ヤマハ VMAX
ヤマハ VMAX

ヤマハ VMAX – およそ四半世紀ぶりのフルモデルチェンジ

掲載日:2009年07月16日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

ヤマハ VMAXの特徴

「機能性」と「芸術性」が同居
VMAXは機械の姿をした工芸品だ

VMAXは実に見どころの多いバイクだ。2005年の東京モーターショーでモックアップが発表されたとき、「あのまま」の姿で発売されると誰が思っただろうか。細部について語ればこのスペースではとても足りないが、全体デザインのクライマックスは、力強い吸気から排気までの流れを表現したダイナミックな造形だろう。これをもっともストレートに反映しているのが、4つの吸気口をもつエアインテークからエアファンネル、V4エンジン、そして4つの排気口をもつエキゾーストまで、パワーの源となるすべての要素を4-4-4-4としていることだ。エアインテークとマフラーが逆方向に配置された相似形である点にも注目したい。また、各部の造形だけではなく素材自体にもヤマハの思いが込められている。例えば、VMAXのアイコンであるエアインテークは特殊なアルミ素材で出来ており、職人がひとつひとつ手作業でバフ掛けを施したものだという。これらが一体となって、誰が見てもVMAXと認識できる美しいラインが形成されているのである。
さて、ゴロゴロとクランクが回転するどこか懐かしい感触の持ち主であるエンジンだが、その中身はヤマハが現在持ちうる最高のスペックで固められている。先代モデルのVブーストに代わるメカニズムとして、電子デバイス、YCC-T(ヤマハ電子制御スロットル)やYCC-I(ヤマハ電子制御インテーク)、排気デバイスEXUPなどを投入。これにより全域に渡って力強いトルクを実現したのはもちろんのこと、ドラマチックに盛り上がる加速フィーリングも得ている。また、エンジンの基本構成は水冷4バルブDOHC・V型4気筒で排気量は1,679cc。アルミ鍛造ピストンや破断分割式浸炭コンロッドなど、スーパースポーツ同様のパーツで構成されていながら、それとはまったく違うフィーリングを持つパワーユニットとなっている点が興味深い。そのほか、スリッパークラッチ、リニア制御ABS(3ポジションABS)など、巨体を操るための補助的デバイスも極めて充実している。

ヤマハ VMAXの画像

VMAXの上質な乗り心地と、従順かつスポーティなハンドリングをもたらしている車体構成にも注目したい。VMAXに乗っていると、主役たるエンジンのみが疾走しているかのような感覚にとらわれがちだが、芸術的なカーブを描く新設計のオールアルミ製ダイヤモンド型フレームはエンジンを3点でリジットマウントしている。エンジンを強度メンバーとして利用するこの構成が、ライダーにエンジンの息づかいを伝えるとともに剛性感に満ち溢れたフィーリングを生み出しているのだ。また、視覚的に控えめなフレームに対して、大きく見えるエンジンだが、実は小型化したうえで搭載位置を前輪寄りに設定。前輪への適切な荷重配分とトラクション特性の最適化を実現している。ゴロゴロとしたエンジンの感触や、アクセルを開けた時の路面を捉える感覚。これらは全て「機能性」と「芸術性」に裏打ちされた確信的設計によるものだったのだ。

231万円。各部の作り込みや投入された技術からすれば、はっきり言ってバーゲンプライスだ。しかし、このモデルに関しては、誰にでもお勧めするのは止めておこう。こうして試乗を終えた今、金銭的な価値とは別の「存在価値」を理解するライダーに向けてデリバリーされた「工芸品」に近い存在だと素直に感じたからだ。

ヤマハ VMAXの詳細写真は次ページにて

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