【ホンダ NC750X 試乗記事】充実の装備がうれしい!熟成を重ねた“お手軽ナナハン・アドベンチャー”

掲載日:2019年09月06日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

【ホンダ NC750X 試乗記事】充実の装備がうれしい! 熟成を重ねた“お手軽ナナハン・アドベンチャー”の画像

HONDA NC750X

NC750Xの前身となるNC700Xが発売されたのは2012年。アドベンチャーライクな外観と、DCTという自動変速メカニズムを採用したことに加え、コストパフォーマンスの高さもあって、空前の大ヒットとなった。その排気量をアップする形でNC750Xが登場したのが2014年。扱いやすい車格で手軽に乗れるアドベンチャーモデルとして人気が続き、2016年にはヘッドライトのLED化やDCT制御の変更など、高級感と使い勝手がアップ。今回取り上げる2019モデルでは、後輪スリップ時に駆動力を抑制する“Hondaセレクタブルトルクコントロール(HSTC)”やグリップヒーターを全タイプに標準で装備した。熟成を重ね、さらに魅力を増したこのマシンの実力を探ってみよう。

HONDA NC750X 特徴

洗練されたデザインの中に
快適&便利な装備を満載

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アドベンチャーモデルと呼ばれるマシンには、オフロードでの走破性を重視したものからツーリング性能を高めたものまで様々な傾向があるが、このNC750Xはオンロード寄りのモデルだ。ホンダではクロスオーバーモデルと呼んでいるが、高速道路から市街地、山岳ワインディングからちょっとしたダートまで、どこまでも走って行く気にさせてくれる。その意味では十分にアドベンチャーモデルとしての資質を備えているといえるだろう。

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NC750Xを目の前にすると、ある種の安心感を覚える。一部の尖ったアドベンチャーモデルにありがちな奇抜なデザインやボリューム感たっぷりの車体などとは違って、洗練されたシャープなイメージで、「これなら気楽に乗りこなせそう」という気分にさせてくれるのだ。実際に跨っても、アップライトなポジションと低いシートのため、非常にリラックスして乗れる、という印象だ。

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何度も熟成を重ねてきた現行モデルは、装備の充実ぶりも素晴らしい。ヘッドライトやテールランプにLEDを採用しているのをはじめ、多彩な情報を表示できるフル液晶のコンビネーションメーターやグリップヒーター、ETC2.0、ABSに加えていわゆるトラクションコントロールにあたるHondaセレクタブルトルクコントロール(HSTC)などを標準で装備。

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また、これは以前から採用されているが、通常はタンクにあたる部分がフルフェイスヘルメットも収納できる容量のトランクになっている。これが使うとかなり便利で、雨具はもちろんペットボトルやデジカメ(防振対策は必要だが)など、パッと取り出せる位置に収納できるし、ちょっとした買い物の際にも荷物をポンと放り込めるので、非常に重宝するのだ。その上で外観にもうまく高級感を持たせているため、使い勝手の良さと所有欲を満たす上質感をうまくバランスさせた作りになっている。このあたり、ホンダはまとめ方が本当にうまい。

HONDA NC750X 試乗インプレッション

熟成の域に入ったDCTで
疲れ知らずのイージーライドが可能に

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跨がると、これが大型バイクか、というほどシート高が低く、安心感がある。車両重量はDCTモデルで231kgとそこそこあるが、信号待ちなどでも緊張感は少ない。

今回の試乗車はDCTモデル、クラッチレバーのない有段自動変速だ。スクーターなどに採用されているCVTは無段変速で連続して加速するのに対し、DCTはスピードに応じてマシンが適切なギアにシフトアップやダウンを自動的に行ってくれるという優れものだ。

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一般的な走りのDモードと、スポーティな走りのSモードがスイッチ1つで切り替えられるほか、上り坂でパワーがほしい、下り坂でエンジンブレーキをかけたいなどの際には、左手の+-ボタンで簡単にギアのアップダウンができる。また、最初からマニュアルでシフトを行うMモードも備えており、こちらの切り替えもスイッチ1つで可能だ。

ニュートラルからDモードのボタンを押すとごく軽いシフト感とともに1速に入るが、クルマのATにあるようなジリジリと前に出るクリープ現象は起きない。アクセルを開けると、加速感はとてもダイレクトなもので、弾けるように車体が押し出される。最高出力は40kw(54PS)と控えめだが、低中速に振った出力特性のため、街中での走行フィーリングはキビキビとして小気味がいい。バイクまかせにしていてもシフトのタイミングは絶妙で、まるでライダーの意図を読んでいるかのような絶妙なタイミングでアップダウンを行ってくれるのが面白い。

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最初のうちは左手や左足(当然シフトペダルもないが、オプションになるが足でシフト操作ができるペダルが用意されている)が空を切っていたが、すぐに慣れた。都市部の渋滞路でクラッチレバーを握る必要がなかったり、信号待ちでいちいちニュートラルに入れる動作などが不要なことの恩恵は大きく、疲れ知らずでとても楽ができるシステムだと実感できた。さらに付け加えれば、タンクがシート下に配され、エンジンもシリンダーの前傾角度が62度に設定されるなど、徹底して低重心化が図られているため、低速でフラつかず、非常に安定感が高いのが印象的だ。

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郊外のちょっとしたワインディングを走ってみたところ、車体が路面にスッと追従し、乗り心地がとてもいい。これはフロントにデュアルベンディングバルブフォークを採用し、ピストンスピードに比例させた減衰力を得ているからだろう。リアサスペンションも7段階のプリロード調整機構を備えており、タンデム時やキャンプなど大きな荷物を積んだ際にも、状況に応じてセッティングを変えることが可能だ。ギアはMTモードだと変速がけっこう煩雑なので、Sモードにしてマシンまかせにしつつ、必要に応じてシフトスイッチでギアのアップダウンを選べば、峠道でもキビキビとしたスポーツライクな走行を楽しめる。

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今回は雨天やダートなどの環境がなく試せなかったが、現行モデルでは2段階調節&機能オフが選べるトルクコントロールが標準装備となり、スリップしがちな路面における安心感が格段に向上している。ABSとあわせてライダーの負担をぐっと減らしてくれるため、よりイージーライドが可能になったのだ。それほど派手さはないが、豪華な装備と遠くまで疲れずに楽しく、何より気軽に乗れるナナハン……NC750Xはありそうで実は他になかなかない、貴重なマシンといえるだろう。

HONDA NC750X 詳細写真

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ヘッドライトはLED。写真はロービームで、サイドを縁取るように導光タイプのポジションランプも光る。また、ホンダ伝統のウインカーポジションも装備。

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フルデジタルのメーターは多機能タイプ。トルクコントロールやETCなどの各種インジケーターや燃料計、時計などのほか、瞬間燃費や平均燃費、リザーブ時のトリップメーターや燃料消費量なども表示可能だ。

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右ハンドルには、DCTのモードスイッチを装えている。一般的なシフトタイミングのDモードと回転数を引っ張るスポーティなSモードは、押すたびに切り替わる。前面にはマニュアルとオートの切り替えスイッチも装備。

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機能の多さを物語る左ハンドル部。緑に光っているのはグリップヒーターの調節&オンオフスイッチ、上部にあるのはトルクコントロールの調節&オンオフスイッチだ。下部の「-」は任意にシフトダウンできるボタンで、反対側にはシフトアップ用の「+」ボタンを備える。

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通常燃料タンクのある部分はラゲッジスペースとなっている。カバーにはユーティリティレールが設けられ、タンクバッグ等の取り付けに配慮されている。ラゲッジ部の開閉と給油口のあるリアシートの開閉は、カバー前方にあるシリンダーにキーを差し込んで行う。

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ラゲッジスペースの容量は約22L。大抵のフルフェイスが収納できる大きさである。写真のSHOEI J-CruiseⅡがギリギリ入るスペースだ。

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ラゲッジスペースには携帯工具が収納されている。基本工具のほか、リアサス調整用のフックやヒューズクリップ、ヘルメットを掛けるためのワイヤーなど、なかなかの充実ぶりだ。

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前後で分割されたシート。前席は角がえぐられ、足つき性に配慮している。表面は滑りにくい生地で、座り心地は硬めだ。

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リアシートを開けると給油口が現れる。荷物を積んでいると開けづらいため、キャンプツーリングなどでは多少不便かもしれない。燃料タンク容量は14Lだが、燃費が30km/L前後と非常にいいため、航続距離に不安はないはずだ。

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テールランプにもLEDを採用。写真ではわかりづらいが、実際にはもっと赤い光で目立つ。リア周りのデザインはスッキリとしたシンプルなもの。

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エンジンは水冷4ストロークOHC4バルブ直列2気筒、745cc。最高出力は40kw(54ps)/6,250rpm、最大トルクは68N・m(6.9kgf・m)/4,750rpmだ。シリンダーの傾斜角度は62度、かなり前傾しているのがわかる。

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DCTモデルにはシフトペダルがないが、オプションでシフト操作が可能なペダルが用意されている。なお、センタースタンドもオプションとなっている。

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リアサスは7段階のプリロード調整が可能で、積載状況に応じたセッティングができる。リアのアクスルトラベルは120mmを確保している。

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デュアルベンディングバルブを採用したフロントフォークのクッションストロークは120mm。フロントのタイヤサイズは120/70ZR17M/C(58W)。銘柄はブリヂストンのBATTLE WING BW-501だ。ブレーキのディスク径は320mmで、ウェーブタイプを採用。

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リアのタイヤサイズは160/60ZR17M/C(69W)と若干細め。銘柄はブリヂストンのBATTLE WING BW-502だ。リアブレーキののディスク径は240mm、こちらもウェーブタイプとなっている。

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テスターは身長170cmで足短め、体重73kg。片足だとかなりしっかりと足を着くことができる。両足でも指の付け根まできちんと足が着くため、ぐらついたりする心配はなかった。

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