アドベンチャーモデルの性能はタイヤが左右する、TRAILMAX MIXTOUR(動画あり)

掲載日/2020年8月28日
取材協力/住友ゴム工業株式会社
写真/井上 演
取材、文/櫻井伸樹
構成/バイクブロス・マガジンズ
ここ数年、アドベンチャータイプのバイクが人気だ。BMWのGSシリーズを始めとして、各社からあらゆる排気量のアドベンチャーバイクがリリースされている。こういったアドベンチャーモデルの魅力は、その広い使い勝手だ。高速移動が楽で、ワインディングもそれなりに走り、大きな荷物も積載でき、二人乗りも快適。さらには未舗装路も走れるなど、幅広い使い方ができるのがその人気の理由だろう。

しかし高速道路、ワインディング、未舗装路といったまったく違うシチュエーションでは、当然ながらタイヤに求められる性能が異なってくる。高速では直進安定性、ワインディングでは旋回性、ダートではブロックパターンの配置や溝の深さなど……。残念ながらこれらすべてを完璧に満たすようなタイヤは存在しないが、DUNLOPが導き出した一つの答えがTRAILMAX MIXTOURだ。

トレンドはオンロード8割、オフロード2割

そこでライダーは、自分の使い方にあったタイヤをチョイスすることになるわけだが、ここ数年のアドベンチャー向けタイヤのトレンドは「オンロード8割、オフロード2割」という割合が主流になりつつある。事実、こういったアドベンチャーモデルのユーザーで、実際にオフロードを楽しむ割合は非常に少なく、多くのライダーがほぼほぼオンロードツーリングを楽しんでおり、オフロードをガンガン走るようなライダーは1割程度、と言われている。

今回テストしたダンロップのTRAILMAX MIXTOURは、そんな時流に合致したアドベンチャー向けのオンオフタイヤだ。トレッドパターンで特徴的なのは、端から端まで大きく入った斜めのトレッドラインだ。このラインが走行時に路面と溝内で圧縮、膨張を繰り返す空気を逃がし、ノイズを軽減させるという。またこの斜めの溝をタイヤの縁ギリギリで止めたことと、深い溝と浅い溝を最適に配置することによって、ブロックのゆがみやダートでの「欠け」を抑制し、高剛性を実現している。

フロントには2CUTベルト構造、リアにはHES-JLB構造を採用し、高速道路などでの安定性と林道などオフロードでの走破性を同時に持ち合わせている。さらにコンパウンドはシリカとカーボンを最適に配合。ドライ路面、ウエット路面共にグリップを高め、結合力の強いカーボンを使うことで耐摩擦性も確保されているため、ロングライフを実現しているという。

あらゆる路面で約1300km走ってみた

このTRAILMAX MIXTOUR、昨年の4月よりリリースされているわけだが、新しくBMWの水冷R-GSに合うサイズが加わったとのことで、R1250GS Adventureに履かせて色々な路面をテストしてみた。テスト期間は約1カ月。街中走行約300km、高速走行約800km、ワインディング約100km、ダート約10kmといった内訳だ。

まずタイヤを変えた瞬間に感じたのは、走り始めが非常にスムーズであるということ。こういったオン・オフ両用タイヤの場合は、多少なりともブロックパターンが影響し、極低速でゴツゴツ感を感じることがあるが、それをほぼ感じず、オンロードタイヤと比較しても遜色ない走り始めだった。また停止寸前の低速時でも車体がグラグラせずに非常に安定している。アドベンチャーモデルは足つきの悪いモデルも多いので、こういった発進、停止前後の挙動が安定していると、とても安心感が高いのだ。

さらに高速道路での直進安定性は非常に高い。見た目はそこそこブロックパターンがあるように見えるが、気になるようなロードノイズや振動はほぼ感じなかった。ジャンクションのコーナーにある金属の継ぎ目では、どんなタイヤも滑るわけだが、TRAILMAX MIXTOURは乱れた挙動ではなく、制御下に置ける程度のわかりやすい滑り方だったのでそれも好印象だ。

今回は福島の磐梯吾妻スカイライン、そして奥多摩周遊道路といったそれぞれスケールの違うワインディングでもテストしてみた。コーナリング性能は素晴らしく、低速から高速まであらゆるコーナーで安心して寝かせていくことができ、ロードタイヤ並みの安心感を実感。ワインディングでスポーティな走りが楽しめた。走行後に、リアタイヤを観察してみたが、自分が思っている以上にタイヤの端までを使えていることに驚いたほどだ。

また高速道路、ワインディングともに激しい雨も経験。とくにワインディングでの加減速でもグリップが破綻するような挙動はなく、かなりのグリップを発揮してくれた。

ダートのテストでは引き締まった砂利の林道を走ってみたが20km/hから40km/hで流すぶんには、充分なグリップ性能を発揮。近年発達してきている車両のトラクションコントロールとうまく併用することで快適に走行できた。もちろん、やや攻めた走りをすればグリップが破綻して滑り始める。その滑り出しはオフロード志向の高いタイヤに比べれば低いが、逆にその滑り出した感覚がつかみやすいので、ある意味コントローラブルだった。

しかし、さすがにヌタヌタの泥濘部や柔らかい砂地、またオフロード路面の激しいアタックにはあまり向いていない、と言わなくてはいけないだろう。

実際に約1300km走ってみた摩耗具合だが、まだまだ9分山という感じ。この写真はテスト後のものなので、そのライフはかなりのものだろう。バイクの車重や、使い方にもよるが、8000kmから1万kmぐらいは余裕でもつのではないだろうか。

最後に外観的な話として、このTRAILMAX MIXTOURの斜めに入った特徴的なパターンがけっこうブロックの高さを強調しているように見える。つまり、実際に乗った印象はゴツゴツ感がなくオンロードタイヤのようにスムーズであるにもかかわらず、見た目はアドベンチャーバイクの外観をややオフロードっぽくすることで、よりワイルドな印象にしてくれるのだ。

オールマイティなこのタイヤの最大のメリットは?

なによりこのタイヤの大きなメリットは「突然現れた未舗装でも臆することなく通過できる」ということだ。地方にツーリングに行くと食堂や、日帰り入浴施設などで砂利の駐車場に出くわすことは非常に多い。また近年流行しているキャンプツーリングの際に、キャンプ場までのアクセス路がダートであることも日常的だ。ライダーなら誰もが憧れる北海道をツーリングしていると、山奥の道がいきなり工事で500mほど未舗装、なんていうことだって珍しいことではない。つまり、そんな不意なダートでもTRAILMAX MIXTOURを履いていれば、ビビることなく安心して通過できるということだ。

つまりミクスツアーはアドベンチャーで少し冒険したい人から、初心者だけどツーリングが大好きというライダーまで、かなり幅広いユーザーにぴったりのタイヤである、ということだ。

DUNLOP TRAILMAX MIXTOURのインプレッションを動画でチェック!

INFORMATION

住所/東京都江東区豊洲3-3-3豊洲センタービル
電話/03-5546-0114
営業時間/10:00~18:00

1889年、イギリスにて設立されたダンロップ社。今や、誰もが知る“ダンロップ”というこのブランドは、創立者の息子が「自転車をもっと楽に走れるようになるにはどうしたらいいのか?」という素朴な質問を父に投げ掛けたことから、その歴史をスタートしています。四輪は勿論、現在では国内外でのモータースポーツシーンでも活躍し、SUPER GT(元 全日本GT選手権)を中心にタイヤを提供。以前は全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)、全日本F3000選手権等にもタイヤ供給を行っていました。二輪車用としてはSPORTS MAX・GP・ARROWMAX・KABUKI・BURORO・ENDURO・POLSO!をラインナップ。また純正として同社のタイヤを採用するメーカーも多数存在し、いつの時代も、その時々の環境に対応し、性能にも一切妥協をしないその作り込みは一流ブランドならではのものです。