ホンダ VT750S – スポーツスターを標的にしたニューモデル

ホンダ VT750Sの特徴

国産モデル未開のカテゴリへ
ナナハン市場を独占するラストピース

普段ハーレーまみれな毎日を送っているため、今回のVT750S試乗を行うにあたり、国内外の主要なバイクメーカーのラインナップをざっと見直してみた。そこから見えたのは、バイクのことを知らなかった頃の僕でも耳にした“ナナハン”というカテゴリに国内モデルを持つのは今やホンダだけで、さらにホンダは大型アメリカンにおける展開の強化を図っている、ということだった。401cc以上の大型自動二輪車という枠で見渡してみると、1000ccを超える大排気量モデルを開発するメーカーがほとんどで、800cc以下のモデルは少数派となりつつある。そんな中でホンダが排気量750ccに固執する理由は、1969年に同社が生み出した初のナナハンモデル「CB750FOUR」という伝統だけではないはず。欧米のメーカーが“大陸横断”を目的に開発するのではない、日本という国の環境を知り、その国土に血脈のように流れる道路をスムーズに、ストレスなく走るために過不足ない力を発揮するのがこのカテゴリだと理解しているからである。同じエンジンを擁するシャドウ750やシャドウファントム同様に、ホンダの哲学が組み込まれているのだ。

そしてこのスポーティなフォルムは、アメリカン・スタイルの中でもハーレーが独占しているスポーツスターというジャンルへの挑戦に他ならない。インプレッションでも述べたが、このスタイルは大柄で鈍重なイメージが強い従来のアメリカンとは一線を画し、シティユースからハイウェイライドまで、総合力という点から見ても日本の道路環境にもっとも適しているモデルだ。アメリカンの強化を図るホンダにとって、スポーツスターというスタイルへの挑戦は必須であり、ホンダ・アメリカンのラインナップを完成させるラストピースと言えるだろう。また“カスタム”という点についてもホンダは抜かりない。このVT750Sについてオプションパーツを充実させており、メッキパーツを中心とした煌びやかなカスタムから、黒いパーツを多用したブラックアウト・カスタム、さらにスクリーンにETCキット、ナビゲーションシステムにサドルバッグといったツーリング性能を充実させるカスタムなど、オーナーのあらゆる好みに合わせられるバリエーションの豊富さも見逃せない。スタイリングから実用性まで、楽しみの幅が尽きないVT750Sは、欲張りなライダーの選択肢のひとつとなり得るポテンシャルを持っている。