

掲載日:2013年07月25日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/田宮 徹 写真/宮崎 雄司、バイクブロス・マガジンズ編集部
兄弟モデルの CB400F や 400X がバーハンドルを採用するのに対し、この CBR400R はセパレートハンドルをチョイス。随所にスーパースポーツのエッセンスが散りばめられているが、ライディングポジションはそれほど前傾がキツいということもなく、ツーリングでの長時間走行にも適した設定だ。
シート高は 785mm で、シート最前部にまたがると、身長 167cm で体重 63kg の筆者で、両足の裏が3分の2ほど接地する。このクラスのフルカウルスポーツモデルとして考えれば、足着き性は良好と評価できるだろう。しかも、旧世代的なリア下がり感はなく、現代的なライディングポジションのイメージを持たせたまま、うまくシート高を落としてある印象だ。
走り出してしばらくすると、感じるのは 5,000 回転付近におけるエンジン特性の良さ。簡単に表現するなら粘り強さ、しかし一般的なそれとはやや異なる独特のフィーリングがある。高回転までこき使わなくても楽しいと思える、鼓動感のようなものがあるのだ。
一方で、エンジンが本領を発揮するのは 6,500 回転付近から。パワーバンドは広く、ここからレッドゾーンの1万回転まで、フラットな特性で加速が続く。厳しい環境規制に対応したエンジンは、最高出力 46 馬力と、90年代モデルを知るライダーにはやや物足りない印象があるかもしれない。しかし、前述した独特な回転フィールと、少なめなパワーだからこそ逆に “しっかり使い切れる” という楽しさから、実際のライディングでパワーに不満を抱くシーンは極めて少ない。
ギア比は比較的ショートで、1速で約 65km/h まで、2速で約100km/h までといった設定。積極的なギアチェンジで、きびきびとスポーツライディングするのも楽しい。
粘り強い中回転域を多用したクルージングが心地良く、またいざとなればアグレッシブに走ることも楽しめる懐の広さ。その扱いやすさから、エントリーライダーがスポーツライディングを学ぶ車両としても適しているが、それだけでなく、ベテランライダーが操る楽しさを再確認するのにも最適なエンジン特性と言えるだろう。
このエンジンと呼応するかのように、車体のフィーリングも非常に好印象だ。まず何より、ハンドリングが非常にニュートラル。倒しこみからフルバンクまで、とにかくクセがない。車体は軽く、スポーツライディング時の疲労は少なめ。フロント 2.5、リア 2.9 という高めに設定されたタイヤ空気圧の影響もあってか、コーナー進入ではややリアタイヤが外に流れやすい傾向だったが、総合的にはかなりのベストバランスにまとめられている印象だった。ちなみ、にタイヤはダンロップ製またはメッツラー製の高性能ラジアルタイプを履くこだわりを見せている。
また、リアだけでなくフロントもシングルディスク式と、見た目では頼りないイメージもあるブレーキは、実際には非常に優れた制動力と、同時に高いコントロール性を秘めている。さらに、その信頼度にかねてから定評がある ABS 仕様なら、よりイージーかつ安心感を持って急制動を行うことができる。約5万円という価格差を考えれば、サーキット走行などを行う予定がないなら ABS 仕様を選択することをお薦めしたい。
発表前には 60 万円を下回る価格が予想されたが、実際には 70 万円に近い設定となった。これは、この機種がタイを中心とした海外から部品の大半を仕入れ、熊本製作所で組み立てていることも関係しているようだ。アベノミクスによる急激な円安により、部品調達コストが上昇。そのぶんを、車両価格の見直しにより吸収するしかなかったことが、容易に想像できる。
しかしこれは「安かろう」を最優先にしなかったということであり、性能をないがしろにしたモデルではないという証明でもあるかもしれない。実際、目を引くような高性能なパーツこそ装備されていないが、フィーリングやバランスという面で、CBR400R は価格に見合うだけの性能を十分に持つモデルに思えた。日本だけが持つ 400cc クラスが、新時代へと突入した匂いがした。
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