【Page2】最新型ダエグに然るべき進化形を見る

掲載日:2010年05月28日 特集記事ロードライダーインプレッション    

記事提供/2009年5月1日発行 月刊ロードライダー 5月号
Photo/徳永茂、鶴身健、中岡隆造、吉見雅幸、伊藤 均、富樫秀明

ともかく、この1200Rに乗ると、改めて12年前にZRX1100が登場したときの衝撃を思い出す。オーバーリッターのネイキッドと言えば、ゆったりとした安定感が身上であろうが、このZRXはあくまでも熱く遊べる相棒だったのだ。

最新型ダエグに然るべき進化形を見る

1200Rに好印象を抱いた後で、新しいダエグに乗るとどうだろう。結果を先に言ってしまえば、モーターサイクルとしてのしかるべき進化形が、そこにあったのである。

特に感心させられたのは、ハンドリングである。最初は、軽快で安定感があり、単に優等生になっているだけかと思ったものである。ところが、コーナーに進入して積極的に曲げていこうとしたらどうだろう。ややもすると、マシン任せに曲がり始めたRとは違い、ステアリングをターンインさせることができる。乗り手への依存度も高く、マシンを方向転換させる面白さもある。

そうなると、1200Rと乗り比べたおかげで、ダエグがキャスター角を0・5度立て、フロントフォークオフセットを1200Rから2mm大きい30mmとした狙いも見えてくるというものだ。しかも、リヤサスペンションの能力が高い。フロントが生み出した旋回Gをしっかりリヤに荷重していくことができる。そして、その状態で安定していて、トラクションをかけていくことができ、“リヤで曲がる”状態を作り出しやすいのだ。1200Rではこうはいかない。リヤショックのレイダウン化も含めたチューニングで、よくまあここまで高水準化できたものである。

ハンドリングは、まさに今日的なスーパースポーツが目指すものと方向が同じである。スーパースポーツであるかのようなスポーツライディングを、ネイキッドスタイルで楽しむことができるのだ。ハンドル位置がRよりやや高くライダー側に寄せられていることも、快適なだけでなく、このようなスポーツハンドリングに生かされていると思う。自然体で荷重コントロールでき、リヤにも荷重しやすい。見た目に、ダエグのライディングは、1200Rのときよりはるかにスムーズであっても、決して速く見えるわけではないという。でも、コーナーの脱出速度は、体感も速度計の読みも明らかに高い。

やはり、エンジンマナーも秀逸である。先に言った見た目のスムーズさという部分には、狙い通りの荷重移動を許してくれるサスはもちろん、エンジンのつながりの良さも貢献しているはずである。キャリパーが6から4ポットになったフロントブレーキも意思に忠実に効いてくれる。おかげで、コーナーに向けてのブレーキングから、旋回、脱出までへと、高次元バランスがつながっていくのである。

ひょっとすると、力ワサキらしさを今、最も明確に主張しているモデルは、この“国内専用”のZRX‐1200ダエグかも知れない。人によって“力ワサキ”からイメージするものは違うだろうが、僕にとって力ワサキらしさとは、あの35年以上前に溯るZ1(1972年発表)がイメージリーダーになっていると思う。優等生的なホンダCBナナハン(750Four)に対し、“ザッパー”と呼ばれたハンドリングマシン、Zである。そのZ1の後継モデルとして登場したのが、25年前('84年)のGPZ900Rニンジャで、ダエグのエンジンのルーツは、そのニンジャなのだ。

 

そんな歴史の重みさえ感じさせるダエグは、Z1の血を引くハンドリングマシンなのである。

 

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