数ある国産車の、いわゆるロードスポーツ呼ばれるバイクの中でも、SR400はとりわけ長い歴史を持っているのはご存知でしょうか。1978年に発売されて以来、幾度かのマイナーチェンジこそ受けたものの、発売当時からほとんど変わらない姿のまま現在に至っています。空冷SOHC単気筒というシンプルなエンジンを、オーソドックスな車体に搭載したSR400は、現代のバイクの基準から見ると、あまり高性能なモデルとは言えません。むしろ、年々ハイスペック化する傾向がある国産車の中では、見劣りしてしまう数字と言えるでしょう。しかし、SR400は30年の間絶え間なくライダーたちに愛され続け、高性能なモデルが数年で生まれては消えていく姿を横目に、今日まで歴史を積み重ねてきました。シンプルだからこそ際立つ美しさと、乗り手のスタイルを柔軟に受け入れる懐の広さが、SR400最大の魅力です。ノーマルで味わうのも、カスタマイズにいそしむのも、すべてライダーにゆだねられているからこそ、SRは面白いのかもしれません。そのSRもついに2008年、ひとまずの生産終了を迎えました。「SRの火は絶やさない」との力強いメーカーの言葉はあるものの、グッドコンディションの車両は今後少なくなっていくことは間違いないでしょう。でも、今ならまだ間に合います。シンプルで美しいニッポンの名車を、あなたも手に入れてみませんか?
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SR400の30年の奇跡は、大きく3つの時代に分けて考えられます。時代ごとの特徴を把握して、自分にあったSRを見つけましょう!
SR400は、ビッグオフローダーXT500の心臓部と骨格を受け継いで、1978年に発売されました。35mm径のフロントフォークに、19インチタイヤとディスクブレーキを装備。リアは5段階調整式のリアショックに18インチタイヤ、ドラムブレーキを採用していました。グラブバーはSR500のみの装備となり、SR400は省略。ハンドルはコンチハンドルとされ、小ぶりのシートカウルを装着していました。この時代から、SR400の基本構成に変わりはありません。
1985年から、SR400は中期モデルとなります。大きな変更は二つ有り、一つは前輪サイズの変更。19インチから18インチへと小径化されています。もう一つは、フロントブレーキの変更で、こちらはシングルディスクから200mm径のツーリーディング式ドラムブレーキへと変わりました。また、細部ではエンジン内部の強化からポジションの見直しまで、数多くの変更が行われています。SRの伝統とも言えるツートーンのグラフィックパターンもこの年代から。
厳しさを増す排気ガス規制によって、シングルスポーツが次々とカタログから姿を消していくなか、SR400は新排気ガス規制に対応。未燃焼ガスの再燃焼機構と、BSR33キャブレターを導入しています。また、前輪ブレーキをクラシカルなドラムブレーキから、2ポットキャリパーのディスクブレーキに変更。また、点火方式も現代的なバッテリーチャージ式へと改められました。熟成がしっかり進められているため、最も安心して楽しめるSRと言えるかもしれません。
SR生誕30周年を記念して、500台限定で特別モデルが発売されました。歴代SRの中でも人気を博したサンバースト塗装は、現在も職人の手作業による特別なもの。磨きこまれたパーツ類の多用や、特別仕様のシートなど、記念モデルにふさわしい内容です。この記念すべきSRが発売された年に、強化された排気ガス規制によって生産が終了してしまうのは悲しいことですが、メーカーから「SRの火は消さない」との力強い言葉がありました。
長年発売されていたSRだけあって、さまざまなバリエーションや同車のエンジンを流用したモデルが発売されています。ちょっとだけ、そちらにも触れてみましょう!
シングルエンジンを搭載したバイクは世の中にたくさんありますが、SRほど愛され続けてきたバイクはそうありません。昔ながらの車体やエンジンは、今のバイクに比べて性能でかなわないかもしれませんが、その分ライダーが自ら手を加える余地がたくさん残されています。ただ乗るだけでなく、自分にあわせてSRを変えていける、そしてSRがそれをおおらかに受け入れてくれる素地をもっているからこそ、ここまでの人気モデルになったのかもしれません。シンプルで美しく、遊び方も自由自在。そんなSRが積み重ねてきた歴史に、あなたも新しい1ページを書き加えてみませんか?