掲載日:2024年05月09日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/KTM JAPAN 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
KTM 990 DUKE
DUKEシリーズの中で唯一の並列2気筒を搭載したミドルクラスも990へと進化した。エンジンは従来モデルの890から排気量を58cc増やして947ccに。カムプロファイルの見直しやクランクマスの増加によりパワーと扱いやすさを両立。最高出力も890から7psアップの123psへと上乗せされている。
新型シャーシもライダーへのフィードバックをより重視した設計となり、メインフレームは剛性を大幅に強化しつつ、スイングアームは逆に剛性を落として軽量化することでコーナーでの旋回力を高めている。また、足まわりにも新型WP製サスペンションと軽量化されたブレーキを装備。ホイールベースを短くしアライメントも最適化されて運動性能を向上させた。KTM開発者によればトータルで96%の構成部品を新作するなど全面的にリファイン。文字通りのフルモデルチェンジとなっている。
デザインも大きく変わった。従来のストリートファイター風から、より洗練された正統派スポーツネイキッド的なスタイルへ。象徴的なヘッドライトも上下2段のLEDプロジェクターの周囲をポジションランプで囲む独創的なデザインへと進化した。
ライドモードも標準で3種類(スポーツ、ストリート、レイン)の他、オプションで最大5種類を選択可能。加えてコーナーへの進入スライドを可能にするスーパーモトABSや最大加速でスタートダッシュを決められるローンチコントロールなど、レース由来の機能もふんだんに盛り込まれているのが特徴だ。
見た目の雰囲気はフラッグシップモデルの1390スーパーデュークRに寄せてきた感じ。新型になった390DUKEも含めシリーズ全体でデザインも統一されてきた。
跨るとスッと沈み込む前後サスペンションと絞り込まれたスリムなシートのおかげで足着きも良好だ。通称LC8cと呼ばれる並列2気筒エンジンは単気筒かと見まがう小ささで、スーパーデュークR系のVツインに比べると明らかにコンパクト。走り出すと動的にも軽く、瞬発力のある中速トルクに乗せてタイトな峠道でも軽快なフットワークで右に左に切り返していく。とてもリッタークラスとは思えない抜群の自在感が990の魅力だ。
直接ルーツとなる初代790時代から伝統のリラックスしたライポジと、足の長いしっとりしたストローク感を生かした快適な乗り心地も健在。排気量アップとともにパワーも上乗せされ、アクセルオンでの加速力とともに高速クルーズでの余裕も増している。タンク容量が0.8L増えて満タンで300km以上走れるのも心強い。
試乗日は運悪く冷たい雨だったが、過酷な環境がかえって990DUKEの素性の良さを際立たせていた。特に感じたのが、マスを感じさせない軽快感。一番の理由はコンパクトなエンジンによると思うが新型シャーシの効果も大きい。メインフレームは側面剛性で8%、ねじり剛性で5%向上させ、逆にスイングアームの剛性は35%落としている。KTM開発者によると、ガッチリとしたフレームで挙動を安定させて、しなやかなスイングアームによって旋回力を生み出しているとのこと。ステムまわりやスイングアームピボットなど、ここではすべてを紹介しきれないほど、あらゆる場所に改良が加えられている。その結果、ライダーの感覚としては後輪が路面を蹴る感覚、いわゆるトラクションを感じやすく、とにかく曲がりやすいのだ。
3種類のライドモードやコーナリング対応のABS&トラコンも標準装備され、安全面でサポートされていることも心の余裕に。とりわけレインモードは出力が抑えられた穏やかなレスポンスで扱いやすかった。また、標準装着タイヤのS22の鮮明な接地感にも助けられ、みぞれ混じりのワインディングでも破綻することなく走り通すことができた。
まとめると、軽量コンパクトな車体にトルクフルで扱いやすいエンジン、快適なライポジを併せ持ったバランスの良さが990DUKEの魅力。見た目に依らず素直で親しみやすいマシンなので、街乗りからスポーツライドまで幅広く楽しめると思う。
ストファイ濃度が高かった890DUKEのマッシブな雰囲気から、より現代的でスポーツ志向にふったデザインへ進化。外装パーツからマフラーやスイングアーム、ホイールなどほぼすべてのディテールが刷新されている。
790DUKEで初採用されたKTM初の並列2気筒「LC8c」(cはコンパクトの意味)は990ではボア・ストを広げて排気量947ccまで拡大。ピストン、クランク、カムなどほとんどのパーツを新作し最高出力も7psアップの123psを実現。
新設計のスチール製フレームは他のDUKEシリーズが用いるトレリスタイプとは異なるチューブラータイプ(エンジンを吊り下げる形式)を採用。スイングアームピボットを外側からフレームで挟み込む形式に改め剛性を高めている。
フロントプレーキは4Pラジアルマウントチャリパーと500g軽量化されたφ300mmダブルディスク&ラジアルマスターシリンダーの組み合わせ。バネ下の軽量化によりブレーキ性能とサスペンション作動性、運動性能を向上させた。
新設計スイングアームは従来のオープンラティス型からボックスタイプに変更され1.5kg軽量化。バネ下軽量化とともに適度にしならせることで後輪のトラクションと旋回性能を高めている。
WP製φ43mmAPEX倒立フォークはしなやかなストローク感が持ち味。左右独立式ダンパー(左の白が圧側、右の赤が伸び側)を備え、工具を使うことなく手でそれぞれ5段階に簡単に調整できる。
リア側も同じくWP製 APEXモノショックを採用。スイングアーム直付けタイプのリンクを持たないシンプルな構造が特徴だ。5段階の伸び側ダンパー調整の他、マニュアルでプリロードの調整も可能。
外見上で最も変わったのがフェイスだろう。プロジェクタータイプの縦2灯LEDヘッドライトの周りにポジション&DRLを配置した前衛的なデザインを採用。タンクカウル&ラジエターシュラウドも鋭さを増した。
スーパースポーツタイプのシート形状を採用。シート高は825mmの890に対し5mmアップしたが、座面前方の角度を2度上向きにすることで前ずれしにくい安定したライポジを実現した。
TFTディスプレイを操作するためのスイッチギアは人間工学的に最適化された新デザインを採用。従来タイプに比べて指先の感覚だけで操作しやすくなった。
5インチのフルカラー接着ガラスTFTダッシュボードを新採用。グラフィックとメニュー構造も全体的に見やすく再設計されている。ライドモードは 標準のRAIN、STREET、SPORTに加え、オプションのPERFORMANCE、TRACKの5種類を搭載可能。
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