ルックスも乗り味もネオクラシックモデルに最適な、ダンロップTT100GP/TT100GPラジアル

掲載日/2021年7月5日
取材協力/住友ゴム工業株式会社
写真/井上 演
取材、文/中村友彦
構成/バイクブロス・マガジンズ
約50年の歴史を誇るTT100のシリーズに、ラジアルが追加されたのは2019年のこと。当記事では、フロントにバイアス、リアにラジアルを履くトライアンフT120ボンネビルを素材として、このタイヤの魅力を探ってみたい。

製品名の由来は、マン島TTでの100mphオーバー

伝統の縦ミゾパターンが、やっぱりしっくり来るなあ……。ダンロップのTT100GP/TT100GPラジアルを履いたトライアンフT120ボンネビルに対面した僕は、素直にそう思った。まあでも、それは当然のことである。そもそもTT100GPは、トライアンフと非常に縁が深いタイヤなのだから。


ダンロップがTT100の前身となるK81を発売したのは、1968年のこと。そしてK81を履くトライアンフ・スラクストンボンネビルで、1969年にマン島TTに参戦したマルコム・アップヒルは、750ccプロダクションクラスで史上初の平均ラップ100mph≒160km/hオーバー、100.37mphを記録し、劇的な優勝を達成したのである。この戦果を記念して、当時のダンロップはK81の製品名をTT100に変更。以後のTT100は、トライアンフを筆頭とする多くの英国車に標準採用されると同時に、世界中のレーシングライダーとスポーツ指向のライダーから、絶大な支持を集めることとなった。

そんなTT100に、ハイグリップ指向のGPが加わったのは1980年頃で、このタイヤは日本でも爆発的な人気を獲得。もっともさらにハイグリップ指向の後継モデルが登場すると、TT100GPはいったんカタログから姿を消したのだが……。

1990年代後半になると、世界中のクラシックバイクユーザーの希望に応える形で、十数年ぶりにTT100GPが復活。1960年代と同様のパターンを維持しながら、当時の最新技術を導入した新世代のTT100GPは、以後はダンロップの定番バイアスタイヤとして確固たる地位を確立している。

初代の登場から約半世紀を経て、ラジアルが登場

そして初代の登場から約半世紀が経過した2019年、ダンロップは現代のネオクラシックモデルにマッチするタイヤとして、TT100GPラジアルの発売を開始。ラジアル化にあたっては、トレッドパターンの刷新や微粒子シリカコンパウンドの投入など、各部の最適化が行われているが、TT100GPならではの雰囲気はきっちり維持されている。

現状のTT100GPラジアルのサイズは、フロント用が110/80R18と120/70ZR17の2種類、リア用が、140/70R18、150/70ZR17、180/55ZR17の3種類で、主な対象車は、ホンダCB1100シリーズ、ヤマハXSR700/900、カワサキZ900RS/CAFE、BMW Rナインティシリーズなど。ただし、F:バイアス・R・ラジアルという特殊な構成を採用する、トライアンフ・ボンネビルシリーズやストリートツインへの適合を念頭に置いて、ダンロップは純正と同じバイアス構造の100/90-18を新規開発。もちろんそういったダンロップの姿勢は、世界中のトライアンフユーザーから高く評価されている。

ヒラヒラ感としっかり感を絶妙の塩梅で両立

今回の試乗で僕が少し心配していたのは、前後で構造が異なるタイヤを履いていることだった。と言っても前述した通り、トライアンフ・ボンネビルシリーズはF:バイアス・R:ラジアルが標準なのだが、メーカーが専用品として作り込んだ純正とアフターマーケット用では、前提条件が異なる。ではTT100GP/TT100GPラジアルを履いた、T120ボンネビルの第一印象はどうだったかと言うと……。

誤解を恐れずに言うなら、拍子抜けするほど自然だった。前後の構造の違いによる違和感はまったくなく、ハンドリングは至ってニュートラル。ブレーキタッチにも不満はないし、乗り心地に関しては純正よりいいくらい。逆に言うならTT100GP/TT100GPラジアルを履いたボンネビルに乗って、何らかの問題点を探すのは容易なことではないだろう。

その一方で僕が感心したのは、ワインディングロードにおけるフィーリング。あまりにナチュラルなので、漫然と乗っていると気づきづらいけれど、よくよく観察すると、前輪からはバイアスならではの軽快感、後輪からはラジアルならではのしっかり感が伝わって来る。実は僕はその事実を把握するまで、せっかくTT100GPラジアルを作るなら、フロント用の100/90R18も作ってくれればよかったのにと感じていたのだが、ヒラヒラと表現したくなる軽快感は、バイアスだから実現できたのではないだろうか。

もちろん、ラジアルのリアもかなりの好感触だった。中でも僕が興味を惹かれたのは、コーナーの立ち上がりでフルバンクからアクセルを開けた際の後輪が路面を蹴る感触、トラクションのわかりやすさだが、それ以外の場面で得られるビシッと1本筋が通ったかのような安定感も、ラジアルならではの特性だろう。いずれにしてもノーマルの素性を活かしながら、TT100GP/TT100GPラジアルを履いたT120ボンネビルは、見事なレベルアップを果たしていたのである。

さて、とりあえずインプレを記してみたが、タイヤの選択基準の筆頭にルックスを挙げる人は意外に多く、これまでの僕はその状況に微妙なもどかしさを感じていた。でもTT100GP/TT100GPラジアルに限っては、ルックスで選んでいいと思う。もっとも、最新スーパースポーツやスポーツネイキッドでこの製品を選ぶライダーはいないと思うけれど、トライアンフ・ボンネビルシリーズを筆頭とするネオクラシックモデルのユーザーなら、ルックス重視でTT100GP/TT100GPラジアルを履いても、後悔することは絶対にないはずだ。

INFORMATION

住所/東京都江東区豊洲3-3-3豊洲センタービル
電話/03-5546-0114
営業時間/10:00~18:00

1889年、イギリスにて設立されたダンロップ社。今や、誰もが知る“ダンロップ”というこのブランドは、創立者の息子が「自転車をもっと楽に走れるようになるにはどうしたらいいのか?」という素朴な質問を父に投げ掛けたことから、その歴史をスタートしています。四輪は勿論、現在では国内外でのモータースポーツシーンでも活躍し、SUPER GT(元 全日本GT選手権)を中心にタイヤを提供。以前は全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)、全日本F3000選手権等にもタイヤ供給を行っていました。二輪車用としてはSPORTMAX・GP・ARROWMAX・KABUKI・TRAILMAX・BURORO・GEOMAXをラインアップ。また純正として同社のタイヤを採用するメーカーも多数存在し、いつの時代も、その時々の環境に対応し、性能にも一切妥協をしないその作り込みは一流ブランドならではのものです。