掲載日:2024年11月13日 試乗インプレ・レビュー
写真/井上 演 取材・文/小松 男 川上 礁太
KAWASAKI Z900RS vs Z650RS
3回目を迎えた「対決(比較)企画」。確かにライバルモデル2台を乗り比べてみてどっちがどうなの? という部分は多くのライダーが気になるところではあるのですが、はっきり言ってしまうと一人ひとりの感覚と言うものは結構異なるものなので、なかなか一人の意見を押し通すのは難しいものです。
それなので、今回も昭和生まれの中年ライダー街道を突き進む私、小松 男(コマツ ダン)に加え、現在28歳の川上礁太(カワカミ ショウタ)さんをヤング代表として迎え入れ多角的に車両の良い点、気になった点を探っていきたいと思います。
今回のお題は、登場時から爆発的な人気を誇るネオクラシックバイクの雄、カワサキZ900RSと、その弟分的な存在でありながらもしっかりとしたファンに支持されているカワサキ Z650RS。つまり兄弟モデルの対決です。
2017年に発表されたZ900RS。Z1/Z2の再来かと言われるスタイリングこそ一番のポイントになっています。特にタンクからシートにかけて続くボディラインは美しいものです。
一方Z650RSはZ900RSから約5年遅れの2022年に登場。こちらもオーソドックスなネイキッドモデルをオマージュしたスタイリングでありながらも、Z900RSと比べると一回りコンパクトな印象。
Z900RSのシート高は800mmで、実は数値的にはZ650RSと同じ。ですが、タンクや股下にボリュームがありZ650RSよりも若干足つきに不安を感じる印象です。
Z650RSのシート高はZ900RSと同じ800mmですが、全体的にややコンパクトであり、しかも車重が軽いため、足つきの不安はありません。写真のライダーの身長は167cmです。
小松 男(以下・ダン):今回はZ900RSとZ650RSか。どちらのモデルも爆発的に売れているよね。うちの近所にもZ900RSに乗り換えた同年代のオトーサンがいるよ。
そもそも思い返せば、私が免許を取得した1990年頃はゼファーが登場し大ヒットしていた時代で、当時すでにリバイバルクラシックブームのはしりだったことをZ900RSが発表されたときに思い出したものだよ。”時代は巡る”ってね。
川上 礁太(以下・ショウタ):ぶっちゃけて言うとZ1やZ2はもちろん、ゼファーでさえも世代的には外れているのですが、なぜかZ900RSとZ650RSを見ると懐かしいという感じがするのは不思議です。
ただオーソドックスなスタイリングが素直にカッコイイと思えて、憧れを持つモデルとなっています。
ダン:Z900RSはZ900を、Z650RSは以前存在したER-6系のプラットフォームを採用しているんだけど、それらはかなりモダンなデザインとなっていたんだよね。それに対してクラシカルなスタイリングで纏めてきたのを見て、さすがはカワサキ、あっぱれだ! というのがそれぞれ登場時に抱いた率直な感想だったよ。
しかも乗ってみるとうまい具合にチューニングされていて、スロットル操作に対する”ツキ”なんてキャブ車のようなフィーリングが表現されているのには正直驚かされたね。
ショウタ:僕の場合はあくまでも新しいバイクとして目に映っているのですが、Z900RSはパーツやディテールを見ても高級感があってオトナのバイクだと思わせてくれます。4気筒エンジンのフィーリングにもグッと心をときめかせてしまいます。
Z650RSは並列2気筒エンジンということもありますが、親しみのあるエンジンの感触で、しかもコンパクトにまとめられているのでとても乗りやすいです。普通自動二輪クラスからステップアップする際にも最適なように思えました。
スタイリングからしてオッサンホイホイではあるのですが、意外とワカモノにも刺さっているようなので嬉しい限り。実際に走らせてみると、4発ネイキッド特有の味わいも感じられます。
兄弟モデルではあるものの、エンジンもフレームワークもまったくの別物と言える両者。Z900RSは水冷4気筒エンジンを、Z650RSは水冷2気筒エンジンを搭載。Z650RSのエンジンやエキゾーストシステムはモダンな印象を受けますね。
ダン:Z900RSは本当に良くできていると思うよ。同型エンジンを使用しているZ900と比べて圧縮比を下げたことによってマイルドな特性となっているし、フレームもフロント周りの設置の仕方を見直したことにより、若干ダルなハンドリングになっている。このセッティングが絶妙で、毎日乗っても飽きないし、ワインディングロードなどでも気持ちよく走らせることができる。
対してZ650RSはというと、トルク感こそZ900RSと比較すると薄いけれど、車体を前へと押し出すような独特な鼓動感が持たされている。足まわりの設定に関してもスタンダードな装備でありながらもスポーティな味付けがなされているので、攻めるような走りを楽しみたいならZ650RSを推すね。それに両者を乗り比べると圧倒的にコンパクトで扱いやすいのも大きなメリットに感じたよ。
ショウタ:僕の場合はZ900RSが好みですね。4気筒エンジンに触れる機会も少ないですし、感触も結構好みです。
ただ両車のシート高は数値的には同じなのですがZ900RSはボリュームがあるので、足つき性や取り回しのことを考えると、Z650RSの方がとっつきやすいことには違いありません。
ダン:街中で見かけると、Z900RSもZ650RSも同じように見えるじゃない。バイクのことを知らない人からすると、どっちがどっちだか分からないと思うほどだよね。
でも乗ってみると意外と違うキャラクターとなっているのは面白いことだし、Z900RSとZ650RSは明確にどちらが欲しいという気持ちを持ってから購入することを薦めたいね。
ショウタ:そうですね。見た目は似てるからどっちでもいいとか、こっちの方が価格が安いからなどではなくて、できれば両者の試乗をしてから、自分の使い方にはどちらがあっているかを考えて買うのが良いと思いました。
Z900RSとZ650RSは似ていますが、パッと見で区別をするならばフロントフォークが正立タイプ(Z650RS)か倒立タイプ(Z900RS)かを確認すればいいですね。
タンク、シート、サイドカバー、この周辺を切り取ると、本当にZ1/Z2などを上手く表現しているなあと関してしまいます。なんというか”ヒトに優しい”デザインになっていると思うのです。
ショウタくんはZ900RSのエンジンが大変気に入ったということ。シリンダーブロックにフィンが備わっていますが水冷なのでパフォーマンスも安定。エキゾーストノートも心地よい音色です。
ネイキッドブームドンピシャ世代のダンと、当時のことを知らないショウタくん。年齢は離れていてもどちらも良いバイクだと語り合えるZ900RSとZ650RSは、その人気の高さが理解できるものでした。
ダン:同級生の中には、最近80年代のネイキッドモデルを買ってリターンしたライダーがいるのね。それってリアルな旧車じゃない。過不足は無いのかもしれないけれど、やはり古いモデルだから装備は旧式。そう考えると、新車で手に入るZ900RSもZ650RSはアリだなって思ってしまうのだけど、クルマもバイクも旧車に対するロマンを持っている人が一定層存在することも分かっている。そういう人たちにどのようにアプローチすればよいかということを考えていたけれど、今回2台を乗り比べてみて改めて分かったことがあったよ。
それはやっぱりZ900RSもZ650RSも良い意味で現代のバイクだということ。白状するならば、個人的にはZ900RSのスタイリングは今一つ腑に落ちない部分がある。例えば、フレームの上に無理やり被せている感じのするタンクやモノショックであるところなどもそう。でも、別にこれで全然良いのだと思う。だって乗ってみるととても気持ちよくまとまっているのだから。
一方でZ650RSはエンジンやサイレンサーなど今風のデザインのままにしているところが潔く思えて好感が持てたし、乗り味も全体的な雰囲気も好き。サイズ感やパフォーマンスも日本の道路事情に合っているから、長く付き合うことができそうだよ。
ショウタ:カワサキというブランドがそう思わせるのか、どちらのモデルも”男っぽい”ですよね。革ジャンとタバコが似合うと言うか(笑)。その上でZ900RSの方は4気筒エンジンの図太い低速フィーリングや、ガッチリしたボディワークなどにゆとりや余裕が感じられるので今回乗ってみて心底惚れてしまいました。
Z650RSに関しては乗りやすさや扱いやすさなどから身近な友達感覚や毎日履くスニーカーのような存在になってくれるように思えます。
ダン:新車価格が40万円の差があるので、どうしても装備内容や仕上げの面で差がついてしまうのは仕方ないことで、高級路線という観点で見るとZ900RSに軍配が挙げるしかない。
でも一方で走ってみるとZ650RSならではの良い部分も多数感じられたので、兄弟モデルであっても侮れない存在となっていることを多くの人に知ってもらいたいと思ったよ。
ショウタ:僕はどっちも欲しくなっちゃいましたよ。たとえば親子でバイクを楽しんでいるような家族が2台を所有して好きな方を乗り回すなんて出来たらとても贅沢ですね!
Z900RSのフレームに被さるようなボリュームあるタンクがデザイン的に苦手に思えていたのに対して、Z650RSはスリムかつ上手く整合性のあるスタイリングで纏められているところが好印象。
Z650RSに搭載される並列2気筒エンジンは180度クランクなので、ツインエンジンの中では振動などが少ない方ではありますが、Z900RSの4気筒エンジンと乗り比べると鼓動感があると再確認。このエンジンも魅力的です。
Z650RSは軽量コンパクトかつパフォーマンス的に見ても程よいので、普通自動二輪からのステップアップのほか、力に自身の無い女性や久しぶりにバイクに接するというリターンライダーなどにもお薦めできます。
70~80年代のモデルを彷彿させるカラースキームは両者の特徴。しばしば限定カラーなども用意されており、一部のモデルはプレミア価格で取り引きがされているようです。
ハンドル幅はZ900RSの方が広め。パワーが大きい分抑えが効きやすいライディングポジションとなっています。対してZ650RSはライディングポジションもコンパクトなので取り回しが楽に行えます。
Z900RSもZ650RSもモノショックを採用しています。湾曲型のスイングアームやショートタイプマフラーなどでイマドキのスポーツモデル的なZ650RSと、あくまでオーソドックスなスタイリングで纏められたZ900RS。足まわりの印象は結構違いますね。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!