掲載日:2018年09月04日 トピックス
写真・文/絶版バイクス編集部 記事提供/絶版バイクス編集部
※この記事は「絶版バイクス vol.28」に掲載された内容を再編集したものです。
黒を基調としたシックでスタイリッシュなガレージに並ぶZ1やCB750K0、H1などなどの人気車種を筆頭に15台もの絶版車を所有するMさん。「どうせ金に任せて買い集めたんだろう」と決めつける人もいるかもしれない。だが25年の歳月を掛けて集めたバイクには、青春の思い出と自ら行ったレストア作業の思いが1台ごとに詰まっているのだ。
希少性の高さと需要と供給のアンバランスから、絶版車の価格は上がる一方。そんな現状を知った上でMさんのガレージを見ると驚くしかない。Z1やCB750K0/K1、マッハ500、W1SAやXS1など、専門店かと見紛うほどの極上車がズラリと並んでいるのだ。そしてこういうガレージを見ると、つい感じてしまうのが「どうせ金に物を言わせたんだろう」という卑屈な思いだ。
エンジンも車体もできるだけ自分の手でいじることをモットーとしている。ただしキャブレターはプロ(山之内キャブレター)にお願いしたところ、それまで不満に思っていた部分がピタリと直ったので、それ以降は任せるようにしている。
無理からぬ感情だが、どんな趣味でも費やした費用と時間を2軸で考えなくては正確な判断できない。Mさんはこれらのバイクを収集するのに25年を掛けている。またそのすべてが仕上げ済みではなく、多くが自らレストア作業を行った車両である点も見逃せない。
オンロード車とは別にオフロード車6台は専用のガレージに保管されている。ヤマハRT1、スズキTS400/250、ホンダCL350/SL350 K0、カワサキ350TRはすべてMさんの思い出の名車たちだ。
65歳のMさんがバイクに乗り始めたのは16歳の頃で、それから20代前半まではオン/オフを問わず様々なバイクを経験した。だがその後は仕事が忙しく家族から止められたこともあり、バイクは諦めざるを得なかったという。そして再びバイクに乗るようになったのが40歳。国産のアメリカンからハーレーのダイナワイドグライドを経て、1995年にCB750K0を購入したことで絶版車への思いが燃え上がる。
Mさんのガレージがコレクションを飾るだけのミュージアムではないことは、使い込まれた工具を見るだけで分かる。キャビネットはもちろん、キャスター付きのトレイにもさまざまなハンドツールが満載である。ハーレーやアメ車のメンテも行うためインチ工具も充実している。
いや、2018年の視点では絶版車と表現するしかないが、1995年当時のMさんにとって10代の頃に乗ったCBの思い出があまりにも鮮明だったから、絶版車に乗るという感覚ではなかった。これで火が着いてしまい1996年にW1SA、1997年にZ1と、20代半ばから十数年すっぽり抜けたバイクの記憶を辿るように、当時乗っていた、あるいは憧れていたバイクをコツコツと集め続けたのだ。
1970年当時のカタログやバイク雑誌、平凡パンチの表紙などを額装して壁に張ってある。スペアのガソリンタンクがズラリと並び、その下のヘルメットはエンジンの音がよく聞こえるようにすべてジェットタイプ。エアコンプレッサーやサンドブラストも備える。
昔も今も、乗ることと平行してバイクをいじることも好きなMさんは、青春を取り戻すように手に入れたバイクにもまた、いじる楽しさを求めた。ピカピカに磨き上げられた完成品ではなく、あえてメンテナンスやレストアが必要なベース車両やポンコツを個人売買やショップ、ネットオークションを通じて購入した。とはいえ50代になっても仕事は多忙を極め、息抜きのバイクいじりも週に1回できるかどうか。そのためスズキGT750などはレストアを終えて納得できるコンディションに仕上げるまで5年も掛かってしまった。だがバイクから部品を外し、磨きながらいじることで20代前半の当時を思い出すことができ、タイムスリップしているような感覚を味わえるのは大いなる喜びとなった。
絶版車を購入して所有するだけではないことは、壁一面の部品庫を見ても理解できる。レストアの際はできるだけオリジナルパーツを使うように心がけているから、すべての所有車用のパーツが膨大にある。
再めっきや再塗装、キャブのオーバーホールなど、プロの技を活用しながら仕上げたバイクにはひとしおの愛着が生まれるから、完成後も手放すのがしのびなく、結果として思い出と思い入れの深い15台を所有しているのが現状なのだ。時代背景を含めて楽しめるのが絶版車。ガレージの中でコツコツと仕上げ続けてきたMさんは、単なるコレクターではなく筋金入りのバイクマニアなのである。
火の玉カラーのZ1は、外装、フレーム、エンジンとも純正ペイントでフレームは3000番台という1972年モデルにもかかわらず、購入した1997年当時、ウエマツでの価格は100万円台前半だったという。当時は既に絶版車への関心や人気が高まりつつあった時期だが、それでも21年前ならそういう価格も現実として存在したのだ。所有車の中、レストアベースではない完成車はおしなべて同等の価格で購入したものが多い。
Mさんが幼い頃、釣り具の卸問屋を営む実家では神社仏閣時代のホンダを配達用に使っていた。16歳で免許を取るとヤマハCS1-E(180cc)でデビューし、21歳の時にカワサキ500SSを購入。当時の思い入れのあるバイクを自らの手で触れて体感するのを喜びとしている。
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