【ヤマハ YZF-R15 試乗記】激戦区をリードする155ccスーパースポーツ

掲載日:2020年02月26日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦  写真/伊井 覚

【ヤマハ YZF-R15 試乗記】激戦区をリードする155ccスーパースポーツの画像

YAMAHA YZF-R15

正規輸入は行われていないものの
全国のショップが独自の輸入販売を展開

若者を意識したエントリーモデルにして、誰もが気軽に楽しめるフルカウルのスポーツモデルと言ったら、日本とアメリカでは250ccが定番である。とはいえ、ヨーロッパでは昔から125cc、ここ十数年で急成長を遂げた東南アジアでは125/150ccが、人気ジャンルとしての地位を確立しており、近年のこのクラスでは国産4メーカーやKTM、アプリリアなどが、熾烈なシェア争いを繰り広げている。

そんな中で強烈な存在感を放っているのが、YZF-R1/6の思想と技術を継承したモデルとして、2008年から、ヨーロッパ市場にYZF-R125、東南アジア市場にYZF-R15を投入しているヤマハだ。もっとも現在のヤマハは、YZF-R125/15を日本で正規販売していないのだが、全国のショップが独自の輸入販売を行っているので、入手は至って簡単である。なお日本に輸入されるスモールYZFは、数年前まではR125のほうが多かったものの、近年ではR15が多数派になっているようだ。

ヤマハ YZF-R15 特徴

猛追するライバル勢を迎撃するため
クラス初のメカニズムを導入

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排気量が少ないせいか、何となく甘く見る人がいるようだが、YZF-R125/15は兄貴分のYZF-R25/3と比較しても遜色がない……どころか、見方によってはYZF-R25/3以上の気合いを感じるモデルである。ちなみにR125/R15は、基本的に兄弟車でありながら、互いに影響を及ぼす形で、各車各様の進化を遂げてきたものの、現行モデルは数多くの部品を共有化。ここではR15を主軸として、これまでの変遷を紹介しよう。

まず2008年に登場した初代の時点で、YZF-R1/6を思わせるスチール製デルタボックスフレームに、新設計の水冷SOHC4バルブ単気筒を搭載するR15は、スポーツバイクとして秀逸な資質を備えていたし、アルミスイングアームとセパレートタイプのシートを採用した2011年型で、その印象はさらに強まることになった。そして2017年になると、ヤマハは初の全面刷新を行うのだが、その内容はなかなか画期的だったのである。レースのイメージを高めるアグレッシブな印象のフェアリングや倒立フォークの採用は、近年の流行を考えれば、想定内と言えなくないのだが、なんと3代目R15は150ccクラス初の機構として、可変バルブタイミング機構のVVAとアシスト&スリッパークラッチを導入していたのだ。

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現在のR15の直接的なライバルは、スズキが2017年から発売を開始したGSX-R150と、ホンダが2019年型で大幅刷新を敢行したCBR150Rである。その2台と比較すると、R15は最もパワフルだが、車体は長く、車重は重く、シートは高めだ。具体的な数字を記すと、R15の最高出力:19.3ps/軸間距離:1325mm/重量:137kg/シート高:815mmに対して、GSX-Rは18.9ps/1300mm/131kg/785mm、CBRは17.1ps/1311mm/135kg/787mm。また、GSX-RとCBRのリアタイヤが130/70-17であるのに対して、R15は140/70-17を選択している。この事実から察するに、R15は1クラス上の乗り味を目指しているようだが、実際のキャラクターはどうかと言うと……?

ヤマハ YZF-R15 試乗インプレッション

250ccとは別世界の軽快感が味わえるものの
ライトウェイトシングルではない……?

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YZF-R15に対する印象は、どんなバイクが念頭にあるかで変わって来ると思う。幸いなことに僕の場合は、少し前に国産250ccフルカウルスポーツ全車と、スズキGSX-R125を試乗しているので、以下にそれぞれの視点での印象を記そう。

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まずは国産250ccフルカウルスポーツを比較対象とするなら、R15のハンドリングは圧倒的に軽快だ。車重が30kg近く軽いのだから、それは当然のことだが、R15は右へ左へといった進路変更が軽やかに行えるだけではなく、コーナーへの進入で感じる手応えもシャープ&クイック。もちろん、押し引きも格段に軽い。ただし、小排気量車ならではのキビキビ感を前面に打ち出したGSX-R125を基準にすると、R15の動きはしっとり穏やかで、1クラス上という印象。

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ちなみにこの印象は、排気量の差が原因ではなく、メーカーの姿勢の違いのようで、スペックを見ているぶんには、R15とR125、GSX-R150とR125は、いずれも同様の資質を備えていそう。残念ながら他メーカーは何とも言えないけれど、現在のヤマハは安定指向、スズキは軽快感重視というスタンスで、125/150ccスポーツを作っているのだ。

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さて、話の順序が逆になった気がするが、今回の試乗でR15と初対面した僕は、予想外の車格の大きさと質感の高さに驚くこととなった。パッと見での車格感、車体のボリュームはYZF-R25/3と大差なく思えるし、外装を筆頭とする各部の仕上げには、一昔前の小排気量車のようなコストダウンの気配が見当たらない。そしてシートに跨ってみると、ライディングポジションはなかなか戦闘的で、YZF-R25/3よりYZF-R1/6に近い感触。そのあたりを把握した僕の頭には、“本格派”という言葉が浮かんだ。

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市街地/高速道路/峠道を走ってみても、その印象は変わらなかった。エンジンは基本的に高回転指向のはずなのに、可変バルブタイミング機構のVVAを採用したおかげで、低回転域でもまったく非力さを感じないし、車体はどんな領域でも安定していて、急激な姿勢変化には前後ショックが程よいダンパーを発揮してくれるから、乗り手は自信を持ってブレーキングやスロットル操作、体重移動が行える。実は試乗前の僕は、倒立フォークとリアの140タイヤに対して、このクラスにはオーバースペックではないか? と感じていたのだが、実際のR15はその2つをきっちりモノにしていたのだ。なお高速道路の100km/h巡航は余裕しゃくしゃくで、条件的に許されるなら、最高速は150km/hに到達しそうだった。

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もっともR15に対して、’80~90年代に流行したライトウェイトシングルの再現を期待している人は、肩透かしを食らうかもしれない。何と言ってもこのバイクは、かつてのSRX250やCB250RSなどのように、エンジンの高回転域をキープしなくてもいいし、ハンドリングは驚くほどヒラヒラではないのだから。とはいえ僕自身は、排気量の少なさにマイナス要素を感じることなく、どんな状況もソツなくこなせるR15に、かなりの好感を抱いたし、新車価格が30~40万円代という事実を考えれば、YZF-R25/3ではなく、あえてR15という選択肢も大いにアリだと思う。

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ヤマハ YZF-R15 詳細写真

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アッパーカウルの中央には、MotoGPレーサーYZR-M1を彷彿とさせるエアインテークダクトを設置。ただしこのダクトは、エアボックスにはつながっていない。バックミラーの視認性はなかなか良好で、折りたたんだ際のカチッと感も好印象。

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フェアリングは近年のスーパースポーツで流行しているレイヤードデザイン。YZF-R25/3のフレームが鋼管を組み合わせたダイヤモンドタイプであるのに対して、YZF-R15とR125はツインスパータイプを選択している。素材はスチール。

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2016年型以前はアップライトなセパハンを採用していたR15だが、2017年型以降は前輪荷重とレーサームードを高めるため、ハンドルグリップ位置を大幅に下げている。トップブリッジに肉抜きが施されるようになったのも2017年型から。

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メーターはフル液晶で、回転計はバーグラフ式。左上に備わるギアポジションインジケーターの表示はかなり大きめ。現行YZF-R125も同様のメーターを採用したが、表示は黒バックのネガティブタイプで、R15には存在しない時計を装備。

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近年のヤマハは金属製インナータンク+樹脂製カバーという構造に積極的な姿勢を示している。YZF-R1/6のカバーが前方のみ、YZF-R25/3のカバーが前後分割式だったのに対して、R15はMT-07を思わせる、縦割りの3分割式カバーを採用。

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メイン部の座面高が815mmのシートは、親しみやすさよりも運動性を重視している印象。コンパクトなテールカウルの左右に備わる走行風通過用の穴は、兄貴分に当たるYZF-R1/6から継承した技術で、空力性能の向上に貢献すると言う。

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ヘッドライトとテールランプはLED。リアフェンダー+リアウインカー+ナンバープレートが簡単に取り外せることと、シートレールの下面のフラッシュサーフェス化が図られていることは、現行YZFシリーズ全モデルに共通する要素。

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ステップ関連パーツはアルミ製。ヒールプレートのホールド感はなかなか良好だったけれど、マフラーステーを兼ねる右側の出っ張りは、少々気にならないでもなかった。428サイズのドライブチェーンはDIDで、スプロケットはRKの刻印入り。

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水冷SOHC4バルブ単気筒のボア×ストロークは、ほぼスクエアの58×58.7mm。ライバル勢の数値は、CBR:57.3×57.8mm、GSX-R:62×48.8mmである。なお可変バルブタイミング機構のVVAは、近年ではNMAXやトリシティも導入している。

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フロントフォークはφ41mm倒立式。125ccでは他に採用車があるものの、150ccフルカウルスポーツでは唯一の装備だ。フロントキャリパー片押し式2ピストン。ちなみに欧州仕様のYZF-R125はラジアルマウント式4ピストンを採用している。

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左右非対称スイングアームはアルミ製。CBR250RRを除く現代の250ccフルカウルスポーツが、コストを重視してスチール製を採用していることを考えれば、かなり豪華な装備である。5本のY字型スポークを放射状に配置したホイールは専用設計。

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ブレーキディスクのサイズはF:φ292mm/R:φ220mm。マフラーはシンプルな筒型だが、質感が異なる3種のカバーを装着することで、高級感を演出している。ホイールのリムラインステッカーは、ボディカラーに合わせて3種を設定。

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リアサスはボトムリンク式モノショック。リンクプレートは何となく愛嬌を感じるバナナ型。調整機構はプリロードのみ。

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