取材協力/スーパーバイク83 取材・文・写真/モリヤン 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年3月18日

最新のスポーツバイクは、排気系のカスタムだけでもとんでもない出費となる。それがスペシャルパーツの宿命だが、サイレンサーだけなら、大きな出費をすることなく着せ替えも楽しめないだろうか。そんな単純な疑問に真っ直ぐ答えたのが、「スーパーバイク83」ブランドのマフラーを手掛けるディグイットの田代さんが考案した、サイレンサー交換システムである。

INTERVIEW

さまざまなサイレンサーを試作するうちに
そのすべてを商品化することに気付いた

九州の福岡に拠点をもつディグイット。代表の田代光輝さんは元国際レーシングライダーであり、スーパーバイク乗りとして有名だ。鈴鹿の8時間耐久レースやデイトナでのレース経験も豊富であり、現在取り組んでいる「スーパーバイク83」ブランドのエキゾーストマフラーの製作は、そんな当時のバイクを愛して止まないからにほかならない。

 

田代さんは、マフラー製作の他にも70~90年代車らしい塗装の追求やメッキの質感にも拘るカスタムが得意で、このディグイットから生み出されていく当時のスーパーバイクバージョンのカスタムは、大きな反響を生み出しているのだ。

 

空前のバイクブームだった80年代は、一般ライダーの目がレースの世界に向けられた黄金期でもある。世界選手権から国内のレースまで、さまざまなカテゴリーが盛り上がり、各メーカーやスペシャルショップも、多くのハイポテンシャルマシンを生み出した。そのどれもが個性的で、現在でもコアなバイク乗り達の脳裏には、シルエットが焼き付いているのだ。

 

従来、エキゾーストシステムは、レーシングマシンのポテンシャルを極限まで高く追求するために開発されたもの。だから素材がスチールからアルミ、そしてカーボン、チタンと進化を続けているのだ。それは現在でもまったくコンセプトは変わらないはずだが、現存する当時のバイクに当時のマフラーを新品で取り付けることは不可能である。だから田代さんは、当時のシルエットを表現できる「オールドスタイルコンセプト」シリーズを考案したのだ。その反響はとても大きかったが、ユーザーは、さらなる要求を提案してきたという。

 

「フルエキで交換するのは大変だから、サイレンサーだけでも数種類使い分けられないのかな。という意見ですよ。それはルックスの変更ということもあるけど、音の問題もある。抜けの良いマフラーだけで1年中どこでも走るのは抵抗がある。という事情もありますね。それはユーザーが皆、家庭を持った大人だからですよ。サーキットやワインディングも走るけど、ツーリングも行く。ちょい乗りだってする。住んでいる場所も、マンションだったり新興住宅地だったりするわけで、そこでの暖気にも気を使っているんですね」

 

マフラー製作を始めた頃は、サイレンサーの交換というと、転倒して壊れた場合とか、形に飽きて他のデザインに改めるという、いわゆるリペアー物の注文が圧倒的だったが、ここ最近、事情が違ってきたのだという。

 

「今はサイレンサーを複数所有したいというライダーが増えてきています。走らせるシチュエーションや、気分で違うシルエットを楽しみたいということです。そこで、バイクの年代に合わせたさまざまなサイレンサーを製作することになってきた。つまり最初のきっかけは、ユーザーの意見なんですけど、彼らは具体的なデザインを言ってくるわけではない。だから僕の経験や見てきた知識の中から、製作可能なサイレンサーをたくさん製作することに決めたんです」

 

さまざまなサイレンサーを生み出すきっかけは、そんなユーザーからの要望に答えたということだったのである。もともと田代さんは、ワンオフのサイレンサー製作を手掛けており、細かなニーズに応えるために多様なサイレンサーを製作してきたことも要因のひとつになったようだ。

 

田代さんが制作したサイレンサーでも特に人気の一品に、モナカマフラーがある。これは1980年代の中盤から90年代にかけて、軽量かつ高性能なサイレンサーとして多く採用されていたものだが、その素材はほとんどアルミだった。元々は軽自動車用の触媒部分を改造したというルーツが語られるこのサイレンサーは、やはり少々クラシカルなイメージを演出するのに抜群なシルエットでもある。そのモナカマフラーにチタンで製作したモデルを追加した。

 

不思議なことに、アルミサイレンサーは、かなり古いモデルにもマッチするものだが、このチタン製のモナカタイプは、最新モデルにもマッチングが良い。よく似合うのである。形状が若干レトロでも、その素材でバイクとのマッチングが生まれるのだ。やはり、サイレンサーのデザインの奥深さを実感させられる部分である。

 

 

PICKUP PRODUCTS

装着された全体で見る
各サイレンサーのマッチング

田代さんの製作するサイレンサーやフルエキゾーストシステム。そしてバイクカスタム全般に貫かれているコンセプトは「オールドスタイルコンセプト」という。純レーサーを製作するのではなく、ムードで楽しむことを大前提にした考え方は、単に性能追求ではなく、そのサウンドにもこだわった物作りがされているのだ。バイクライフの楽しさを何倍にもするカスタムテイストとして考えられているのがオールドスタイルコンセプトである。「実は、きれいに作り過ぎないということも重要なんですよ」と田代さんは言う。当時のシズル感をできるだけ再現することが、このコンセプトの特徴である。

最新のスズキGSX-R750に装着されたタイプM1。本来はヤマハM1タイプとしてのモトGPスタイルだが、スズキにもよくマッチする。

タイプMO1チタン。MOとはモナカマフラーを表す。チタン製なので、鈍く光る独特の質感を持っている。

タイプモトGPチタン。サイレンサー部分が長く作られた個性的なマフラー。モナカタイプよりも現代的な外観を持つ。

タイプC3。Cとはカーボン素材を示す。3は三角断面であることを示す。軽量でバンク角を深く取れる特徴がある。

タイプMO3(アルミ)。モナカタイプの三角断面サイレンサー。カーボンは音色やルックスが好みではないというライダーに人気のサイレンサーだ。

ここからは、1980年代初頭のGS1000に似合うマフラーを。まずはオールドスタイルのカーボンサイレンサー。シンプルなシルエットである。

タイプMO1(アルミ)。モナカ構造のアルミサイレンサーは、当時最も装着率が高かったに違いない形状で、懐かしさが抜群である。

タイプ1(アルミ)。名前から分かるように、田代さんが最初に制作したサイレンサーがこの形状なのである。

タイプBL(ブラック)。アルミサイレンサーにRXコートと呼ばれる塗装を施したもの。耐熱性にも優れ、塗膜が薄く頑丈なことが特徴だ。

10ステンレス。形状は同じだが、素材はステンレス。重量はかさむものの、丈夫で質感の変化も少ないことで人気のあるサイレンサーである。

11ホンダCB900に装着されているのは、フルエキゾーストのスチールタイプ。当時のAMAスーパーバイクのフレディースペンサー仕様である。

12CB1300に装着されているのも、フルエキゾーストの200マイルシリーズ。素材は、バイクの年式に合わせたフルチタン製である。

13ヤマハのFZには、やはりこのスタイルが似合う。これもまたレース好きのバイク乗りなら記憶に残っているシルエットではないだろうか。

14メッキの質感にもとことん拘るのが田代さん。あまり表面を磨き過ぎることなく、少々荒れた表面処理をわざわざ創りだしているのだ。

15RXコートは、粉体塗装のパウダーコートよりも薄い塗装皮膜だがガンコートと同等の強度を持ち、カラーバリエーションも豊富。手前がRXコート後ろがパウダーコートである。

BRAND INFORMATION

スーパーバイク83

福岡市の博多駅から南へ約2km、筑紫通りを南下すればすぐにファクトリーに到着する。ショップと言うよりは完全な工房であり、作業はすべてここで行われている。メイン商品はマフラーやサイレンサーだが、トータルモディファイのサポートも行う。とくに1970~80年代の車両を得意とする。懐の深いショップである。

住所/〒812-089 福岡県福岡市博多区東光寺町2-8-11
営業時間/10:00-20:00(平日)、
定休日/不定休(レース日、イベント開催日休業)

【お問い合わせ】
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