圧倒的な軽快感と守備範囲の広さが実感できる、ダンロップSPORTMAX α-14

掲載日/2023年3月1日
取材協力/住友ゴム工業株式会社
写真/井上 演
取材、文/中村友彦
構成/バイクブロス・マガジンズ
レーシーなトレッドパターンのハイグリップタイヤでありながら、幅広い層のライダーから支持を集めているダンロップのSPORTMAXα-14。その背景には豊富なサイズ設定に加えて、圧倒的な軽快感と守備範囲の広さがあるようだ。

楽しいからこそ、ストレスが溜まらない


今回α-14の試乗に使ったのはCBR1000RR-R。僕はこれまでにα-14を何度も体験し、このタイヤの美点を把握している……つもりである。ただし今回の試乗には、一抹の不安がなくはなかった。その理由は設計年度で、α-14のデビューは今から6年前の2017年1月。タイヤの世界で6年と言ったら、次世代に移行するべき時期だし、仕事を通して多種多様な最新タイヤを体験している身としては、α-14に物足りなさを感じるかもしれない。ところが、実際のα-14は現在の視点で見ても、他のタイヤとは一線を画する唯一無二の魅力を備えていた。

僕が考えるα-14の最大の魅力は、軽快なハンドリング。例えば車線変更時やコーナー進入時の挙動を他のダンロップ製プレミアムラジアルと比較してみると、Q5はハイグリップコンパウンドの粘りが伝わってくるし、ロードスポーツ2とロードスマートⅣは操作に対する反応が1:1という印象なのだが、α-14はヒラリ、スパッという感触で、軽やかに車体の向き変えがスタート。と言ってもその軽やかさに早すぎる気配はなく、何だか車体が軽く、小さくなったかのようにすら思える。

それに加えて、コーナリングのフルバンクに至る過程で不安を感じないことも、α-14の魅力を語るうえでは欠かせない要素だろう。ただしこの点に関しては、他のダンロップ製プレミアムラジアルにも同様のことが言えるので、説明がなかなか難しいのだけれど、常識的なスピード+積極的な荷重移動ができない状況で、最も気軽にフルバンクに持ち込めるのはα-14なのである。誤解を恐れずに表現するならこのタイヤは、自分のスキルが向上したかのような気分を味わわせてくれるのだ。

ところで、前述したようにα-14には多種多様なサイズが存在するのだが、今回の試乗で僕は、このタイヤとスーパースポーツの相性の良さを再認識した。近年のスーパースポーツで速度レンジが低い公道を走ると、至るところで飛ばせないストレスを感じるのが通例なのに、α-14を履いたCBR1000RR-Rは、スピードが低ければ低いなりに、もちろん高ければ高いなりに、どんな状況でも臨機応変にスポーツライディングが楽しめたのである。

そしてそういう特性を身に着けたからだろうか、丸一日に及んだ試乗の後に感じた心身の疲労は、ノーマルをじっくり乗り込んだときより格段に少なかった。この感触はロードスマートⅣでロングランを体験したときにどことなく通じていて、今回の試乗を通して僕は、楽しさがストレスの軽減につながることを改めて実感したのだ。

ジャンルのボーダーレス化が進む中で

現在のダンロップはプレミアムラジアルとして、5種類のタイヤを販売している。それらをドライグリップが高い順に並べると、1位:Q5、2位:α-14、3位:ロードスポーツ2、4位:ロードスマートⅣ、5位:GPR-300となる。こういった資質を理解すると、サーキット指向のライダーにはQ5かα-14、ツーリング好きにはロードスポーツ2かロードスマートⅣが適していると思えるものの、その住み分けが絶対というわけではない。

と言うのも近年のダンロップ製ラジアルは、守備範囲を大幅に拡大しているのだ。具体的な話をするなら、Q5でもツーリングは十分に楽しめるし、サーキットでロードスマートⅣの運動性に物足りなさを感じるのは、ある程度の経験を積んだベテランライダーくらいだろう。つまり、ジャンルのボーダーレス化が進んでいるのだが……。


スポーツライディングの楽しさが最も重要なテーマで、サーキットランもツーリングも楽しみたいライダーには、僕はα-14をオススメしたい。いや、そういう視点ではロードスポーツ2も侮りがたい資質を備えているのだけれど、グリップ力やコーナリングのキレ味は、やっぱりα-14のほうが上なのだから。

定番の前後17インチ・Zレンジに加えて、
前後18インチとHレンジを豊富に設定


理想のハンドリングを追求して採用したフロントのα-14専用2CUTベルトやリアのV.B.T.T.(ベルトの張力を部位に応じて調整する技術)、抜群のグリップ力と耐久性を実現するマルチプルトレッド構造(リアのみ)、剛性と吸収性の両立を目指したスリムビードAPEXなど、α-14はダンロップ独自の技術を随所に採用している。とはいえ、他のダンロップ製プレミアムラジアルとの比較で最もわかりやすいα-14の特徴は、サイズの豊富さかもしれない。


何と言っても、Q5のフロント:2/リア:8種類、ロードスポーツ2のフロント:2/リア:5種類、ロードスマートⅣのフロント:6/リア:13種類に対して、α-14はフロント:8/リア:16種類である。もちろん、α-14の主な対応機種は近年のスーパースポーツやスポーツネイキッドだが、このタイヤは定番の前後17インチ・Zレンジに加えて、5種類の18インチと9種類のHレンジを準備しているので、1980~1990年代車や旧車カスタムを愛好するライダーからも、絶大な支持を集めているのだ。

タイヤの性能を実感できる
サーキット走行イベントが開催

なお、ダンロップでは初心者からベテランまで幅広い層が楽しめるモーターサイクルイベント「DUNLOP サーキットステーション2023」を開催する。初めてサーキット走行を体験する人もクラス分けがされているので安心して参加できるし、走行前にはライディングアドバイスまで受けることができる。さらに、プロのレースカメラマンが走行写真を撮影してくれるというのだから、参加しない理由が見つからない。

スケジュールは
5月20日(土)モビリティリゾートもてぎ(旧 ツインリンクもてぎ)/栃木県
8月29日(火)岡山国際サーキット/岡山県
10月4日(水)鈴鹿サーキット/三重県
となっている。

ダンロップタイヤを装着した人を対象とした特別割引やレディース割引もあるので、まずは公式サイトをチェックしてみてほしい。もちろんオススメのタイヤは今回紹介したSPORTMAXα-14だ。他にも、今回は話題に触れなかったが、耐久性を確保しつつサーキット走行もカバーするオールラウンドハイグリップバイアスタイヤ、SPORTMAX Q-LITEもチェックしてみてほしい。

INFORMATION

住所/東京都江東区豊洲3-3-3豊洲センタービル
電話/03-5546-0114
営業時間/10:00~18:00

1889年、イギリスにて設立されたダンロップ社。今や、誰もが知る“ダンロップ”というこのブランドは、創立者の息子が「自転車をもっと楽に走れるようになるにはどうしたらいいのか?」という素朴な質問を父に投げ掛けたことから、その歴史をスタートしています。四輪は勿論、現在では国内外でのモータースポーツシーンでも活躍し、SUPER GT(元 全日本GT選手権)を中心にタイヤを提供。以前は全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)、全日本F3000選手権等にもタイヤ供給を行っていました。二輪車用としてはSPORTMAX・GP・ARROWMAX・KABUKI・TRAILMAX・BURORO・GEOMAXをラインアップ。また純正として同社のタイヤを採用するメーカーも多数存在し、いつの時代も、その時々の環境に対応し、性能にも一切妥協をしないその作り込みは一流ブランドならではのものです。

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