【コラム】バイク歴60年のガンチクを喰らえ!

掲載日:2015年10月06日 トピックス    

執筆/坂下浩康

レディース&ジェントルメン&ザス!
奇刊『君はバイクに乗るだろう YOU WILL BIKE』編集長の坂下です。

本誌は9月4日に2号が出たんですけど創刊号は去年の7月に出てるんす。つまり月刊でも隔月でも季刊でもなく1年に1回でもない。独自の進化を遂げた刊行スタイル……それが奇刊です。ホントもうちょいペース上げたいんですけど今は奇刊です。

それはともかく今回はですね、ストリートライドのダーイシ編集長のご好意により、創刊号のコネタをカラーで再録、原稿も加筆・修正しての……なんつんだろ。番外編? スペシャル版? スピンオフ? スピンオフがいいなあ。響きがカッコいいじゃん。Wikipediaによると「作品制作の分野におけるスピンオフとは、既存の作品(本編)から派生した作品全般を指す」とのこと。ってことはスピンオフでいいのかな。ほんじゃいってみゃ~っす。

YOU WILL BIKEの画像

大パイセン
縦横無尽トーク

春まだ浅い4月の頭。俺は都内某所でランブレッタ早瀬伸彦君とくっちゃべっていた。そうなんだ!? 早瀬君のいろんな顔が見えてくる。ベスパも持っていて。お父さんに教えてもらったりしつつ自分ちのガレージでイジったりもしていて。お父さんもベスパに乗っていて……。なぬ? お父さんもベスパに乗っていて?

「へ~、親父さんいくつなの?」
「76っすね」

なぬ? この世には76歳、いやそれ以上でもビッシビシに乗っている大パイセンはたくさんいると思うんだけどベスパ部門ってあんまりいなさげじゃん。相当高いと思うわけ、妖怪度数が。
ってことで大パイセンに会いに行ったんだけど、なんつーか、あれなのね。76歳にもなるとなんの取材かよく分からないまま写真撮られたりテープレコーダー回されたりしてもビクともしないのね。

YOU WILL BIKEの画像

地下が食品売り場になってる駅前のスーパーの1階で売ってる洋服を奥さんが季節ごとに適当に買ってきて「はいアンタこれ」って着させられてる感じじゃない大パイセンの小粋な着こなしを見るにつけ、オラも大パイセンみたいな76歳になりたいと思うわけだが、息子の伸彦君はベスパの他に Innocenti Lambretta DL125も所有しております。

お父さんが免許を取ったのは何歳の時ですか?

16歳。原付だな。免許証なんてペラペラの紙でな。

今年でちょうどバイク歴60年なんっすね! 乗り出したキッカケはなんだったんでしょう。

だって乗りたくてしょうがねえじゃねえか。

最初のマシンは?

本当の原動機付自転車だよ。ダイヤモンドフリーとか、あとカブね。それからC100にしたんだ。新車は5万5千円したけど、修理屋やってる友達に「3万の中古車が出たから買えよ」って言われて。カブが出たの何年だい? 新聞広告がスゴかったよ。その後、スポーツが出たんで乗り換えた。新車で5万8千円。思ったより走らなかったねえ。今はかなり高価みたいだけど。オート三輪も乗りたくてな~。

当時はどのへんに走りに行ったんでしょう。

このへんメインだから。

このへん? 環七とか?

環七なんかなかったよ。そこらじゅう田んぼばっかだもん。京葉道路は作り始めてたな。近くに火葬場があったんだけどその通りが一番飛ばせたね。今でこそ変わっちゃったけど結構空いてたんだ、火葬場道路は。

火葬場道路!

通称ね。俺達が呼んでただけ。

火葬場道路をブッ飛ばして。

ま~、飛ばしもしねえけど……まあ、飛ばすんだろうな。

どっちなんでしょうか(笑)。

京葉道路の工事が始まった時はみんな全開だよ。そん時はCB92に乗って……ああ、92の前にヤマハのYDSか。ショートホイールベースの。17インチの。あれはかなりツーリング行った。河口湖とか。

当時のバイク雑誌を見てツーリングの行き先を決めたりしたんですか。

たまたまだよ。俺よりもっと大人の人が江戸川競艇場のお下がりのボート買って河口湖に置いてたんだよ。その人に「乗ってもいいよ」って言われて乗りに行った。仲間5人で。

贅沢ですねえ。

船はね、ポンポン蒸気つったやつな。あれがそこらじゅうにあった。江戸川沿いでアサリ獲ったりする漁師がいっぱいいたから。あとコヤシブネってのが……。

コヤシ?

クソ積んで動いてるわけだよ。それが環七の向こうに何隻も停まってるんだから臭いもヘチマもねえよ。農家の人はみんなオート三輪持っててさ、同級生にもごろごろいたから親父に内緒で夜な夜なオート三輪乗ったり。

YOU WILL BIKEの画像

船も含めていろんな乗り物があふれてたんですね。

YDSの後はスバル360を買ってラリーで走り回っちゃったから。

ラリー? レースですか?

レースじゃなくてラリーだよ。今でこそ少ないけど民間のクラブでやってたの。そのへんに楯あるよな(立ち上がってガレージ内を探しながら)これは違う。あった。ほらこれ、東京スバルクラブ。昔は伊藤忠自動車で売ってたから。その後ダットサンに凝って……。

YOU WILL BIKEの画像

どうしても見せたい!ってなイキオイで大パイセンが発掘してきたラリーの盾。そこにはさぞかし輝かしい栄光の戦績が!と思いきや参加賞だったという。

あの~お父さん、それでバイクは?

あ、きたきた、コーヒーきた。美味しいうちに飲んでください。

いただきます。いいですねえ、ひなたぼっこな感じで。お父さん、それでバイクは?

なんかの拍子にベスパ買ったんだ、田園調布にあったジャパンベスパで。

今も乗ってるやつですね。

そう、これよ。40万近かったな。

YOU WILL BIKEの画像

ガレージを見渡す大パイセン。ここにはお宝パーツや思い出の品々、趣味の看板コレクション等が容量オーバー気味にひしめいているのでご紹介。

なぜベスパに?

やっぱりローマンホリデイ。『ローマの休日』だよ。あの映画観ちゃってよ。

今でこそ名画として語り継がれててレンタル屋さんで借りられますけど当時は……。

ないよ。テレビは……あったか。ビデオはねえもんあ。映画ばっかしだよ。

リアルタイムで公開を観て。

そうそうそうそうそうそう。日比谷映画だよ。映画は今も大好きですよ。デズニーの……デズニーの……アンとなんとかっつーの。

今やってるやつですね。

アンと……雪の妖精とかなんとかっての。

アナと雪の女王ですね(笑)。

あれはいいですよ。

ローマの休日を見るやいなやベスパを買ったわけですか。

買ったのはその年じゃねえな。いつか買おうと思ってたよ。映画観た時、「よし、ベスパに乗ってやる」って。それでたまたまチャンスがあったから。

おいくつくらいの時でしょう。

30いくつか。国産スクーターは全部オートマで乗る気しねえんだよ。ベスパは乗ってみたら面白かった。バイクみたいにちゃんとギアチェンジ、ミッションが付いてて魅力だったよ。向こうのクルマはあれだもんね、クラッチが必ず入ってるもんね。それからずっと、このベスパだよ。

ちなみにBMWは。

憧れのバイクですよ。いつか乗りたいのはいつか乗りたいじゃん。そんなもんだよ。

【2014年4月取材】

YOU WILL BIKEの画像
愛車の初年度登録は昭和50年6月9日。当時ベスパ屋さんにもらった取扱説明書も大切に保管されている。
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すべてが手描きで味わい深いどころの騒ぎじゃないのだが絵も字も丁寧。ベスパ屋さんの人柄が伺えます。
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バイクの絵って難しいよね~。でも温もりあるよね~。カミオンのイラスト投稿ページみたいでい~ね~。
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いろんなものが掛けられているのでパッと見、壁際のなんやかんや達と同化気味だけどすんげーキレイなBMW R27。
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今更なんだけど手前のオレンジ色の服の人の顔が気になる。
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ほとんどの看板は、なんのかは分かるけど全部は見えないというコンディションで展示されている。
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薄い。そして軽いがゆえに、天井等に追いやられがちな看板コレクション。
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置き場に困った人から「持ってきな」って言われると断れずに受け取ってしまうという大パイセン。看板の置き場に困っている人がそうそういるとは思えないんだが。
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看板自慢に飽きた大パイセンが発掘してきたキャバレーのパンフレット。にしても好色五人女の空ひばり……。
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スゲえ! フグが土俵入りしてる!(手つかヒレの広げ方からして不知火型)味の横綱だけに!
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音楽のデパートはまったく問題ないんですが、休憩演奏レコードってのはどういうレコードなんでしょうかコタニさん。
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オラは無理矢理肩を組ませるのが趣味です。
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無理矢理握手してもらうのも趣味です。しかも大パイセンは完全に目をつぶっています。

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