掲載日:2019年12月27日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/ 和泉 拓 写真/稲垣 正倫
HONDA CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES DCT
ホンダ唯一無二のオンロードブランドである「CB」。そして最強のオフロードブランドである「CRF」。アフリカツインは、2015年の復活時にこの「CRF」を冠され、類い希な運動性能をもって登場した。そして、5年の時を経てフルモデルチェンジしたこのCRF1100Lアフリカツインは、よりオフロードにおける運動性能に特化させたスタンダードモデルと、よりツアラー性能を特化させたアドベンチャースポーツに個性を分けられた。今回のインプレでは、日本のマーケットに適したアドベンチャースポーツを中心に解説しよう。
今回のモデルチェンジを受けて、アフリカツインはオフロード性能を重視したスタンダードと、ロングツアラーとしての性能を伸ばしたアドベンチャースポーツに二分化された。パッと見て最初に目につく違いとしてはスクリーンの大きさだ。旧モデルよりも小型化されたスタンダードは路面状況を確認しやすくスポーツ性能を強化。アドベンチャースポーツは可変式のロングスクリーンを採用。高速巡航時の疲労軽減を意識している。
また、フェイスが異なる点にも注目だ。これは、アドベンチャースポーツにコーナリングランプが採用されていることによるもの。バンク角のセンサーによって、3段階のライティングが用意されており、夕方夜間の走りやすさは飛躍的に向上した。カウルの形状も、アドベンチャースポーツのほうがよりロングツーリング向きだ。
旧モデルに比べてシート高が低くなり足つき性が良くなっている点にも注目したい。旧CRF1000Lのスタンダードが870mm(アドベンチャースポーツは890mm)だったのに対し、CRF1100Lは830mm。さらにシートの差し込み位置を変え、ローポジションを取ることで810mmまで下げることができる。
また、フレーム設計を全体的に見なおしたことでシートからまっすぐに足をおろせる形状になっており、数値以上の足つき性を実現している。足つき性よりもさらなるオフロード性能を重視したいユーザーに向けて、サスペンションのストロークを長くした<s>タイプも限定販売されることになった。
これまで、個性派を含む多数のアドベンチャーバイクを乗り継いできた和泉 拓は、先代CRF1000Lとまとめて今モデルのエンジンを「ツーリング性能の高いもの」と太鼓判を押す。「先代においても、エンジンに対して不満点はありませんでした。トルクやパワーが十分なのはもちろんなのですが、ツーリングで想定されるシチュエーションでの作り込みが、とても素晴らしい。たとえばですが、30km/h以下で走るとても細かい、田舎のワインディング。こういうシチュエーションでは、2速でまわっているとエンストしそうになるためクラッチを切りたくなるようなバイクも多いのですが、アフリカツインのストール耐性の高さは、とても懐が深いのです。
特に私が、ツーリング性能として重視しているのは、こういった各ギヤにおける対応力の幅広さなのです。5速、6速の高いギヤでかなり多くのシチュエーションをこなせることは、疲労しないバイクの大前提だと思います。今回の新型CRF1100Lは、全体的に出力が底上げされていて、前述したような粘りも備えていることで、とても安心できました」とのこと。
「ですが、最も私がこの新型で驚いたのは、旧モデルから体感できる車体の軽さでした。正確に言うと軽いフィーリングです。特にステップを踏み換えるような時に、際だった軽さを感じます。これは、重量自体の軽さもあると思うのですが、フレームを相当部分アップデートしたと聞いていますから、それによる剛性の最適化も効いていることでしょう。
電子制御も一通り試してみました。特に気になっていたHSTCは、よりワイドなレンジになりましたね。最もHSTCを効かせると、雨でクラッチをつなぐだけで介入してくれるほどです。逆に最弱の設定では、ダートに対応できるレベルのものに仕上がっています。ただ、一世代前のアフリカツインもそうでしたが、電子制御一般、少し設定が複雑になってきています。サスペンションの細かいところまでセッティングするには、一般ユーザーでは少し慣れが必要になるかもしれません。どの電子制御も、体感できるレベルですが、電子制御サスペンションのEERAはオフロードでも如実に感じとれる効果があります。試しにジャンプしてみても、奥で何かがふんばっている感触がありますね」と和泉はコメント。