カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その1

掲載日:2018年11月16日 トピックス    

取材協力/株式会社カワサキモータースジャパン
文/中村友彦 写真/ロードライダー編集部 記事提供/ロードライダー編集部
※この記事は「レジェンドバイクシリーズ 01 カワサキ GPZ900R」に掲載された内容を再編集したものです。

空冷Zを凌駕する
圧巻のパフォーマンス

今ではカワサキを代表する名車となったGPZ900Rが、初めて公の場に姿を表したのは、1983年10月初頭のパリショー。ここでの反応がどうだったかと言うと、誰もが関心は抱いたものの、主役レベルの注目は集めていなかったようだ。

その一番の理由は、最高出力だ。当時のカワサキの旗艦だった空冷GPz1100が120ps、過給機を装着する750ターボが112psだったのに対し、GPZ900Rは115ps。同じパリショーで公開されたホンダVF1000RとヤマハFJ1100の125ps、スズキGSX1100EFの122psと比較しても、ずいぶん控えめだった。

カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その1

1983年12月にラグナセカで開催されたGPZ900Rの国際試乗会では、当時のUSカワサキのエースとなったウェイン・レイニーが、サーキットにおけるデモンストレーションを担当。この年レイニーは、旧世代の空冷並列4気筒を搭載するGPz750でAMAスーパーバイクに参戦し、自身にとって初となるシリーズチャンピオンを獲得していた。

しかし、同年12月15日から17日にアメリカ・カリフォルニア州で国際試乗会が開かれると、状況は一変する。GPz1100や750ターボとの比較を交えつつラグナセカスピードウェイを走った日欧米のジャーナリストは、トータルバランスに優れるGPZ900Rの資質に目を見開くこととなった。最高出力こそ控えめでも、軽さとスリムさ、扱いやすさ、空力性能を徹底追及したGPZ900Rは、従来の大排気量車の常識を覆すスポーツ性を備えていたのだ。

この国際試乗会の最終日には、会場をモントレー国際空港に移して、アメリカならではのドラッグパフォーマンスが行われた。フルノーマルの車両でデモンストレーションを担当したのは、当時のドラッグレース界で名を馳せていた“PW(ピーウィー)”ジェイ・グレアソン。前ページ写真のように、ロードレース用とは異なるスウェード調のレザースーツに身を包んだ彼のバーンナウトは、当時のジャーナリストには珍しく、少々奇異に見えたかもしれない。

カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その1

3日間に及んだ国際試乗会最終日の舞台は、モントレー国際空港内の特設ドラッグレースコース。日欧のジャーナリストに本格的な雰囲気が味わってもらうため、スタートシステムのクリスマスツリーが設置された(左手前)。カワサキからの依頼を受けてデモランを担当したのは、当時ドラッグレースで活躍していたジェイ・グレアソンだ。

これはいったい何のパフォーマンスなのか。しかし次の瞬間、会場に居合わせた面々は目を見張ることとなる。スタンディングスタート=静止状態からのフル加速、向かい風ながら1/4マイル=約402m先でグレアソンが記録したタイムは10秒9。11秒台に入れば高性能、と言われていたこの時代の基準を、GPZ900Rはフルノーマルのままであっさり打ち破ったのだ。なお、GPZ900Rを開発している最中、カワサキは茨城県の谷田部テストコースで、最高速246.8km/h、ゼロヨン10秒976を記録。これらはいずれも、当時の量産車では世界最速の数値だった。

カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その1

試乗会場でストリップやカットエンジンを展示し内部説明するのはこの頃に一般化。オーソドックスなダブルクレードルフレームこそ王道となったこの時代に、ダウンチューブが存在せず、アルミ製のシートレールとスイングアームピボットプレートを別体式としたGPZ900Rの3分割式ダイヤモンドフレームは、異質の構成だった。

カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その1

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カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その1

エンジンの進化を考えれば、水冷化とDOHC4バルブヘッドの採用は当然の流れだったものの、サイドカムチェーンや背面ジェネレーター、Y字型ロッカーアームを用いた動弁系など、GPZ900Rのエンジンは革新的な要素を満載していた。

カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その1

下部左右に見えるふたつの丸い部品は、1/4番気筒用CVK34キャブレターのトップカバー。吸気ポートのストレート化を目的とする左サイドカムチェーンは、キャブレターの左右幅、そしてニーグリップ部のスリム化にも大いに貢献していた。

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