スポーツライディングの楽しさとロングランでの快適性を高次元で両立した、ダンロップ・スポーツマックス Q5A

掲載日/2024年5月10日
取材協力/住友ゴム工業株式会社
写真/井上 演
取材、文/中村友彦
構成/バイクブロス・マガジンズ

Q5Aという製品名とトレッドパターンから推察して、サーキットで真価を発揮するQ5に近い特性を持つタイヤをイメージする人が多いかもしれない。ところが、ダンロップが最新技術を投入して生み出したQ5Aは、峠道でのスポーツライディングが楽しいだけではなく、市街地走行やロングランも快適にこなせるオールラウンドなスポーツタイヤだった。

Q5とロードスマートⅣの技術を融合したオールラウンドスポーツ

今回のテストで使用したハヤブサは、四半世紀に渡ってスズキのフラッグシップを務めて来たメガスポーツ。サーキットでの速さを前提としたリッタースーパースポーツとは一線を画する、重厚さや高級感が満喫できる。タイヤサイズは、F:120/70ZR17、R:190/50ZR17。

サーキットで真価を発揮するQ5の性能を、ワインディングロードを中心とするストリート向けにアレンジしたタイヤ? 2024年2月からダンロップが発売を開始したスポーツマックス Q5A(AはAll Roundの略)に対して、当初僕はそんな印象を抱いていた。とはいえ、広報資料を読み込み、実際にスズキのフラッグシップであるハヤブサにQ5Aを装着して約500kmのテストランを行った現在は、その表現は誤解を招くような気がしている。

サーキットを主戦場とするQ5とは異なり、Q5Aはストリートをメインにして開発。ポジション的にはα-14が近いものの、快適性や環境適応力ではQ5Aに軍配が上がる。

と言うのも、Q5譲りの技術として、ロンググルーブのトレッドパターンやショルダー部のレーシングカーボンハイグリップコンパウンドを採用しているけれど、Q5Aの位置づけは、守備範囲が広い万能スポーツタイヤとして定評を得て来たロードスポーツ2の後継なのだ。もっともそういうタイヤなら、製品名はロードスポーツ3にするべきじゃないかと異論を述べる人がいそうだが……。

トレッド面は前後とも3分割構造で、センターには新Hi SILICA Xコンパウンド、ショルダーにはレーシングカーボンハイグリップコンパウンドを採用。ロンググルーブの中間付近に存在する細溝は、偏摩耗の抑制に貢献する。

ダンロップのウェブサイトに掲載された広報資料を基に構造を比較してみると、ロードスポーツ2とQ5Aは完全な別物なのである。中でも最も大きな相違点は、ロードスポーツ2が特性の異なるコンパウンドを上下に重ねる2層トレッド構造だったのに対して、Q5Aが3分割式マルチプルトレッド構造を採用したことだが、スポーツツーリングタイヤのロードスマートⅣの技術を転用する形で、偏摩耗を抑制する部分的な細溝や、低温・ウェット時の安心感とライフの長さに貢献する新Hi SILICA Xコンパウンドを導入したことも、Q5Aならではの特徴だ。また、フロントを尖らせる一方でリアをフラットに近づけたプロファイル、軽量化や乗り心地の向上を目指して構造を刷新したジョイントレスベルトなども、先代に当たるロードスポーツ2からの進化を感じる要素である。

先代に当たるロードスポーツ2とプロファイルを比較すると、旋回性を重視するフロントはやや尖った形状、吸収性と剛性感の両立を追求したリアはややフラットな形状に変化。

さらに言うなら、ミドル以上の前後17インチ車を主な対象としていたロードスポーツ2とは異なり、250~400ccクラスに適合する細身のサイズや前後18インチ、フロント16インチを設定していることも、Q5Aの美点だろう。いずれにしてもダンロップの最新技術を随所に取り入れたQ5Aは、ロードスポーツ2とは似て非なる資質、見方によってはQ5とロードスマートⅣのいいとこ取りと言いたくなる資質を備えた、新しいスポーツタイヤなのだ。

サイズの豊富さはダンロップ製ラジアルの特徴で、α-14やロードスマートⅣも多種多様なモデルに適合する製品をラインアップ。表内で※がついたフロント用の130/70ZR16は、シングルトレッド構造を採用している。

コーナーへの進入がイージーで楽しい

ここからはいよいよインプレ編。ナラシという意識で市街地を走って好感を抱いたのは、乗り心地が良好なことと車体の動きが軽いこと。もっとも当初の僕はその2点に関して、あえて言えばというレベルかな……と感じたのだが、高速道路とドライ&ウェットの峠道を含めて丸一日のテストランを終えた後は、乗り心地の良好さと動きの軽さを抜きにしてQ5Aの魅力は語れないと思った。

まずは乗り心地の説明をすると、Q5Aはスポーツタイヤらしからぬと言いたくなる上質さで、市街地に点在する段差だけではなく、いろいろな場面で路面の凹凸をしなやかに吸収するのだ。具体的な事例を記すなら、東京都心の首都高では、普段は気になっている路面の継ぎ目やウネリを意識することがほとんど無かったし、ワインディングロードではギャップを通過した際の挙動が常に落ち着いているので(乗り手に伝わる衝撃が少ないし、衝撃の収束が早い)、ブレーキング→バンク→スロットルオン、という行程を安心して繰り返すことができた。

ただし、乗り心地以上の驚きだったのは、ワインディングロードにおける車体の動きの軽さである。市街地でその片鱗は感じていたものの、Q5Aは曲がろうという主張が明確なタイヤ、逆に言うなら直進から旋回に移行するときの抵抗を感じづらいタイヤで、ステップやハンドルを使ってきっかけを与えれば、前輪が即座に絶妙な塩梅の内向性を示す。だからコーナーへの進入がイージーで楽しくて、走り込むうちに気分がどんどん高揚してくるのだ。

ちなみに動きの軽さを強調したタイヤは、場合によっては不安定な印象を抱くことがあるのだけれど、Q5Aにそんな気配は皆無。車体を傾けていけばQ5に通じる絶大なグリップ力が得られるし、ロードスマートⅣほど盤石ではなくても、直進安定性やウェット路面・冷間時の安心感は十二分。そういった特性を認識した僕は、構造が別物に進化して乗り心地と運動性の向上を実現しても、守備範囲が広い万能スポーツタイヤという意味で、やっぱりQ5Aはロードスポーツ2の後継だと感じたのである。

もっとも守備範囲が広いという見方をするなら、近年のダンロップ製ラジアルはジャンルのクロスオーバー化が進んでいて、サーキット指向が強いQ5はさておき、運動性を徹底追求したα-14でもロングランは普通にこなせるし、快適性を重視したロードスマートⅣでもスポーツライディングは楽しめる。だから同社の製品を購入するとなったら、どれを選択するかで悩みそうだけれど、ワイディングロードを中心とするツーリングに最も適したタイヤとして、今の僕が筆頭に挙げたいのはQ5Aなのだ。

INFORMATION

住所/東京都江東区豊洲3-3-3 豊洲センタービル
電話/03-5546-0114
営業時間/10:00~18:00

1889年、イギリスにて設立されたダンロップ社。今や、誰もが知る“ダンロップ”というこのブランドは、創立者の息子が「自転車をもっと楽に走れるようになるにはどうしたらいいのか?」という素朴な質問を父に投げ掛けたことから、その歴史をスタートしています。四輪は勿論、現在では国内外でのモータースポーツシーンでも活躍し、SUPER GT(元 全日本GT選手権)を中心にタイヤを提供。以前は全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)、全日本F3000選手権等にもタイヤ供給を行っていました。二輪車用としてはSPORTMAX・GP・ARROWMAX・KABUKI・TRAILMAX・BURORO・GEOMAXをラインアップ。また純正として同社のタイヤを採用するメーカーも多数存在し、いつの時代も、その時々の環境に対応し、性能にも一切妥協をしないその作り込みは一流ブランドならではのものです。

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