【スズキ GSX-S1000GX 試乗記】ド根性スタイルには疲れた。でも刺激欲は枯れてない。そんなアナタへ

掲載日:2024年05月07日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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SUZUKI GSX-S1000GX

2015年に登場したGSX-S1000から始まったスズキの新たな系譜。その最新モデルとなる「GSX-S1000GX」が新たなラインアップに加わった。スズキ二輪車初の電子制御サスを装備するクロスオーバーモデルだ!

地球規模のマーケットを
見据えた隙の無いパッケージ

2024年1月25日、スズキのニューモデル「GSX-S1000GX」が発売された。スポーツツアラーとアドベンチャーを融合させたクロスオーバーバイクである。アップライトなライディングポジションとスーパーバイク譲りのハイパフォーマンスエンジン、さらにスズキの市販バイクで初採用となる電子制御サスペンション(スズキアドバンスドエレクトロニックサスペンション)を組み合わせることで、極上のツーリング性能と刺激的なスポーツライディングを両立しているという。

クロスオーバーセグメントは欧州を中心に世界的なブームとなっているマーケットであり、ここ何年もの間、国内外の多くのメーカーが開発にしのぎを削ってきた。その中でスズキはGSX-S1000GXをどのように仕上げてきたのだろうか。数日間にわたる試乗テストで見えてきたGSX-S1000GXの本質をお伝えする。

スズキ GSX-S1000GX 特徴

求められているものを詰め込んだら
このような形になりました◎

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2015年に登場したGSX-S1000/S1000Fが物語の始まりだった。力強く扱いやすいと定評のあったスーパーバイクGSX-R1000(K5)のエンジンをベースに低中回転でのトルクに振ったチューニングを施したスポーツネイキッドで、ストリートユーザーやツーリングファンなど幅広い層に支持されることとなる。なお現行カタナもGSX-S1000をベースとして開発されている。

2021年、早くもフルモデルチェンジが図られる。出力が引き上げられつつ電子制御システム(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)を搭載、扱いやすさと鋭い走りに磨きが掛けられた。2022年には派生モデルとなるスポーツツアラーGSX-S1000GTが登場。初代モデルにあったフロントカウル付きGSX-S1000Fがモデル落ちしていたこともあり、その隙間を埋めつつ、さらに快適な旅をもたらす仕様で纏められたまさにグランドツーリングモデルとなっていた。

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そして2024年、新たなファミリーとしてクロスオーバーモデル「GSX-S1000GX(”GX”はGrandCrossoverの意)」が加わり、ネイキッド=GSX-S1000、スポーツツアラー=GSX-S1000GT、クロスオーバー=GSX-S1000GXと出揃った。この強力な布陣はもはやスズキのビッグバイクビジネスの中核を担っていると言えよう。

ツーリング文化の根付いた欧州では昨今特にクロスオーバーセグメントの人気が高い。振り返れば90年代からアルプスローダーなどと呼ばれるサスペンションストロークが長めに設定されたロードモデルがにわかにブームとなり、その延長線上に本格的なビッグアドベンチャーモデルが爆発的にヒット、各メーカーこぞってマーケットにニューモデルを投入してきた。ここ最近はその中でもオフロード志向のモデルかオンロードスポーツ志向のモデルかに細分化され、今回のGSX-S1000GXはその後者にあたる。

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GSX-S1000GXのフィーチャーポイントは何と言っても長いストロークを最大限に活用できる電子制御サスペンションを採用したことだ。私は何度となく”調整機構がついているサスペンションは触ってみた方が良い”と唱えてきたが、それでもなかなかサスペンションのセッティングを行うライダーは少ないと思っている。でもGSX-S1000GXは大丈夫。ストップアンドゴーが続く市街地、ハイスピードで坦々とクルーズする高速道路、車体を軽快に振り回すようなワインディングロード、さらには未舗装路やソロ、タンデム、荷物の積載量まですべて車両がセンシングし、常に最適なサスペンションセッティングを自動的に行ってくれるのである。これはとても魅力的な装備である。

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その電子制御サスペンションの真価を含め、日常的な場面からツーリングまで、GSX-S1000GXを使用した感触をお伝えしていこう。

スズキ GSX-S1000GX 試乗インプレッション

強烈! 寛容! 楽ちん!
つまり速くて快適なのである!!

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GSX-S1000GXはすでに製品説明会や東京モーターサイクルショーで実車を見ており、その時も感じたのだが、傍から見ると大柄に見えるものの跨ってみると意外とコンパクトに纏められていることが分かる。特にステップバーの位置が高めで、いわゆるビッグアドベンチャーモデルと比べれば膝の曲がりもキツイ。この事から、ロードスポーツよりのキャラクターであることが走り出す前から伝わってきた。

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とはいえ兄弟モデルのGSX-S1000GTとハンドル位置を比較してみると、上方向に38mm、手前方向に43mmというのでライダーの上体は立ち、かなり安楽なポジションとなる。スズキのバイクでお馴染みとなったイージースタートシステムを装備しており、ワンプッシュでエンジンを始動させると、リッター4気筒ならでは太い低音が周囲に響き渡る。最近パラレルツインエンジンのモデルが増えてきている中、やはり並列4気筒の音は良いなと思いながらミッションを1速に入れて走り出す。

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相変わらずこのエンジンは素晴らしい。極低回転域からモリモリした力強さが溢れながらスムーズに回転が上昇してゆく。扱いやすくタフなこのエンジンはこれまでに18万基以上製造されているというのも納得でき、すでに円熟していると言える。身長177cm、体重70kgの私にはライディングポジションがとてもマッチし、狭い路地やUターンも非常にしやすいというのが市街地を走らせた際の第一印象だ。クイックシフターの入りも良く、小気味良くリズミカルにシフトアップ/ダウンが行える。

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ワインディングロードもサイズを感じさせないほどクイックに車体をバンクさせることができる。先述したようにステップ位置が高いことがメリットとなっており、リーンのきっかけとなる入力をしやすいのだ。防風性能も高くハイウェイでの高速クルーズも快適。クルーズコントロールも簡単にセットできるうえ、回転域を問わず不快な振動が無く、どこまでも突っ走っていきたくなってしまう。これはヤバいノリモノだ。

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実はこの快適かつ安全で速く走れることの裏側には、例のスズキ市販二輪車初採用となる電子制御サスペンションシステムの恩恵がある。低速域であれば、まだしもスーパーバイク譲りのハイパフォーマンスエンジンと、アップライトなポジション、さらにロングストロークサスペンションという組み合わせでは、加減速時の前後ピッチが大きく、場合によっては不安を感じてしまうこともあるのだが、各種センサーによる瞬時の計算によって最適なダンピングにセットされる。サスペンションストロークスピードや車速から演算し理想的なピッチ運動を実現しているのだ。

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なおリアサスペンションにはオートプリロード機能も付随しており、最大10mmの調整幅を1mmあたり約1秒で調整してくれるのもポイント(フロントサスペンションのプリロード調整は右側フォークの下側に備わるアジャスターで行う)。ロングツーリングはもちろんチョイノリも照準になっていることが乗るたびに伝わってきた。この手のバイクは贅沢に全部盛りであり、しかもどんなシチュエーションでも楽しめるように仕立て上げられていることが肝であり、それが見事に完成しているのである。

以前スーパーバイクモデルや大排気量メガスポーツツアラーなどでブイブイ言わせていたようなライダーが、エレガントかつ快適にスポーツライディングを楽しめるモデルを求めるようになってきたことも、現在のクロスオーバーモデルブームの一つの要因であり、GSX-S1000GXはそれらを満たすバイクに仕上がっている。

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GSX-S1000GTよりも約40万円高い価格設定となっているが、車両本体価格199万1000円ということは税抜きでは180万円程度となり、電子制御サスペンションをはじめとした豪華装備が奢られた最新モデルとしてはかなりお得な感じもしてしまう。ライバルは多いが装備、性能、価格などから考えると良い選択肢であることに違いない。

スズキ GSX-S1000GX 詳細写真

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GSX-R1000直系の排気量998cc直列4気筒エンジンを搭載。この同系パワートレーンはこれまで18万基以上製造されてきたと言われ、性能、耐久性は折り紙付き。スロットルワークに対するマネジメントも熟成されており、トルク、パワーも申し分ない。

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足まわりでのポイントは言わずもがな電子制御サスペンションだ。フロントフォークは右側に1/1000mm単位で測定するストロークセンサーを内蔵、左側にはカートリッジを内蔵しソレノイドバルブによって伸側、圧側の減衰力を走行状況に合わせ自動調整する。

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高剛性アルミ湾曲スイングアームにリンクを介してセットされるモノショックは、電子制御によりプリロード、減衰力を調整する。ライダーは無意識のうちに最適なセッティングにしてくれるのだから楽なものである。

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前方へ鋭く突き出たノーズに縦2灯レイアウトのLEDヘッドライトをセット。その両サイドにはLEDポジションランプも備わり、総じて前衛的なデザインのフロントマスクとなっている。スクリーンは最大43mm、3段階の調整が可能となっている。

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シート高は830mm。これはGSX-S1000GTと比べて20mm高いが、ビッグアドベンチャーモデルのVストローム1050DEより50mm低い数値。パッセンジャーシートは座面が広くタンデムも楽だ。

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6.5インチフルカラーTFT液晶ディスプレイを採用。ライディングモードやサスペンションセット、トラクションコントロールなどは、スズキインテリジェントライドシステム(S.I.R.S.)で電子制御されている。スマートフォンアプリと連動することでナビシステムなども利用可能だ。

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「OK」「戻る」「十字キー」だけでほぼすべてのセッティングが可能。ディスプレイ内の表示も分かりやすく、直感的に色々なモードチェンジを楽しむことができた。ウインカースイッチの右側はオートクルーズのスピードセットボタン。

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本文にも記述したが、ステップ位置はスポーティな印象でオンロード志向のモデルだということが分かる。クイックシフターのタッチは軽く、気持ちよくシフトチェンジを行える。

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車体カウル後端にセットされたテールライトや、小型のウインカーなどでコンパクトなデザインにまとめられたリアビュー。リアキャリアはフラットな形状で積載性も良い。左サイドの棒状のパーツはリアサスペンションの制御を行うモーターユニット。

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昨今のスズキスポーツモデルらしいレイヤードデザインを採用。カラーバリエーションはブルーのほかに、ブラック、グリーンを用意。燃料タンクの容量は19リットルとされている。

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インフォメーションディスプレイの左サイドにはUSBソケットが用意されている。スマートフォンをはじめとしたガジェット類へ給電するのに重宝する。

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タンデムシート下には標準装備となるETC2.0の車載器が収まるほか、多少のユーティリティスペースも確保されている。シート裏のワイヤーはヘルメットホルダーに使用する。

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