カワサキ モーターサイクル Zフェア 2018 「伝説の鼓動よ、再び。」 レポート Vol.03

掲載日:2018年02月13日 トピックス    

取材協力/株式会社カワサキモータースジャパン  文・写真/Hiroyuki Maeda

カワサキ モーターサイクル Zフェア 2018 「伝説の鼓動よ、再び。」 レポート Vol.02の画像

不変の人気を誇る、Z1シリーズのディティール!
そして、新型Z900RSの可能性。(後編)

神戸市のカワサキワールドで2月18日(日)まで開催中の「カワサキ モーターサイクルZフェア」のレポートもいよいよ最終回です。これを読まれる方の中には「もう行って、愛車の写真を貼ってきたよ。」という方もいらっしゃるかもしれませんね。

Z900RSは、あまりにも大きい先達である900 Super Fourとダイレクトに繋がり、21世紀に登場しました。外観的なものや、水冷となって生まれ変わったことについて、初代をどれだけ踏襲したのか……と言い出すとキリがありません。フロントフォークは「カマボコ」ではありませんし、サイレンサーは4本出しの縦ピンではなく4in1、ガソリンタンクのキャップも鍵なしではありませんしね。

開発リーダーであった萩尾さんにお話を伺った際、Z1のタイムレスな佇まいを踏襲し、そのデザイン「フィーリング」を纏わせたとおっしゃっていました。そして、街中でのリラックスしたクルージングから、ワインディングやツーリングといったキビキビと走るスポーティーな楽しみを両立させることを心がけたとも。粋な味付けとして、サウンドチューニングも施されました。

1972年に登場し、Z1がライダーに向けて差し出した、新時代の「乗る楽しみ」を、このZ900RSは継承したのだと腑に落ちました。Z1というクラシックバイク界の「King」と、21世紀に生まれた新たなZとの「共生」が楽しめる我々は幸運なのだと、このフェアを通じ感じることができました。

このZフェアは、Z900RSの開発に携われた方々にとって、年齢や国籍を問わない来場者の方の反応を目の前でつぶさに見られる、楽しい機会かもしれませんね。

それではZの系譜の続編に移りましょう。まずは排気量を1,015ccまで上げ、1977年モデルより登場したZ1000。4本出しだった重量級マフラーが、左右それぞれ1本ずつへと改められました。Z1を始め、カワサキの主要モデルの開発に深く携わり続けた稲村 暁一さんは、海外ではGyoichi ‘Ben’ Inamuraとして知られているそうです。

英語表記のカタログですが、プリントは日本で行われていたのですね。Zシリーズの広告に、こうして4輪が出て来るものが他にもありました。ちなみに、ライダーのヘルメットは70年代に人気を博した、イギリスのグリフィン(Griffin)製のものに見えます。

リアにもディスクブレーキを装備したZ1000。初代の900 Super Fourと比べ、乾燥重量にそれほど大差は無かったようです。この黄色地のナンバープレートはイギリスのもので、どの地域で何年に登録されたのかが読み取れるようになっています。

ディスプレイパネルの1枚。70年代中期から後期にかけてのもの。左上にZ1000、そしてその横には次にご紹介するZ1-R。女性とZ1-Rのイメージは斬新なものでした。

日本刀をイメージしたと言われ、直線にこだわりデザインされたZ1-R。メイン市場の一つであったアメリカでデザインされたそうです。カフェレーサーは元々イギリスで60年代に生まれたスタイルですが、新たな新風が巻き起こった時代でした。

シンプルな背景の中で、Z1-Rのスタイリングの存在感が際立ってますね。フロントのホイールサイズによる、ハンドリングへの不評もありましたが、それを補ってなお余りある、一つのマスターピースと呼べるデザインでしょう。タンク容量はわずか13Lでしたが、翌年には20Lへと増量されました。

ビキニカウル、タンク、そしてシートからテールまでの繋がりが見事です。このモデルに惚れ込んだら、それ以外の選択肢が無くなって当然とも言える個性溢れる1台。エンジンとのコントラストにより、無機質な金属感が演出されています。

初期の4本出しから、2本出しへ、そして4in1となったエキゾーストシステム。ディスクブレーキのドリルドは、このモデルでは均等になっています。また、キックペダルはシート裏に格納されていたそうです。スタイリングのみならず、「カフェレーサー」としてライディングポジションの幅を広げることも考えられていたのでしょう。

カタログの最後の見出しには「The state of the art(=最先端の意)」とあります。Z1-RはZ1000をラグジュアリーに仕立てたモデルであり、Z1000をドレスアップするよりも安上がり! と謳われています。

丸みを帯びたデザインから、スタイリングを一新したZ1000 Mk2は79年と80年のモデル。展示車は、リアのウィンカーが後方に配置されていることから欧州仕様のようです。この通称「角ゼット」に「丸ゼット」の外装を纏わせることも、ポン付けではありませんが、可能だということです。

カラーはルミナスネイビーブルーと、ルミナスダークレッドの2種類。タイヤのサイズもフロント19-3.25とリア18-4.00とクラシックなものです。ページ左下には「Wear a helmet. Enjoy safe riding.」の文字。ヘルメット着用を推奨する一文にも時代を感じますね。

タンクのニーグリップ部のラインも直線基調となっているZ1000 Mk2。頑固な男の乗り物、という風情に惹かれるライダーも多いのでしょう。

Z1000mk2のカタログでは、93馬力となったことを謳い、角ばったデザインを「未来像」と記しています。文末には「ZZZzzzaaaaaapp!」とあり、Z1000mk2が目の前を走り抜ける姿の擬音語として使用されています。ザッパー(Zapper)の愛称で知られるミドルサイズのZ650は、この頃にはもうその愛称で呼ばれていたのでしょうか?

エンジンがブラックアウトされ、これまでは「DOHC」という文字が配されていたクランクのカバー部は「Kawasaki」となりイメージチェンジされています。サイドカバーも三角形のものへ。

水冷6気筒のまさにモンスターマシン、KZ1300。Legendary Six (伝説の6気筒)という異名も与えられました。乾燥重量で300Kgという、まさに戦艦のような存在感を持つモーターサイクル。

専用設計のデザインが散りばめられ、四角いライトも象徴的。水冷の6気筒の幅を抑えるため、ロングストロークとしてボアサイズを抑えて設計されたとのこと。300キロを超える車両重量は、クルーズの際の安定性として生きるそうです。

まるでクルマのダッシュボードを抜き取ったかのような重厚さが唯一無二の存在感を主張。ハンドルのクランプ部にもKawasakiの文字が誇らしげに刻まれています。

キャブレターは6連装ではなく、一つのキャブレターで2気筒分をカバーするダブルバレルと呼ばれるものを備え、ニーグリップをするためのスリムさを確保しています。

エンジンから伸びるドライブシャフトや、それぞれの部位がカットアウトになっています。キャブレターのインテーク部の様子も分かります。文頭には、フラッグシップとしての威厳を表すため、「スーパーZ」と謳われています。ちなみに展示されているZ1300は北米仕様のKZ1300とのこと。

直列6気筒のエンジンに合わすかのように、シートカウルや、そこにはめ込まれるようにデザインされたテールランプの存在感も大。タイヤが小さく感じてしまうほどですね。

エンジンが水冷のため、これまでの空冷Zシリーズとはエンジンの外観も全く違います。エキゾーストが6本並ぶ姿は圧巻です。(ZフェアレポートVol.1参照)

「走り精悍、ジェットフィール!」というコピーが当時のカタログに躍るZ400FX。400ccの排気量によるボーダーが設けられた日本の若年ライダーにとって、DOHCを搭載し、立派な車格を与えられたZ400FXは羨望の的だったそう。

Z400FXは、欧州向けに発表したZ500のスケールダウン・バージョン。そのZ500の排気量を上げたZ550が後に登場しました。また、400ccのZ400FXを海外に向けたモデルはZ400Jと名付けられ、ブレーキの仕様が異なりました。

80年代の幕開けに相応しいきら星となった、通称「フェックス」。幅広で角ばったシートに跨った時の足つきを向上させるため、現在出回っている車両にはシートを低く「アンコ抜き」されたものも多く見られます。

Z1の開発コードネームは「ニューヨークステーキ」、そしてこちらは「サーロインステーキ」だったことはユニークな逸話として知られています。軽量・コンパクトに仕上げられ、1976年に登場したZ650の乾燥重量は211Kgでした。ちなみに、1975年まで生産された、650ccバーチカルツインの650RS通称W3の乾燥重量よりも軽量でした。

このカタログは北米仕様である1981年のKZ650F。発売以降、様々なディテールの変化がありました。キャストホイールや、リアのディスクを備える「デラックス」バージョンにKZ650「カスタム」という名称が付けられており、興味深く思いました。ちなみに1979年を境に、タンクのエンブレムが大文字から小文字へと変更されました。

Z650はZ1からのスケールダウン、ではなく独自のフィールドを意識して開発されました。ホイールベースも短く、旋回性能も高かったこともあり「ナナハンキラー」の異名も授かったのでしょう。キックスタートはこの年から姿を消しました。

400cc、750cc、1,100ccのゼファーも展示されています。1972年のZ1の誕生から、20年近く経った1989年に登場。レーサーレプリカ全盛の時代に、そのシンプルなスタイリングが大人気を博し、一世を風靡しました。ファイナルエディションでは、Z1やZ2をモチーフとしたカラーリングも登場。

前回のレポートでは、Z900RSのカスタムプロジェクトを2台ご紹介しました。こちらが最後の1台。70年代にアメリカをZ2でひた走り、POPヨシムラ氏の元で働いた経験も持つ、Bito R&Dの美藤さんが手掛けたマシン。メーカーにも供給を続けるマグタンホールを備え、自ら曲げたというチタン製のエキゾーストパイプにより大幅な軽量化が行われています。

Z1ならではの懐の深さが投影された、Bito R&DによるZ900RSは、タイヤサイズを前後1インチアップし細めを選択することで、リラックスしたハンドリングを味付け。派手さはないものの、美藤さんのフィロソフィーがしっとりと注がれた1台ですね。3月に発売される「カフェ」も、一足早く眺めることができます。

これでカワサキ モーターサイクルZフェアのレポートは終了です。Zシリーズの魅力を、少しでも身近に感じていただければ幸いです。最終話は、カワサキワールドの常設展についてお伝えしたいと思います。

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