

掲載日:2011年11月24日 試乗インプレ・レビュー
Vストロームは、日本では滅多にお目にかかることがないマシンだ。というのも、エンデューロツアラーというジャンル自体が、日本ではメジャーではないからだ。欧州の道は市街地でも石畳や路地に入るとちょっとした段差があったり、ワインディングともなるとアスファルト路面は粗く、未舗装路などはざらにある。ガードレールのない崖っぷちを走る急勾配のコーナーなどもあり、本当の意味での “山岳路” がいくらでもあるのだ。つまり、Vストロームのようなモデルが必要な交通環境ということ。だから、足長系のツアラーやデュアルパーパスなどは人気があるし、実際にたくさん走っている。
以前はVストロームに 1000cc のバージョンが存在していた。ちょっとだけ試乗したことがあるが、車体はかなり大柄で重く感じ、エンジンはパワフルでフレーム剛性も高く、ちょっと手強い印象を持った記憶がある。本格的にワインディングを走り込んだわけではないのでなんとも言えないが、1000 に比べると 650 はだいぶ軽快でエンジンもマイルド。扱いやすい感じだ。
SV650 と同系の水冷Vツインは以前から素直な扱いやすさには定評がある。SV もそうだったが、1000 よりむしろ 650 のほうがいい味を出している。振動が少なく、それでいてVツイン独特の程良い鼓動感もあり、そして回せる。1000cc より 2,000rpm ぐらい高い回転域を使えるので、タイトなワインディングでもけっこう低いギアで引っ張る走りもできてしまうのだ。
車体もスポーツモデル並みのアルミツインスパーフレームなので、ハンドリングは意外とカッチリしている。この手のモデルとしてはちょっと剛性が高すぎる感じもしないではないが、Vツインのスリムなエンジンレイアウトの効果もあり、コーナーへの倒し込みなどはとても軽い。ガタイが大きく見た目は重そうだが、実際には思った以上にヒラヒラ感があるので、慣れてくると思わず調子に乗ってバンクさせすぎてしまうほど。ただし、19インチホイールとデュアルパーパス用タイヤであることは事実なので、節度を持って走りたいところだ。
一方、高速道路では長いホイールベースと高剛性の車体が生み出す直進安定性が見事で、ゆったり座れるアップライトなライディングポジションとフカフカのシート、見た目以上にウインドプロテクション効果の高いスクリーンなどの恩恵により、ロングライドも快適にこなせる。長い前後の足が路面からの衝撃を和らげてくれることもあり、これなら荷物を満載して遠出する気にもなるだろう。余裕の22リットルタンクも頼もしいし、300km ぐらいは一気に距離を稼げそうだ。
ブレーキは初期の食いつきが少々あっさりした感じだが、握り込んでいくとしっかり効いてくるタイプ。さらにパニック時や滑りやすい路面では ABS が作動して安全に減速してくれる。ABS の作動自体も穏やかで、ライダーフレンドリーな設定だ。フラットダートにも踏み込んでみたが、19インチホイールと長い前後サスペンションのメリットを実感。少々の 凸凹 がある砂利道程度なら、スタンディングなどしなくても普通にどんどん走れてしまう。
目を引くデザインでもないし斬新な電子制御システムも使っていないが、息の長いモデルということで信頼できるし、実用性にも長けている。100万円を切る価格(車両本体)も魅力だ。長距離をマイペースで快適に旅したい人にはおすすめの1台と言えるだろう。
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