【カワサキ ニンジャ ZX-25R 試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ

掲載日:2020年08月07日 試乗インプレ・レビュー    

衣装協力/KUSHITANI 取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/星野 耕作 

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ メイン画像

KAWASAKI Ninja ZX-25R

話題沸騰の「Ninja ZX-25R」がついに国内デビューした。カワサキとしては30年ぶりとなる250ccクラスの新型4気筒スーパースポーツである。そして今回、国内屈指の高速サーキット、九州のオートポリスでメディア向け試乗会を開催。おろし立てのニューマシンの実力を探るべく全力試乗してきた。

動画 『やさしいバイク解説:カワサキ ニンジャ ZX-25R』はコチラ

カワサキ ニンジャ ZX-25R 特徴

ZX-10Rの設計思想を投入

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ 01画像

「ウチがやらなきゃ誰がやる」、「新しいところに点を打つ」。開発者の口をついて出る言葉にもカワサキらしい漢な響きがある。

新開発の水冷直4エンジンは最高出力45ps/15,500rpm(ラム圧過給時46ps)と、もちろんクラス最強スペック。最大トルク2.1kgf-m/13,000rpmは同門のニンジャ250の2.3kgf-m/10,000rpmに比べると一見劣るようにも見えるが実は駆動系の設定の違い(つまりはギヤ比)によって、実質的な駆動力では同等以上となっている。そこが高回転パワーに余裕のある直4エンジンの強みだ。

マシンの骨格とも言えるフレームは新設計のスチール製トレリス構造を採用し、限界時の挙動をしなやかにライダーに伝えるメリットを狙っている。よく見ると、ニンジャ250とはまったく異なる構造で、材質はスチールではあるがその形状はむしろ6Rや10Rなどに採用されるアルミツインスパーフレームにそっくり。パワーに見合う安定性を得るために伸ばされたスイングアームもやはりスチール製だが形状はスーパースポーツルックだ。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ 02画像

これを支える足まわりにもSFF-BP倒立フォークとカワサキ独自のホリゾンタルバックリンク式リアショックに、ラジアルモノブロックキャリパーを組み合わせるなど盤石な作り。なお、開発者によるとブレーキは当初ダブルディスクを想定したが、専用開発されたシングルディスクが“極めて優秀”だったため、あえてシングルのままとしたそうだ。結果的にフロントの慣性力が減ってハンドリングにも軽快さが増すなどメリットを引き出している。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ 03画像

さらに電子制御も最新タイプが投入された。250ccクラスでは初となる3段階調整のトラクションコントロール(KTRC)に2段階のパワーモード、アップ&ダウン対応のクイックシフターなど、随所にZX-10Rのテクノロジーや知見が生かされているのが特徴だ。まさに現代の性能を持って生まれ変わった21世紀のスーパークォーターである。

カワサキ ニンジャ ZX-25R 試乗インプレッション

本当の意味でスポーツできる

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ04画像

車体サイズはほぼニンジャ250と同格だが、エンジンまわりに重厚感があるのは直4ならでは。リアタイヤサイズも150と堂々たるボリューム感で、250ccクラスとしては大柄で存在感がある。ハンドル位置は低すぎず、跨ってみると前傾度もそれほどきつくないし、シート高に至ってはニンジャ250より低いほど。この馴染みやすさはニーゴーならではだ。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ05画像

エンジンはとにかくよく回る。低中速でのレスポンスは穏やかだが、10,000rpmを過ぎた辺りからタコメーターの針は急上昇。回すほどにパワーが盛り上がってくる典型的な高回転高出力型の4気筒らしいエンジンだ。さらに本領を発揮するのは12,000rpm以上で、そこからレッドゾーンに入る17,000rpmまでが美味しいところ。その回転域を外さず、いかにパワーバンドをキープできるかが、25Rをスポーティに楽しむキモだ。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ06画像

透明感のある吸気音とカン高いエキゾーストノートが入り混じった絶叫サウンドに包まれる心地よさ。これは乗った者にしか分からない快感だろう。高速コーナーをスロットル全開のままフルバンクで駆け抜ける。そんな宣伝文句のようなことが本当にできてしまうところが、25Rの素晴らしさだ。同じことをリッタークラスでやろうとしても難しい。ほとんどのコーナーではスロットルを半分も開けらず、それがストレスになる。ところが25Rの場合、ここオートポリスではストレートはもちろんのこと、コース全体の7~8割は掛け値なしの全開でいけるイメージだ。乗せられているのではなく、操っている実感。それこそが本当のスポーツだと言える。

トラクションコントロールに任せて全開フルバンク

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ07画像

そして、サーキット全力走行でもビクともしない安定感で支えているのが高剛性な車体だ。スチール製ではあるがデザインはスーパースポーツの定番であるツインスパー形状そのもので、開発者曰く重心位置や車体各部のディメンション、電子制御を含めて10Rの設計思想があまねく投入されているそうだ。言われてみれば、滑らかで上昇感のあるエンジンやハンドルの垂れ角まで似ている。ちょうど5分の4スケールの“リトル10R”と言った感じだろうか。前後サスはグレード感があって高荷重でも腰砕けしないサーキット向きのセッティング。フロントブレーキもシングルディスクだが十分すぎるほどの制動力で、ABSも握り込んだ奥で効くレース仕様に近いタッチだった。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ08画像

電制も良く出来ている。クイックシフターはアクセル全開のまま爪先でかき上げるだけで、場所を選ばずクラッチを切らずにシフトダウンもできる優れモノ。動作も極めてスムーズで、サーキットではタイムを縮めるための武器になることはもちろん、コーナリング中でも躊躇なく瞬間的にギヤチェンジできるので安全マージンも高い。街乗りやツーリングでも楽できて疲れないなどメリットの宝庫だ。また、KTRCも自然な作動感で、フルバンクでアクセル全開にできるのもトラクションコントロールのおかげだと実感。たとえば、中間の「モード2」に設定しておくと、ヘアピンの立ち上がりなどで黄色いランプが点滅してトラクションコントロールの介入を教えてくれるが、従来のように間引き感もなく自然に加速していける。最初はニーゴーでトラクションコントロールが必要かとも思ったが、実際に使って走れるし、トラクションコントロールに任せて全開にできる安心感がある。特にグリップ感が分かりづらいハーフウェット路面などは威力絶大だ。

ストリートでも自分の意思で操る楽しさ

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ09画像

ストリートでも阿蘇山周辺のワインディングを100km程度ツーリングしてみたが、これがけっこう楽しめた。6,000rpm~8,000rpm辺りの25Rにとっては中速トルク域を使って流すのが気持ち良く、自分の狙ったラインを通していくゲーム感覚の楽しさがある。さりとて、けっして自動操舵的ではなく、ステップを踏み込むなど自分の意思でしっかりきっかけを作ってやるとスパッと曲がっていく切れ味を見せてくれる。やはり味付けはスポーツ主体なのである。

気に入ったのがシートで、薄くても吸収性がよくホールド感にも優れていて快適。ワンデーツーリングでも尻が痛くなることはなかった。また、見た目以上にハンドル切れ角が大きく、極低速トルクも途切れることなくコントロールしやすいのでUターンも楽だった。等々、細部に至るまで隙なく作り込まれた完成度の高さが印象的だった。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ10画像

結論としては、ツーリングもできるスーパースポーツ。ストリートも楽しいが、やはりサーキットが25Rのハレ舞台なのだと思う。その意味でZX-25Rは新たなスーパーマルチクォーター時代の幕開けを告げたと言えるのだ。

カワサキ ニンジャ ZX-25R 詳細写真

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ11画像

大径の軽量アルミ鍛造ピストンによる高回転化と挟角大径バルブ化による燃焼効率アップなどによりクラス最強スペックを実現。電子制御スロットルバルブを採用するなど最先端の水冷直4エンジンだ。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ12画像

φ310mm大径シングルディスクにニッシン製ラジアルモノブロックキャリパーを装備。同じく最新のニッシン製ABSがサーキット走行にも対応した緻密な制御を実現。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ13画像

フロントフォークはショーワ製φ37mmのSFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク-ビッグピストン)を採用。左右で別個にスプリングと減衰力を受け持つことによる軽量化と、大径ピストンによるリニアで滑らかな作動が特徴だ。調整機構無し。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ14画像

φ220mmディスクにニッシン製シングルピストンの組み合わせで、ストリートはもちろん、サーキットでも扱いやすい制動力を発揮。スイングアームはこの見た目でなんとスチール製。マス集中化に貢献するショートマフラーの逃げを作るため湾曲形状になっている。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ15画像

10R同様、ショック本体を水平に寝かせたレイアウトが特徴的なカワサキ独自のホリゾンタルバックリンク式リアサスペンションを採用。マス集中やマフラー熱の影響を最小限にするメリットもある。プリロード調整付き。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ16画像

Ninja ZXシリーズ共通のセンターラムエアダクトと鋭いチンスポイラー形状が目を惹くフロントマスク。LEDツインヘッドライトと伝統のビルトイン式ウインカーを採用する。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ17画像

容量15ℓのフューエルタンクは後端が絞り込まれたスリムな形状でコーナリング時のホールド感も良好。タンク上面には伏せた姿勢でヘルメットの顎が当たらないよう凹みがデザインされている。つまりサーキット走行が前提ということだ。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ18画像

スポーツ性能と快適性を両立したシート。ウレタン材質と加工の工夫によりスポーティでありながら快適なホールド性を実現した。785mmのシート高とスリムな形状により足着き性はかなり良い。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ19画像

シフトアップ&ダウン対応のKQS(カワサキクイックシフター)をSEには標準装備(STDはオプション)。2,500rpm以上の回転域でスムーズかつ緻密なシフトを実現、オートブリッパー機能によりシフトダウン時もショックのない滑らかなシフトが可能だ。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ20画像

KTRC、パワーモード、KQSなどの各種モード機能は左手元にあるスイッチで操作できる。「SEL」ボタンでモードを切り替えて上下のスイッチで段階を選択するシンプルな仕組み。走行中にもセッティング可能だ。

【カワサキ ニンジャ ZX-25R試乗記】まさにリトル10R! 直4の魅力が詰まった新世代マルチクォーターだ21画像の試乗インプレッション

中央にアナログ式のタコメーターを据えたレーシーなコックピット。液晶パネルのギヤポジション表示も大きく見やすい。5,000rpm~17,000rpm範囲で任意に設定できるシフトタイミングインジケーターを駆使したパワーバンドキープの走りが楽しい。

カワサキ ニンジャ ZX-25R 動画でチェック!

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索