスポーツスクーター
その性格は現在も残されて進化を続ける

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80年代後半から90年代初頭にかけて、原付1種(50㏄)スクーターは飛ぶように売れていた。その要因としては、筆記試験のみで免許を取得できること、そもそも普通自動車免許に付帯されていること、さらに維持費も安いことなどから、16歳になったばかりの若者から普段の移動手段として利用する主婦たちまで幅広い層に支持されていたという点が挙げられる。一家に一台原付スクーターがあることが当たり前となっていた時代であり、“売れるもの”となればメーカーもあの手この手を使って新型を開発し、マーケットに投入してくる。そのような中の一つとして、若者をターゲットとしたスポーツタイプのスクーターが数多く登場し、ホンダ・ディオもその波に乗って生み出されたのだ。長年作られたディオは時代に合わせ、2011年にはディオ110へと進化。そして2021年モデルでフルモデルチェンジが施された。

ホンダ ディオ110 特徴

2011年に復活したディオは別物だった
しかし、その根底にはディオらしさがあった

初代ディオが登場したのは1988年のことで、メットインスペースを備えたスポーツスクーターとして爆発的な人気を博した。さらにブラッシュアップインターバルは短く、装備の充実を図るとともに、ホットバージョンでは出力も当時の原付1種で最高となる7.2馬力まで引き上げられた。

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しかし原付1種は90年代後半から2000年代にかけて徐々に衰退をはじめる。理由として考えられることは枚挙にいとまがないが、景気の後退や自然環境問題への対策の一環として2ストロークエンジンの採用が終了したこと(ディオも3代目までは2ストエンジン)、電動アシスト付き自転車の利便性が高められ取って代わる存在となったことも原因になっていたに違いない。そしてディオも2003年に登場した4代目を最後に一度はその名に終止符が打たれたのだ。

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そんなディオだったが2011年に「ディオ110」として復活した。時代は変わり、ストリートでは原付二種が求められるようになっていたのだ。その裏側にはグローバル戦略を推し進めていたメーカー側の話もある。世界的な需要の観点からすると、110㏄モデルがシティコミューターのマスとなっており、ディオ110も世界各国で売られることを前提として開発されていたのだ(販売国によって名称は異なる)。スタイリングにしても、以前のディオとはかけ離れたデザインであり、当時発表試乗会に足を運んだ私は違和感を抱いたものだったが、それも10年前のことであり、実際に乗ってみると使い勝手の良さに”ディオらしさ”が感じられ今ではすっかりディオ110の存在に慣れてしまっている。ディオ110は2015年に一度モデルチェンジが行われており、2021年、つまり今年モデルチェンジが行われ登場したのは3代目ディオ110ということになる。それでは新型ディオ110の詳細を追っていこう。

ホンダ ディオ110 試乗インプレッション

運動性能、装備面を踏まえた上で、
抜群のコストパフォーマンスを太鼓判

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スタイリングに関しては変更を受けているものの、従来モデルを踏襲しており、言われないと気付かないほど似ている。ただ良く見てみると、より一層エッジが立たされ、シャープな印象となっている。エンジンは高い燃費性能とCO2排出量の削減などを実現したeSPエンジンをベースに、ボア×ストロークを従来の50.0×55.1mmから、47.0×63.1mmへと、ロングストローク化している。小排気量シングルエンジンなので、この差はかなり大きいと言える。さらに新設計eSAFフレームを採用することで、高い剛性力と軽量化を実現し、約4kgも軽い96kgまで車重を引き下げた。

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テスト車両を目の前にしてまず思ったのは、深みのあるブルーメタリックのカラーリングのせいか、想像以上に高級感が持たされているという点だ。新型ディオ110ではスマートキーシステムが初採用されており、物理キーを使用することなくイグニッションをオンにしてスタートできることからも、やはり従来モデルよりもワンランク上のコミューターに押し上げられたイメージを受けた。

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走り出すと車体の軽快な動きを見せるのに驚きを隠せなかった。原付二種スクーターは、大きく二つの方向性にキャラクターを分けられていると私は考えている。一つは小径タイヤとショートホイールベースでまとめられたコンパクトスポーツタイプ、二つ目は大き目で安定感のある車体で構成し、快適な乗り心地やクルーズ性能が高められたプレミアムコミュータータイプだ。新型ディオ110は、14インチという大径タイヤを採用し乗り心地が良い上に、小径タイヤのようなシャープなハンドリングを兼ね備えている。これがどこを走らせても痛快に楽しい。朝夕の渋滞路から路地裏、ワインディングまで、素晴らしい運動性能で意のままに操ることができるのだ。

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シャシーや足まわりも入念に煮詰められており、例えば段差を乗り越える際など、多くのスクーターでは底付きを感じさせるような場面でも、サスペンションに余裕があり、ブレーキは過度な制動力を持たさずコントロール性を重視している。新設計エンジンは、多大なパワー感とまでは言わないが、スタートダッシュでライバル他車から頭一つ分速い印象。総走行距離100km程度のテストだったが、返却時に名残惜しくさえ感じさせてくれた。

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ホンダの同クラスにはPCXがあり、実際のところ人気はそちらの方がある。しかし走らせてみると、新型ディオ110の方が、私が使う分にはメリットがあると思えた。まず車体のコンパクトさと重量面、96kgの新型ディオ110は本当に気軽に乗ることができるゆえに、昔ながらの“原チャリ”というイメージで接することができ、しかも走りそのもののパフォーマンスが高い。対してPCXは車格が大きく車重は132kgとディオ110より35㎏以上重い。排気量が大きい分パワーもあるが、車重で相殺されてしまっており乗り比べると若干ダルな印象は否めない。その分クルーズ性能は高く快適なのだが、果たして原付二種スクーターの使い方から考えると、どちらの方が多く求められているかは難しいところだ。

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それらを考慮して私が出したのは、週末レジャーやタンデム使用の比率が大きいのであればPCXを、通勤通学など毎日使用するのであればディオ110が適しているという答えだった。ちなみに新車価格では、新型ディオ110が24万2000円からなのに対し、PCXは35万7500円となっている。さて、あなたの思い描くバイクライフならばどちらを選択するだろうか。

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ホンダ ディオ110 詳細写真

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空冷4ストトークSOHC単気筒のeSPエンジンを引き続き採用。しかし中身を見るとボア×ストロークを変更しロングストローク化されている。パワフルさと環境性能の両立が求められた。テスト時の実燃費は約38km/1Lだった。

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デザインに関しては言われないと気づかない程に従来モデルを踏襲したものだが、フロントマスク部分では、ウインカーに挟まれた中央部に、ブラックのパネルパーツが追加されている。ライト形状なども若干の変更がされている。

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80/90-14サイズのフロントタイヤを採用することで、直進安定性とシャープなハンドリングを両立している。タイヤ径が小さい方が、小回りが利くと思いがちだが、14インチでも十分にクイック。フロントブレーキは油圧ディスクとされる。

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センタースタンドとサイドスタンドの両方を標準で装備。コインパーキングなどではセンタースタンド、短時間駐車する場合にはサイドスタンドをと使い分けられるので便利だ。

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フットスルータイプのステップボードを採用。足を揃えて置くライディングポジションは、車体のコントロールするのに有効であり、その結果、誰でもディオ110を気持ちよく走らせることができる。

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ディスプレイパネルはアナログタイプのスピードメーターを中央に備え、下部に距離計と残燃料計をセット。そして新型ディオでは、上方にECOインジケーターとキーレスランプが追加装備されている。

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シートは前後方向に長く、フラットな形状とされており、幅広い体格に対応している上にタンデムもしやすい。スペック上でのシート高は760mmとされているが、前方のシェイプが強いこともあり、足つき性は良い。

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Honda スマートキーシステムが新たに採用された。スマートキーを衣類やカバンに入れておくだけで、物理キーを挿すことなくイグニッションオンや、シートオープンを行うことができる。

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リアタイヤは90/90-14をセット。フロントタイヤとのバランスも良い。ホイール形状は変更され、スポークがより細身のデザインとなっている。マフラーガードも新デザインとされている。

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タンデムステップは折り畳みタイプ。ステップが細く、長時間足をのせて置くには心もとないが、キャリア兼グラブバーが標準装備なので、パッセンジャーは体を保持しやすい。

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アイドリングストップ機能も備えている。青信号へと変わった際、エンジンオフ状態からスロットルオンで始動しスタートまでのタイムラグは皆無と言え、並みのミッション車よりは、確実に良いスタートダッシュを切れる。

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シート下のスペースは18Lの容量で、ヘルメット一つを収容できるサイズ(ものによりフルフェイスも可)。欲を言えばもう一回り大きい方が使い勝手は良いのだろうが、全体のバランスを考えると、これでも頑張っている方だと思う。燃料給油口もシート下だ。

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キャリア兼グラブバーを標準装備。トップケースベース固定用の穴もあらかじめ用意されている。キャリアとして使うには小ぶりであるものの、ベルトホールも備わっており積載性はなかなか良さそうだ。

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クリアカバーとされたテールライト類。後続車からの視認性は高い。従来モデルよりエッジが強調されたデザインとなっており、精悍な印象を受ける。

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フロントインナーボックスはふた付きとしている。500mlペットボトルがぴったりと収まる。何かと便利に使うことができるハンドル下のコンビニフックも健在だ。

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