ホンダ GB400 / 500TT(1985)

掲載日:2015年05月01日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

HONDA GB400 / 500TT(1985)
満を持して送り出されたホンダの新シングルスポーツ。
外観は見ての通りの往年風、しかしその中にはホンダらしい試みが込められていた。

ホンダらしさはレトロにも

本項のテーマである1980年代。その初頭はバイクブームによって次々と新しいモデルが出てきたが、それはすなわち、バイクの進化そのものだった。新機構やディメンションが出ればそれを確かめ、一般化していく。中には今思えば過渡期だからこそ出てきた車両もあるし、素材や工作精度の進化、テストや設計の方法、時間というものも、同時に進化していった。現在に見られるバイクの形式や作り方の土台は、この時期に急速に進化・成熟していったとも言える。

バイクのラインナップも同様で、1970年代まではひとつのバイクがいろんなカテゴリーを掛け持ちし、それで間に合っていた。1980年代に入ると分化や専門化が進み、さまざまなジャンルが誕生していった。

そんな1980年代も中盤になった1985年に、今回紹介するGB400/500ツーリストトロフィー(TT)は誕生する。ホンダとしては1982年にFT400/500を送り出しているが、FTはダートトラックレプリカで、GBがホンダ初の本格ミドルシングルロードスポーツと言っていい。それは名称にも表れていた。

GBはグレートブリテン=イギリス王国を指し、1983年登場のGB250クラブマンで使われた。ホンダを“世界のホンダ”に押し上げたマン島TT=ツーリストトロフィーレース。そのマン島のあるイギリスにちなんだ。GB400/500TTには当初、CBの名を冠させる動きもあったようだが、CBは先進性を追う車両に、ということから、1960年代ブリティッシュスポーツ調の外観には合わないとして、GBとなった。

さて、その内容だ。外観こそシングルスポーツの多くが目指した1960年代調だったが、ハイテク・ニューメカ優先の当時の市場にどうアピールするか? カタログには「知り尽くした人にこそ美味しい、モーターサイクルグルメたちのGB」「味覚の領域で勝負したい」と、乗ってこそ楽しんでというフレーズが記された。数値は多気筒に及ぶべくもないが、乗り味こそということだった。実際に内容は、ある視点から見ればホンダらしさもよく分かる作りだった。

エンジンは当時の量産4ストオフロードモデル、XR500Rがベース。SOHCで4バルブヘッドを持ち、その4バルブは傘を燃焼室面に沿うように放射状に配置したRFVC。ドライサンプ式で車高が稼げ、本体を小型化できるメリットがあった。クランクマスは増し、デュアル→シングルキャブ化し、セルフスターターを追加してロード用とした。

GB400TTで走ると、ベースとなったXR500R風の鋭いパンチがあった。スロットル操作に忠実なレスポンスで加速力もいい。ライバルとして想定されていたヤマハSR400よりもロングストロークながら高回転の伸びも明確に感じられ、トップエンドのパワーも単気筒としては十分過ぎるほど出ていた。GB400TTは500TTとエンジンの基本は同じだったが400専用のボア×ストロークとして、よどみないフィールが得られていたのだ。

セミダブルクレードルフレームにはφ35mmのフロントフォークと2本サス。高速走行時の操縦安定性も良かった。前後18インチのホイールはリムをアルミとし、軽量化にも配慮。フロントブレーキはシングルながら効力に優れていた。GBは実は欧州市場向けXBR500との兄弟機で、XBRはアルミコムスターホイールを履いて外装が一部異なった、ベーシックスポーツ。欧州での高い要求がかかるクラスのモデルで、それを満足させていた。そう見れば、エンジンベースのXR500Rの軽さやパンチをきちんとロードスポーツに転用したと思える作り込み。ホンダらしい試みがここにあった。

400にはMk IIと呼ばれるロケットカウル装着仕様も用意され、これはGB500TTと同じく、TT感覚を味わうためのひとり乗り専用モデルとなった。GB400TTのみ追加仕様設定(1987年)と色変更(1988年)が行われ、3タイプの販売は終了する。ビッグシングルのニーズはもう少し時が経ってから、より強く興ってきたのだった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

 

90/90-18・110/90-18サイズのタイヤを履くリムはアルミでワイヤスポークは36本タイプ。各部に軽量なアルミを使いつつ、前後のフェンダーとサイドカバーはこだわりで鉄。17Lと大容量のタンクはTTレーサーイメージ風。サイドカバーのTT(ツーリストトロフィー)ロゴマークは転写マークを採用して入念に仕上げたもの。なおエンジンは500の92×75mm、40psに対して400は84×72mm、34psだった

GB400TT(43万9,000円)から1カ月をおいて、ロケットカウルとストッパー付きシングルシートを装備したGB400TT Mk2(46万9,000円、車重のみ3kg増の171kg)とGB500TT(46万9,000円)が登場。Mk2と500はひとり乗り

BikeBooksで雑誌・電子雑誌をチェック!

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索