【スズキ Vストローム1050XT 試乗記事】ストイックなライダーのためのストイックでない良きツール

掲載日:2020年02月13日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力・写真/スズキ 取材・文/ノア セレン 衣装協力/アライヘルメット アルパインスターズ

【スズキ Vストローム1050XT 試乗記事】ストイックなライダーのためのストイックでない良きツールの画像

SUZUKI V-Strom 1050XT

Vストロームシリーズの最大排気量版が新たに「1050」と名称を変えて登場。かつてのDRイメージも色濃く、電子制御も充実し、しかしその実、よりVストロームらしくなっている。

ユーロ5対策しながらもパワーアップ
電子制御満載&2グレード展開が注目点

2002年に、世界中で過激さが評判だったTL1000SのビッグVツインユニットをベースに初代のVストローム1000がデビュー。アドベンチャーというカテゴリーが一般的になる前にいち早く優秀なツアラーを提唱しており、Vストロームブランドは誕生時から世界に好印象を与えたと言える。

後に650もラインナップに加わり、それぞれが進化。1000は13年にスズキ伝統のクチバシデザインを採用し、モーショントラックABSなどの最新技術も投入してモデルチェンジ、18年にも外装を中心としたアップデートを果たした。今回は外装に伝統のDRイメージを取り入れつつ一新、かつ最新の電子制御も投入して1050として登場。上級のXTと、スズキらしくシンプルで質実剛健なSTDモデルの2グレード展開である。

スズキ Vストローム1050XT 特徴

DRルックスが目を引く大きなチェンジ
排気量は変わらず1037cc

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何よりも目を引くのは、かつてのデザートレーサー、DRシリーズを強くイメージさせるルックスの変更だろう。四角いライトと、さらに強調されたスズキ伝統のクチバシデザイン、イエロー及びオレンジ×ホワイトの伝統カラーがかつてのスズキオフロードファンに刺さるはずだ。このデザインは任されたのは、実はかつてのDRシリーズをデザインしたデザイナー本人。若い女性デザイナーも加わったこのチームにより伝統と、一方でそういった伝統を知らない世代にとっても素直にカッコイイ、もしくはスズキらしいと思えるデザインが融合されている。

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内容のほうは電子制御の充実やパワーアップがトピック。年々厳しくなっていく環境規制のハズなのに、技術の進化はそれを飛び越えて進んでいくことに驚かされる。新型のVストロームは1050と名称を改めたが排気量は変わらす1037cc、それでいてパワーも向上させて厳しいユーロ5もしっかりクリアしている。

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それを可能にしたのは様々なことの積み重ねではあるものの、電子制御技術の積極的な導入により採用された電子スロットルボディによるところが大きい。より緻密な制御ができるようになったことでスロットルボディを4ミリも大径化することができ、ハイリフト化されたカムシャフトなどの採用とあわせて今回のパフォーマンスを達成している。

スズキ Vストローム1050XT 試乗インプレッション

新型も変わらず「Vストローム」らしさ全開
あくまでスムーズな旅の相棒

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走り出した瞬間は「あれ、ファイナルがロングになった(歯車の関係でより高いギア設定になったの)かな?」と感じたほど、とにかく極スムーズで、ある意味拍子抜けしたほど。と言うのも、このカテゴリーの同排気量帯にいる他社の類似モデルは最近妙にハジけていてやたらめったら速くなっており、いつの間にか体がそれに慣れてしまっていたのだろう。そんなつもりで、ある意味恐る恐るクラッチを繋いだら……Vストロームは素直で従順で「良いヤツ」だったのだ。

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振り返ればVストロームはいつでも「良いヤツ」だった。長距離を疲れずに走り続けるために必要なことを愚直に追求するような、職人的な魅力があったことを思い出す。新型もまたその通りで、絶対パフォーマンスは確保したうえで、街中でも細かなワインディングでも、はたまたUターンや不整地でさえも何一つ唐突なことは起きず、ひたすら思いのままにコントロールができる。しかもそれは電子制御のおかげとかではなく、あくまでバイクが本来持っている素性の部分で成し得ているのが素晴らしい。

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Vストロームに限って、他社に影響されて路線変更をすることは考えられない。新型1050になっても、コンセプトにある通り「Simply More V-Strom」、Vストローム道をより極める進化だったのだ。

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エンジン以上に感動した進化はハンドリングだ。前モデルのハンドリングはロードでのダイレクト感を追求したような所があり、状況が良ければスポーツモデルのような無二の一体感があった一方で、砂が浮いていたり舗装が荒れていたりするような路面では硬さを感じる場面もあり、あらゆる状況に対応するファジーさという意味では650の方に分があったかもしれない。

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しかし新型1050ではネック周りの剛性感はそのままに、サスペンションの設定、及びブリヂストンの新型タイヤのおかげで全体的にしなやかさが加わったのだ。そのフィーリングは好みではあろうが、個人的には新型の方がカバーできる場面が増え、よりVストロームらしい性格に思えた。結果として不整地走行も苦としないフレキシビリティを手に入れたのだ。

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もう一つ好印象だったのは、車体が一回り小さくなったような感覚があること。寸法は前モデルと大差ないのだが、外装デザインのおかげか手の内感が強まり、感覚としては650と変わらないぐらいのフィット感を得られるように思う。これはより自信をもって扱うことができるということであり、さらに幅広いライダー層が、さらに幅広い場面にてこのバイクを楽しめるということだから立派な進化と言えるだろう。

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独自の路線をしっかりと守り、ブレずにその道を極め進むVストローム。新型はさらに多くのライダーを遠くへ案内してくれるはずだ。

スズキ Vストローム1050XT 詳細写真

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大きくイメージを変えたのがスクエアになったLEDヘッドライトと、伝統のクチバシデザイン。かつてのDRシリーズがこのデザインの元祖!とアピールするスズキだが、今回はDRのデザイナー本人が、アップデートさせながら再び手掛けた。

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スクリーンは上下50mm、11段階に調整可能で、XTバージョンは工具なしのワンタッチ。スタンダードモデルは工具が必要となり、調整幅は3段階だ。

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シートは2段階に調整が可能である他、アクセサリーでローシートも用意される。一日走った結果、シートはわりと硬めなイメージがあったが、初期馴染みが済めばフィット感が高まるそう。

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ユーロ5規制に対応しながらもパフォーマンスアップを果たすことができた大きな要因がこの電子制御スロットルボディ。緻密なコントロールが可能になったことで大径化することができ、107馬力を達成している。電子制御スロットルの反応も違和感なく作り込まれている。

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エンジン本体は排気量含めて大きな変更はない。トピックとしてはカムシャフトが、リフト量を高めてオーバーラップ量を減らす方向へと改められたことだろう。この他、水冷式のオイルクーラーやラジエター容量のアップなど細部はアップデートされている。

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車体の姿勢を常に把握できるIMUのおかげで、アップデートされたモーショントラックABSやトラクションコントロールをはじめ、新採用されたロードディペンデントコントロールやヒルホールドコントロールといった電子制御領域が充実している。

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操作系がシンプルなのもこのモデルの魅力。機能が充実するほどに難解となることも少なくないが、1050では前モデルと同様の大きなスイッチを左ハンドルに配置、シンプルな入力でトラクションコントロールやABS、ドライブモードの設定など直感的にできる。右はライドバイワイヤになったことでワイヤーがなくシンプル化。新採用のクルーズコントロールボタンが備わる。

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煌びやかさよりも機能を求めたといった印象のメーター。おかげでとても見やすく、操作しやすく、かつ道具感があってカッコも良い。何より操作に難しさがなく、説明書を読まなくても誰でも扱えるだろう。

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新採用されたロードディペンデントコントロールは、ライダーの体重や荷物の積載、もしくはタンデムか否かなどの負荷を検知し、適切なブレーキ補助を行ってくれるというもの。学習能力があり、走り出して10回ほどブレーキを操作すると入力圧と減速度の関係から負荷を検知、ブレーキをサポートしてくれる。

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登り坂で止まった際には、車体姿勢の検知から自動的にブレーキをかけてくれ、停止時にライダーはブレーキを離しても下がっていかない。ヒルホールドコントロールと呼ばれるこのシステムは約30秒間作動し、任意に解除も可能だしそもそも作動しないよう設定も可能。

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スロープディペンデントコントロールは、下り坂で強くブレーキをかけた際に、リアが持ち上がってくるのを抑制するためにリアブレーキを自動で補助してくれるシステム。なかなかそれほど強くブレーキングする機会はなさそうだが、これも車体姿勢を把握した制御があるからこそ可能となった機能。

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XTバージョンはスポークホイールを採用するだけでなく、様々な装備が純正装着となっている上級仕様。センタースタンドや車体側部につくアクセサリーバー、ナックルカバーや専用のスポーティなミラーといったハードの部分が充実しているほか、今回初採用となった電子制御技術の多くもXTに装備されている。STDバージョンは簡素だがその分軽く、ルックスもスマートというのが魅力。

試乗ライダー プロフィール
ノア セレン
14年モデルのVストローム650を所有して早5万キロ超、スズキ本社で毎年行われるVストロームミーティングにおいてはMCとして皆勤賞、Vストロームの素晴らしさを伝える伝道師でありながら、知り尽くしているからこそ厳しさももつVストロームスペシャリスト(自称)。「使える」バイクが大好き。

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