【Page5】KAWASAKI KZ1000SR1 1983

掲載日:2010年04月09日 特集記事カワサキ・ハチマル・空冷Z    

記事提供/2009年8月1日発行 絶版バイクス4


キャブレターはケーヒンCRスペシャル。ローソンががスーパーバイクレースに参戦していたマシンにはブルーマグナムが装着されていたこともあったが、市販レーサーのS1もこのCRだった。

キャブレターはケーヒンCRスペシャル。ローソンががスーパーバイクレースに参戦していたマシンにはブルーマグナムが装着されていたこともあったが、市販レーサーのS1もこのCRだった。

  市販モデルのJやRは電気式タコメーターを装備するが、S1のタコメーターはケーブル駆動によるメカニカルタイプ。S1カムにはZ1系のようにメーターケーブル用のギアが切られていて、ここに接続される。

市販モデルのJやRは電気式タコメーターを装備するが、S1のタコメーターはケーブル駆動によるメカニカルタイプ。S1カムにはZ1系のようにメーターケーブル用のギアが切られていて、ここに接続される。

  オイルクーラーはS1と形状が似たセトラブ製を装着。コアサイドのプレートにはS1と同じ8つの穴を空けてある。下出しのオイルホースをエンジン下からシリンダー後部に取り回すのもS1流。

オイルクーラーはS1と形状が似たセトラブ製を装着。コアサイドのプレートにはS1と同じ8つの穴を空けてある。下出しのオイルホースをエンジン下からシリンダー後部に取り回すのもS1流。

マフラーはS1デザインを正確に再現し、ステンレスで製作したワンオフパーツ。バッフルもS1のコピーで口径は極太。

マフラーはS1デザインを正確に再現し、ステンレスで製作したワンオフパーツ。バッフルもS1のコピーで口径は極太。

  シリンダーヘッドはS1用の本物で、専用設計品のツインプラグ(プラグサイズはC)仕様となっている。

シリンダーヘッドはS1用の本物で、専用設計品のツインプラグ(プラグサイズはC)仕様となっている。

  ベースエンジンはZ1000R2用で、シリンダーから下はR2用となっている。

ベースエンジンはZ1000R2用で、シリンダーから下はR2用となっている。


あの「S1」をモチーフにカスタム化されたSR1。
ベースモデルをさらにアップデートした超本格カスタム。

S1風にモディファイするカスタムブームが訪れたことで、下火になりかかったZ1000Rは一気に息を吹き返す。 1980年代後半、現在に続くローソンレプリカカスタムの頂点モデルとも言えるスペシャルマシンが発売された。

取材協力/グリーンワールド Phone 0249-41-1601  

 

 

Z1などの絶版ビッグバイクをベースにエンジンをボアアップしてキャブレターを付け替え、足まわりを強化する空冷4発ブームが始まったのは、バイクブームが頂点に向かいつつある1986年頃のこと。その頃、絶版車は単なる型落ちの中古車でしかなく、プレミアム付きで売買されることはまずなかった。

1982年に発売されたZ1000Rも、GPZ900RニンジャやGPZ1000RXが発売された80年代半ばになると、AMAスーパーバイクレースチャンピオンレプリカの威光も薄れ、増えすぎた逆輸入車の中にあって量販店では大幅値引き対象車となるほどだった。確かに当時、GSX-R1100やFZR1000を前にすれば、いかにローソンレプリカとて重くて古いバイクの1台と見られたとしても仕方のないことだ。

 

そんな風潮を一掃し、ローソンレプリカカスタムブームの火付け役となったのが、1988年頃に登場したJクラシック製KZ1000SR1である。ロセンゼルスにファクトリーを構えていたJクラシックは、1982年に少数だけ市販されたワークスレーサーのS1や、それに装着されたスペシャルパーツをストックし、市販のKZ1000RをベースとしたS1レプリカを製作し、一般ユーザーに販売を行ったのだ。

エディ・ローソンがZ1000JベースのライムグリーンのマシンでAMAチャンピオンとなり、それを記念してローソンレプリカが市販されたことを知るバイクファンは多いが、当時市販レーサーS1の存在を知る者はほとんどいなかったため(特に日本では)、いわゆるS1仕様にモディファイされたKZ1000SR1によって、バイク自体の評価も一夜にして大逆転したといっても過言ではない。もちろん、それ以降今に続くまで、ローソンベースのカスタムは多かれ少なかれS1に影響を受けたものが大半であり、その流れに先鞭を付けたSR1は超インパクトのある存在だった。

 

あるオーナーが購入し、メンテナンスのために福島県郡山市のカワサキ専門バイクショップ、グリーンワールドに持ち込まれた車体は、KZ1000R2をベースに製作されたJクラシック製SR1の1台だった。ツインプラグ仕様のシリンダーヘッドこそS1用パーツだったものの、それ以外には汎用カスタムパーツが多く使われていたため、こだわりのオーナーと同店では、よりS1度の高いモディファイに着手。

 

ベアリングホルダー付きインナーを持つブレーキローターやキャリパーは当時のワークスS1用パーツを見つけだし、ダイマグ製ホイールもワークスマシン用パーツを装着した。曲げ加工で作られたキャリパーサポートもマグネシウム製のS1用だ。同じくリアブレーキ&ホイールもS1用の本物パーツを奢っている。またS1のフロントフォークはZ1000Rより50mmほど長いので、R用より長いアメリカンモデル(CSR1000用)を流用して本物らしさを追求。

 

こうしたディティールへのこだわりの結果、S1により近づいたSR1。さまざまな現代的高性能パーツを組み合わせることでパフォーマンスを向上させたローソンレプリカカスタムは多いが、そのオリジンともいえるS1への憧憬を具現化したマシンには、言葉に出さずとも本物の持つ迫力が感じられる。

 

Z1000Rの純正位置に収まる3000回転から始まる機械式のタコメーターは、S1用の純正パーツ。インナーチューブ交換によってトップキャップが上側に移動している。

Z1000Rの純正位置に収まる3000回転から始まる機械式のタコメーターは、S1用の純正パーツ。インナーチューブ交換によってトップキャップが上側に移動している

  当時のスーパーバイクレギュレーションに則り、純正ベースのフロントフォークに組み付けられたブレーキはS1用純正パーツ。ダイマグホイールもS1用だ。

当時のスーパーバイクレギュレーションに則り、純正ベースのフロントフォークに組み付けられたブレーキはS1用純正パーツ。ダイマグホイールもS1用だ。

  プレートタイプのドライブスプロケットカバーは、後部がフレームのスイングアームピボットに共締めされたJクラシック製。S1はR純正と同様のカバーを装着していた。

プレートタイプのドライブスプロケットカバーは、後部がフレームのスイングアームピボットに共締めされたJクラシック製。S1はR純正と同様のカバーを装着していた。

エキセントリックチェーンアジャスターを持つアルミ製スイングアームはJクラシックによる、いわゆるS1タイプ。ピボット部後方とスタビライザーにより、ボックス状のオイルキャッチタンクを設けている。

エキセントリックチェーンアジャスターを持つアルミ製スイングアームはJクラシックによる、いわゆるS1タイプ。ピボット部後方とスタビライザーにより、ボックス状のオイルキャッチタンクを設けている。

  シート、テールカウル、リアフェンダーが一体で外れるS1に対して、SR1のシートは市販のRやJと同じく単体で着脱できる。シートロックも純正パーツが使える。

シート、テールカウル、リアフェンダーが一体で外れるS1に対して、SR1のシートは市販のRやJと同じく単体で着脱できる。シートロックも純正パーツが使える。

  市販のRやJのテールレンズは2重式だが、S1用は1枚仕様でクリア度が高い。

市販のRやJのテールレンズは2重式だが、S1用は1枚仕様でクリア度が高い。

ステッププレートはSR1に装着されていたパーツで、本物のS1とはデザインがちょっと違う。角張ったペダルゴムはS1と同じ。

ステッププレートはSR1に装着されていたパーツで、本物のS1とはデザインがちょっと違う。角張ったペダルゴムはS1と同じ。

  リアホイール、リアブレーキキャリパー&ローターはともにS1用の純正パーツ。

リアホイール、リアブレーキキャリパー&ローターはともにS1用の純正パーツ。

  燃料タンクはZ1000R用純正パーツを使用するが、燃料キャップ前方にS1と同様のタンクブリージングを設置している。インナーチューブを延長しているのは、フロントを18インチ化している影響もあるのだろう。

燃料タンクはZ1000R用純正パーツを使用するが、燃料キャップ前方にS1と同様のタンクブリージングを設置している。インナーチューブを延長しているのは、フロントを18インチ化している影響もあるのだろう。

削り出しキャリパーはカワサキワークスタイプと呼ばれるもので、KRなどこの年代のレーサーに多用されている。

削り出しキャリパーはカワサキワークスタイプと呼ばれるもので、KRなどこの年代のレーサーに多用されている。

  後年販売された一体式と違い、削りだしボディに鋳物のリザーブタンクを溶接したワークスパフォーマンス製リアショックは、S1が標準装備したパーツだ。

後年販売された一体式と違い、削りだしボディに鋳物のリザーブタンクを溶接したワークスパフォーマンス製リアショックは、S1が標準装備したパーツだ。

   

 

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