軽二輪クラスのオンロードスポーツカテゴリーでいま再び注目を集めつつあるのが、ラジアルタイヤの使用。現在、このクラスの新車にはバイアスタイヤが純正装着されていることがほとんどだが、だからこそダンロップはラジアルへの換装をカスタムのひとつとして提案する。二輪ジャーナリストの和歌山利宏氏が、その魅力を紹介!
レーサーレプリカが人気を集めた90年代初頭ごろから、軽二輪クラスでもラジアルタイヤを純正装着したモデルが増えたが、コストなどを重視した結果、近年はラジアルタイヤを採用した軽二輪モデルは皆無に近かった。しかし、2017年型として600台限定で発売されたカワサキ・ニンジャ250ABS KRTウインターテストエディション、さらに2017年大注目の新型として登場したホンダのCBR250RRは、ラジアルタイヤを標準採用。これをきっかけに、既存バイアスタイヤユーザーによるラジアルタイヤ換装もブームを迎えそうなのだ。
さて、ラジアルタイヤとバイアスタイヤは、同じようなカタチながらその構造が異なる。もっとも大きな違いは、ひも状のナイロン素材やスチール素材が幾重にも巻かれて形成された、タイヤの芯となるカーカス部。ラジアルは、トレッド面と直角になるよう放射状にカーカスが巻かれ、カーカスとトレッドの間に補強の役割を持つベルトが組み込まれているのが特徴。一方のバイアスは、各素材を斜めに巻き、層ごとにクロスされている。
これらの違いが、走りにもさまざまな影響をもたらす。そこで今回は、二輪ジャーナリストの和歌山利宏氏に、ラジアルとバイアスで乗り味がどう変わるのかを検証してもらった。装着したタイヤは、いずれもダンロップ。同社は、軽二輪クラスに対応したHレンジのラジアルタイヤラインアップとして、2017年のニューモデルとなるスポーツマックスα-14に加えて、2014年から展開していてCBR250RRの純正採用タイヤともなったスポーツマックスGPR-300も持つ。一方で比較するバイアスタイヤには、アローマックスGT601を選んだ。
「バイアスのGT601は、あくまで公道スポーツとしてのバランスを追求。これに対してGPR-300はよりスポーティで、ワインディングでのコーナリングをより楽しめる仕様です。そしてα-14は、サーキットを含めたよりアクティブな走りに対応しています」
3タイプのテストを終えた和歌山氏は、こう切り出した。では、その乗り味はどのようなものなのだろう?
「GT601は、後輪に前輪が追従してくるようなイメージ。リア荷重主体で乗ることで、どんなレベルのライダーでも気持ちよくコーナリングできます。GPR-300は、コーナー進入でしっかり前輪に荷重をかけ、これをスッと抜いてあげることで、フロントタイヤの回頭性が向上して、スポーツライディングしている感覚が高まります。これは、ラジアルタイヤならではの特性。サイドウォールをたわませることで、旋回性が上がります。そしてα-14になると、その傾向がさらに高まります。しかもこのタイヤが素晴らしいのは、そこから深く寝かし込んだときに、フロントタイヤの接地感が一定であるところ。過渡特性が絶妙です」
そして和歌山氏は、「バイアスはタイヤ全体がソフトで、ラジアルはトレッドの剛性が高くてサイドウォールが柔軟というイメージ。ラジアルは柔と剛のバランスがよく、それをうまく使ってあげることで楽しいライディングができます。ベーシックな乗り方をするならバイアスタイヤのメリットもありますが、今回メインでテストしたヤマハのYZF-R25をはじめ、軽二輪クラスで現在人気となっているスーパースポーツ系にはとくに、ラジアルの特性が合うと思います」という。
自分が求めるキャラクターに合うタイヤの選択肢が増えることが、ラジアルタイヤを含めて銘柄を選ぶメリットだが、さらに和歌山氏はこのように提案する。
「近年の軽二輪スーパースポーツに乗っているユーザーの中には、いずれ大排気量車に乗りたいと考えている人もいると思います。そのような方々にとって、軽二輪クラスに乗っているうちからラジアルタイヤの特性を知っておくというのは、スムーズなステップアップにもつながると思います。フロントタイヤに荷重を掛けて旋回力を生み出す、近年のスポーツライディングでは主流となっているライディングを、もちろん安全には十分配慮しながら、まずは軽二輪クラスで体験してみては?」
2017年のニューモデルとなるスポーツマックスα-14は、ワインディングやサーキットでのスポーツ走行を主題としたスポーツラジアル。さらに、ツーリングラジアルのスポーツマックスGPR-300もHレンジに対応している。今回のテストでバイアス代表として比較したアローマックスGT601は、スタンダードなスポーツツーリングタイプだ。