掲載日:2022年02月03日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
HONDA CBR400R
2013年に登場したCBR400Rは現行販売されている排気量400ccクラスのスポーツバイクの中で、絶大な支持を受けている一台だ。2019年のフルモデルチェンジにより2代目となり、よりアグレッシブなモデルへと変貌を遂げていた。そのCBR400Rが、2022年モデルでマイナーチェンジ。ブレーキのリセッティングのほかフロントフォークに倒立タイプを採用し足まわりを強化。スポーティな走りにさらに磨きがかけられた内容となった。デリバリーが開始されたばかりの新型CBR400Rに実際に触れながら詳細をお伝えする。
1980年代のレーサーレプリカブームに多少なりとも間に合った私は、”CBR=4気筒”と考えていた世代でもある。それというのも80年~90年代に生産されていたCBR400やCBR250は4気筒であり、実際に高校生時代にCBR250F、CBR400RRを乗り継いだこともあり、エンジンには超高回転域まで伸びやかな加速を楽しめるカムギアトレーンをはじめ最新技術が採用された高性能レーサーレプリカというイメージを抱いていたのだ。しかしブームが去るとレプリカモデルの重要も少なくなり、最終的には生産を終了することとなった。
それから長い年月が経った2013年に、CBR400Rは復活を遂げた。以前のようなレーサーレプリカ然としたスタイリングではない、しかも2気筒エンジンが採用された。だがしかし、それは新時代のフルカウルスポーツバイクを担う姿であり、多くのライダーに受け入れられて爆発的なヒットとなった。特に海外諸国ではプレミアムコンパクトスポーツモデルとして支持されていることも付け加えておく。復活したCBR400Rの登場時にはじっくりと乗り、ロングツーリングや日常的にも使うようなテストをしたことがある。確かに扱いやすくフレンドリーではあるのだが、パンチが足りない感じがしたという記憶が残っていた。
2019年にはフルモデルチェンジが行われ2代目のCBR400Rが登場。全体的にスポーツ志向が高められたと聞いていたが、触れる機会が無かった。そして2022年1月マイナーチェンジが行われ、足まわりを中心に強化が施されたと聞き、果たして現在のCBR400Rはどのように進化しているのだろうかと気になり、最新モデルに触れてみたくなったのだ。
今回マイナーチェンジが行われたCBR400Rは、基本的には2019年に登場した従来モデルとスタイリング的には大きな差はないものの、フロントブレーキがダブルディスクになっていることや、倒立フォークが採用されていることから新型だと簡単に判断することが可能だ。それにしても久しぶりに近くで見るCBR400Rには、普通免許クラスのバイクとは思えない程質感が高く感じられる。
車両に跨ると、思っていた以上に前傾姿勢を強いられることが分かった。この”思っていた以上に”という部分だが、先代CBR400Rではセパレートハンドルでありながらも、かなりアップライトなライディングポジションだと感じていたからだ。とはいえ新しいCBR400Rもハンドル位置は遠からず近からず、抑えの効く自然な場所にセットされているので、走り出した瞬間から扱いやすいバイクだと伝わってきた。
まず何といっても軽い。カタログスペック上は192キロとあるのだが、それに輪をかけて軽く感じさせる。それはシッティングポジションや、マスの集中化がしっかりと行われていることも大きいだろう。ワインディングロードに持ち込み、スポーツライディングを楽しもうとしたところ、腰をずらして荷重移動をして……などとせずとも、軽い手ごたえで想像以上に良く曲がるのだ。これは全体的なバランスの良さと、良く動く前後のサスペンションがポイントとなっている。ブレーキの効きやコントロール性も高く、ラインの修正も簡単。これならば、ビギナーやスキルに自信のないライダーであってもスポーティなライディングを心から楽しめるであろうし、サーキット入門用車両としてもお薦めできる。
低回転域で少々どんくささを感じさせた初代と比べて2代目のエンジンセッティングは、中低速からモリモリとしたパワーがある。さらに6000回転からレッドゾーンまでの伸びやかな回転上昇はとても気持ちが良いものだ。よって街中では快適スムーズに、高速道路などでスポーティな走りを楽しみたいときには6000回転以上をキープすることで刺激的な走りも楽しむことができるのだ。
嵐のように風の強い日に、高速道路を走らせる場面があった。先述したように、かなり軽い印象を持つ新型CBR400Rは、上体を上げている時こそ、強風にあおられると足元をすくわれそうな感触があったが、しっかりと体を伏せてフロントカウルに身を沈めれば、グッとフロントの接地感が向上し安定した走りをすることができた。後から気づいたのだが、アンダーカウルから左右に飛び出たコンパクトなウイングレットも多少なりとも効いているのかもしれない。
CBR400Rの返却時に現行CBR250RRの隣に並べ眺めてみた。スタイリングは同系統、サイズも大差はない。どちらかと言うとCBR400Rの方は機械式スロットルであるし電子制御デバイスなどの装備もなくアナログな感じさえする。しかしコレデイイノダ。
このクラスのバイクは自身でバイクを操ることができるし、またその勉強にもなる。むしろ電子制御など無用の長物とも考えられる(無駄なわけではない)。車検による維持費の差はあるが、やはり普通二輪免許クラスでのフラッグシップスポーツモデルであるCBR400Rは大きな所有欲を満たしてくれるものなのだ。
排気量399ccの水冷4ストロークDOHC並列2気筒エンジンは、最高出力46馬力を9000回転で発揮する。低回転では粘りがあり、高回転ではシャープに回る設定だ。初代モデルと比べてラジエーターが小型化されている。
2022年モデルで行われたマイナーチェンジでの大きなポイントとなっているのは、フロント足まわりの刷新だ。SHOWA製の倒立フォーク「SFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン」となったほか、ブレーキもダブルでセットしている。
シャープで精悍な顔つきのフロントマスク。ウインカーを含め灯火類はLEDを採用。ウインドスクリーンは高い整流効果を発揮するが、高速走行をより一層快適にしたいならば、純正アクセサリーにあるハイウインドスクリーンに換装するのも手だ。
ツインエンジン特有のパルス感のある歯切れの良いサウンドを奏でる異形断面のショートマフラー。アイドリング時は静かに、高回転域では上昇するにしたがって力強い咆哮をあげる。
両持ちレイアウトのボックススイングアームは構造が見直されたことで初代モデルよりも軽くなっている。リアブレーキがコントローラブルであり、姿勢の制御をしやすいので、ビギナーライダーでも扱いやすく感じるだろう。
ライダーとパッセンジャー側がセパレート構成とされたシート。ライダー側のシート高は785mmで、スポーツモデルとしては低く抑えられている。足つき性に不安や不満を持つことはあまりないだろう。
スポーティなポジションにセットされたステップバー。フレーム部やヒールガードが荷重をかけやすい形状となっており、非常に車体をコントロールしやすい印象を受けた。シフトロッドが長いが、ギアチェンジのダイレクト感は高い。
ボリューミーな形状だが、手前に掛けて細くシェイプされており、内ももで挟みやすい形状となっている燃料タンク。容量は17リットル。マイナーチェンジでグラフィックが刷新されおり、カラーバリエーションは、マットブルー、マットブラック、レッドの3色だ。
2019年のフルモデルチェンジ時に、トップブリッジ上部から、下部へとセット位置が変更されたセパレートハンドル。やや前傾姿勢はきつくなったものの、窮屈な感じはしない。クラッチレバー操作の軽さが印象に残る。
リアカウル下部にステーが装備され、そこにウインカーやナンバーが設置されたテールセクション。コンパクトでスポーティな印象を受けるデザインとなっている。
プリロード調整機構を持つリアサスペンション。トラクションが伝わりやすく良い動きをしてくれるが、若干柔らかい感じがしたので、タンデム時や荷物の積載時には少々締めてみると良いだろう。
パッセンジャーシートを外すとユーティリティスペースが設けられていた。若干ではあるがライダー側の下まで続いているので、ETC車載器+αの容量が確保されている。
デジタル表示のメーターパネル。フルカラーTFTが多くみられる中で、抜き文字タイプはむしろ新鮮なものとして目に映る。視認性は良く、インフォメーションが伝わりやすい。
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