掲載日:2025年07月22日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
KAWASAKI KLX230S
カワサキのKLX230シリーズには、スタンダードなオフロードモデルであるKLX230とその低車高モデルであるKLX230S、トレッキングモデルとしての専用装備を与えられたKLX230シェルパ、モタードモデルのKLX230SMという多彩なラインナップが存在する。今回試乗したKLX230Sは、スタンダードなKLX230の880mmというシート高を845mmに下げるとともに、シートの肉厚やサスペンションのストローク量を変更することでローシート仕様とし、乗りやすさを高めたモデルだ。
ローダウンに関する部分以外はKLX230と共通だ。2025年モデルではFIのセッティング変更により低中回転域のパフォーマンスが向上したほか、キャスター角とトレール量の変更によってハンドリングの軽快性を高め、リアサブフレームの形状や位置の見直しでシートの肉厚や足つき性の向上が図られている。また、スイングアームもスチール製からアルミ製に変更、ホイールもブラック仕上げのアルミリムとし、あわせてABSキャンセルスイッチを装備。前後サスペンションのホイールトラベル量も増大(KLX230Sはフロント158→200mm、リア168→223mm)させるなど、走りに関して大幅なリファインがなされている。
また装備面についても、ヘッドライトのLED化やBluetooth通信機能を搭載した液晶ディスプレイメーターの採用など、利便性を高めた変更が行われると同時に、フロントフェイスのデザインも一新され、より精悍で戦闘的なイメージに生まれ変わった。
KLX230Sの外観デザインは、新しくなったヘッドライト周りと、タンク&シュラウドからシートにかけて流れるようなフォルムが組み合わされ、精悍でありながら美しさも併せ持つ独特の雰囲気を漂わせている。シート高は845mmでスタンダードなKLX230よりも35mm低く、足つきにそれほど不安はない。跨ると1Gでの沈み込みはかなりあり、サスペンションのしなやかさがうかがえる。逆にしなやかすぎて、サイドスタンドの角度が浅く立ちが強いこともあって、跨り方によっては右側にマシンが傾こうとするので注意が必要なくらいだ。
走り出してすぐに実感するのが、低中速域での力強さだ。発進時のググっと押し出されるようなパワー感に加え、街中を3~4速で走っている場合も、キビキビと元気のいい走りで乗り手を楽しませてくれる。混雑する道路でも加速力とスリムな車体を活かして車群をかわし、ヒラヒラと駆け抜ける爽快さはとても気持ちがいい。郊外のちょっとしたワインディングにしても、あまり勾配がきついとパワー不足を感じることもあるが、ゆるやかな登りや下りのシーンでは軽い車体をペタっと寝かした軽快なコーナーリングが楽しめる。
半面、少し気になったのが直進安定性だ。車体バランスに起因するのか、ブロックが高めのタイヤを装着しているためなのか原因は判然としないが、低速でじりじり進むような場合にフロントタイヤがまっすぐ落ち着かないのに加え、高速道路でもオン・ザ・レールとは行かず、例えるならオン・ザ・ウォーターというか、ゆら~りゆらりと進路が微妙に揺れる感じがある。もちろんどちらの場合も危ないというレベルでは全くないわずかなものだが、違和感を覚えたのは事実だ。
しかしダートに乗り入れれば、そんな些細なことはどうでもいい、と思わせてくれる楽しさがある。スタンダードなKLX230に比べるとホイールトラベルは短くなっているとはいえ、軽量で押さえ込みやすい車体に良く動く前後のサスペンション、体重移動やポジション変更のしやすいシートのおかげで、ストレスなく走り回れる。それに加えてABSのキャンセルができるようになったことで、ブレーキターンなどで積極的にリアを滑らせることが容易になるなど、遊べる範囲も広がった。
本格的なコースを走る場合などは別として、林道や河原レベルを走る分には、ホイールトラベルの短さよりもシート高が低いことで気軽に乗れることのメリットの方がはるかに大きいだろう。
通勤通学といった日常使いや、林道ツーリングやキャンプ、ダートの先にある温泉への足など、様々な用途に幅広く対応できるポテンシャルを持つKLX230Sは、バイクの楽しみ方をぐっと広げてくれる懐の深い1台といえるだろう。
2025年モデルからヘッドライトはLED化され、デザインもよりシャープなものに変更された。ウインカーはバルブタイプだ。
モノクロ液晶のメーターはシンプルだが、スマホアプリ「RIDEOLOGY THE APP」と接続することで車両状態の確認やライディングログの保存が可能だ。
ハンドル左側のスイッチボックスには、新たにABSのキャンセルスイッチを装備。ダートでABSをオフにできることで走りの幅が広がった。
ハンドル右側はスターターとキルスイッチのみというシンプルなものとなっている。
エンジンは空冷SOHC2バルブ単気筒232ccで、最高出力は13kW(18PS)/8,000rpm。最大トルクは19N・m(1.9kgf・m)/6,400rpmで、シティランで扱いやすい出力特性となっている。
一体型でフラットなシートはさまざまなライディングポジションに対応、前後の体重移動などもしやすい形状だ。
左側リアシート脇にはコの字フックタイプのヘルメットホルダーを備えている。
鍵付きの左側サイドカバーを開けるとバッテリーやヒューズボックスにアクセスできる。車載工具はバッテリーの上に収納されている。
車載工具はレンチとドライバーを中心としたシンプルなものが袋に収められている。
チェンジペダルにはラバーが装着されている。サイドスタンドは短めで立ちが強いのでやや安定性に欠ける。
スチール製のステップやブレーキペダルは泥などが詰まりにくく、滑りにくい形状となっている。
リアサスはリンク式のニューユニトラックで、プリロード調整が可能だ。
フロントブレーキはデュアルピストンキャリーパーで、ディスク径は265mmのシングルペタルタイプだ。ホイールにはブラック仕上げのアルミリムを採用している。タイヤサイズは2.75-21 45P。
リアのタイヤサイズは4.10-18 59P。ブレーキディスクはペタルタイプの220mm径でシングルピストンキャリパーを採用。新たにアルミ製スイングアームとなり1.2kgの軽量化を実現した。タイヤはIRCのGP-21(前)、GP-22(後)を装着。
リアの灯火類はシンプル。テール/ブレーキ灯とウインカーはバルブタイプを採用している。
テスターの身長は170cmで足は短め。KLX230Sのシート高は845mmで、両足だとつま先がつく程度、片足なら母指球までしっかりと接地する。車重が軽めなので不安はなかった。
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