初代から飛躍的な進化を遂げたロードスポーツ2は、大前提から違っていた

掲載日/2019年11月29日
取材協力/住友ゴム工業株式会社
写真/伊勢悟、伊井覚 取材、文/中村友彦
構成/バイクブロス・マガジンズ
同じ系統の製品でも、タイヤは世代が変わると別物に進化する。ダンロップの例を記すなら、’15年から発売が始まったSPORTMAX ROADSMARTⅢは、さらなるロングライフ化と疲労軽減を重視したフレンドリーなハンドリングを獲得していたし、’17年に13→14に発展したαシリーズは、抜群のグリップ力と運動性能を伸ばしながら、常用域での扱いやすさを大幅に高めていた。では’18年にデビューしたSPORTMAX Roadsport2(以下、ロードスポーツ2)が、初代からどんな進化を実現したかと言うと……。

摩耗時のグリップ性能低下を抑える
2層式PCL構造を採用

発表時に同社が最も強調したのは、“摩耗時の性能維持”である。そのために導入した新技術が、2層式のPCL:Performance Compound Layers構造で、深層に配置した発熱性が高いコンパウンドが、新品から摩耗末期まで高い発熱グリップを発揮し、グリップ性能低下を最小限に抑えるという。

それに加えてロードスポーツ2は、ジョイントレスベルトの編み方を緩く設定し、接地面積の増加と接地圧分布の最適化を図ったUFS-JLBや、ジョイントレスベルトの張力を部位によって変化させることで、車体のバンク時に理想的な過渡特性が得られるV.B.T.T.などを導入しているのだが、これらはリアのみの特徴で、フロントに関する新機軸は、2カットブレーカーからJLBに改められた構造と、プロファイルとパターンの見直しのみ。

いずれにしても一般的な公道試乗だけでは、2の本質は把握しづらそうな気がしないでもない。でも2台のCB1000Rを準備して行った今回の比較テストでは、ロードスポーツの初代と2の差異が、意外なことに、かなり明確に理解できたのだった。

初代よりも底上げされた接地感が
安心感を生む、ロードスポーツ2

素直かつ軽快で、どんな車両に装着しても、おそらくは誰が乗っても、スポーツライディングが満喫できる。これが僕が今回の試乗前から、初代ロードスポーツに抱いていた印象だ。裏を返せば、タイヤからの主張が希薄と言えなくもないものの、そういう特性だったからこそ、初代ロードスポーツは小変更を受けて、数多くの車両のOEMに採用されたのだろう。

そして素直かつ軽快で馴染みやすいことは、ロードスポーツ2も同様なのだが……大前提が違った。例えば峠道でコーナリングする場合、初代はブレーキングや体重移動、スロットル操作などを通して、接地感を引きだすのだが、ロードスポーツ2は冷間時や、流すようなペースで走っている状態ですでに、初代と同等の接地感が存在し、乗り手がアクションを起こせば、接地感がさらに濃密になる。

言ってみればロードスポーツ2は、接地感のレベルを底上げしているのだ。だからどんな場面を走っても、初代を上回る安心感が得られるし、峠道ではその安心感があるからこそ、初代より速いペースで走ることが可能になる。ちなみに、2をじっくり味わった後に初代装着車に乗り換えた僕は、接地感に微妙な物足りなさを感じることとなった。

スポーティーな見た目だが
必要充分なウェット性能!

接地感と運動性能の向上に加えて、今回の試乗で感じた初代と2の大きな差異は、乗り心地とウェット性能である。この点に関して、初代は可もなく不可もなくという印象だったのだけれど、2の乗り心地とウェット性能は、同社のツーリングタイヤであるロードスマートⅢに匹敵するほどだと感じた。

路面の凹凸は実にスムーズに吸収してくれるし、雨の中を走っても、不安や恐怖はほとんど感じない。ある意味ではスポーツタイヤらしからぬ?と言いたくなる特性だが、ドライ路面における運動性能を高めるだけではなく、環境適応力と快適性を大幅に高めたロードスポーツ2の特性に、異論を述べる人はいないはずだ。

僕の独自のリサーチによると、ロードスポーツ2の購入を考えているライダーは、同じダンロップのα-14とどちらにするかで、悩むケースが多いらしい。その背景には冒頭で述べたように、α-14が常用域で扱いやすいという事実があるのだが、今回の試乗でロードスポーツ2をじっくり味わった現在の僕は、α-14の常用域での扱いやすさに対して、やっぱり“ハイグリップタイヤにしては”という注釈を付けるべきだったかと感じている。

また、ダンロップが明確な数字を公表しているわけではないものの、ライフの長さや摩耗時の性能維持という点でも、ロードスポーツ2はα-14を上回る資質を備えているに違いない。もちろんα-14は、グリップ力や旋回性能ではロードスポーツ2を凌駕する性能を備えており、だからこそスポーツ指向のユーザーから絶大な支持を集めているのだ。とはいえ、基本的に峠道が大好きで、年に何度かはサーキット走行会に参加するけれど、ツーリングや街乗りにも愛車を気軽に使いたいと言うライダーが、ロードスポーツ2とα-14で悩んでいたら、僕は迷うことなく、ロードスポーツ2をオススメするだろう。

新型KATANAの純正タイヤにも採用された
ロードスポーツ2に秘められた最新テクノロジー

住友ゴム工業株式会社 タイヤ技術本部 第二技術部
大谷匡史さん

「ロードスポーツ2を開発するに当たって、元々ニュートラルな特性で、前後のタイヤが一体となって曲がっていく扱いやすさが好評をいただいていたロードスポーツの長所をさらに伸ばし、追加でグリップの持久力を向上させることを目標としました。

まずはニュートラルな特性を伸ばすために、ロードスポーツ2ではフロントタイヤにもJLB構造を採用しました。JLB構造にすると、どうしても応答性が弱くなり旋回力が落ちてしまうのですが、キャンバースラスト・チューニング・テクノロジーにより、最適なタイヤの形状、パターンを算出することでスポーツ性を維持しています。

また、ロードスポーツ2のリアタイヤで採用した2層構造はタイヤの内側と外側でコンパウンドを変えてやるというものです。内側には衝撃を熱に変える特性を持つ高発熱ゴムを使い、タイヤを内部から暖めてやります。そうすることでタイヤの外側の低発熱ゴムが摩耗してきてもグリップ力を持続することができるようになりました。

ゴムにはポリマーとオイル、そして結合材が使われているのですが、高発熱ゴムはこの結合材がカーボン100%で構成されているのに対し、低発熱ゴムの場合はカーボンとシリカの混合が使われています。

フロントタイヤでもテストはしてみたのですが、フロントはゴムの厚みが薄くて高発熱ゴムを入れる恩恵があまりありませんでした。また、応答性が落ちてしまい、コーナーで寝かし込んだ時にタイヤがヨレてしまってハンドルからの入力がタイヤにうまく伝わらないデメリットが生じてしまいました。レース用タイヤであれば1レースだけ持てばいいのでゴムの厚みを薄くすることで解消できるのですが、街乗りタイヤですと溝やゴム厚も必要なので採用には至りませんでした。

ロードスポーツ2になって、溝のサイズが少し小さくなっていますが、コンパウンド自体も進化していまして、ウェット路面でのグリップ力も確保できています。そもそも二輪のタイヤというのは細く丸いため溝がなくてもある程度の排水性を持っているんです。タイヤの溝は小さくするほどヨレにくくなり、入力した際の反応がよくなるため、コンパウンドのグリップ力や形状と相談しつつ最適なサイズの溝を選んでいます」

左が高発熱ゴム、右が低発熱ゴム。

高発熱ゴムと低発熱ゴムの違いを動画で見る

この動画は高発熱ゴムと低発熱ゴムを同時に机に落とした動画です。跳ねているのが低発熱ゴム。跳ねないのが高発熱ゴムです。高発熱ゴムは運動エネルギーを熱に変換している為、ボールが跳ねないのです。

このように、ロードスポーツ2の開発は細かなところまで考え抜かれ、最新のテクノロジーが惜しむところなく使われている。バイクと同じように、タイヤ技術の進化も日進月歩。少しの金額を惜しんで古いモデルのタイヤを履いていては時代に取り残されてしまう。バイクは趣味の乗り物だからこそ、より豊かなバイクライフを送るために最新のタイヤを選ぶことをオススメしたい。

INFORMATION

住所/東京都江東区豊洲3-3-3豊洲センタービル
電話/03-5546-0114
営業時間/10:00~18:00

1889年、イギリスにて設立されたダンロップ社。今や、誰もが知る“ダンロップ”というこのブランドは、創立者の息子が「自転車をもっと楽に走れるようになるにはどうしたらいいのか?」という素朴な質問を父に投げ掛けたことから、その歴史をスタートしています。四輪は勿論、現在では国内外でのモータースポーツシーンでも活躍し、SUPER GT(元 全日本GT選手権)を中心にタイヤを提供。以前は全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)、全日本F3000選手権等にもタイヤ供給を行っていました。二輪車用としてはSPORTS MAX・GP・ARROWMAX・KABUKI・BURORO・ENDURO・POLSO!をラインナップ。また純正として同社のタイヤを採用するメーカーも多数存在し、いつの時代も、その時々の環境に対応し、性能にも一切妥協をしないその作り込みは一流ブランドならではのものです。