TBIだけじゃない、Husqvarna motorcyclesのエンデューロモデルがフルモデルチェンジ!

掲載日/2023年12月27日
取材協力/Husqvarna motorcycles JAPAN
写真、文/伊井覚
構成/バイクブロス・マガジンズ
今年、ハスクバーナ・モーターサイクルズのエンデューロモデルがフルモデルチェンジを果たした。その中から気になる3モデルに試乗した結果、エンジン・フレームをはじめ随所に変更が加えられ、より扱いやすく、ファンライドからレースまで幅広く楽しめるモデルに仕上がっていた!

さまざまな遊び方に対応した
豊富な排気量ラインナップ

スウェーデン発祥のハスクバーナ・モーターサイクルズは、現存する多くのモーターサイクルブランドの中でも世界最古の歴史を持つうちの一つだ。昨今ではネイキッドモデルのヴィットピレン/スヴァルトピレンも人気を博しているが、その真骨頂はやはりオフロードモデルにある。

2024年式のエンデューロモデルは2ストロークにTE150、TE250、TE300、TE300 Pro、4ストロークにFE250、FE350、FE350 Pro、FE501をラインナップ。すでにリリースも始まっており、国内外のエンデューロレースだけでなく、ラリーや林道ツーリングにも広く用いられている。また、グループメーカーであるKTM、GASGASのエンデューロモデルとは基本設計を同じくしているが、随所に差別化が見受けられ、ハスクバーナ・モーターサイクルズは3メーカーの中で最も高級路線となっている。

今回は長野県ワイルドクロスパークGAIAで開催されたメディア試乗会にて、TE150、TE250、FE250に試乗する機会を得た。

TBIに進化した2stインジェクション

年々排気ガス規制が厳しくなり、世界中の公道モデルから2ストローク車が姿を消していく中でも、ハスクバーナ・モーターサイクルズのエンデューロモデルにはナンバー取得が可能な2ストローク車が生き残っている。それが、TE150とTE250だ。

2018年モデルから燃料供給装置にキャブレターを廃止し、TPI(トランスファー・ポート・インジェクション)というインジェクション・システムを採用していたが、今年発表された2024年モデルではTBI(スロットル・ボディ・インジェクション)に変更。

TBIはスロットルフラップの前後に2つのインジェクターを配置し、排気バルブの動きを電子制御で緻密にコントロールすることにより、限りなく均一に混合気を燃焼室に送り込めるようになっている。この6年の間に電子制御技術が進化し、2ストロークの複雑な混合気の流れに合わせて排気バルブを動かすことができるようになったため、満を持して採用に至ったのだ。

本来、2ストロークのエンジンは4ストロークに比べてパワーの出力特性がピーキーで、いかに小排気量といえども、とても繊細なスロットル操作が求められるのだが、近年のハスクバーナ・モーターサイクルズでは、実に扱いやすい特性を実現していた。ところがTBIを採用した2024年モデルに試乗してみて改めて驚いた。昨年までのTPIモデルでも全く不満を感じなかったのだが、こうしてTBIモデルに乗ってしまうと、明らかにより乗りやすくなっている。具体的に言うと、低回転から高回転まで全域においてスロットルレスポンスが素晴らしく、回転の上がり方がスロットル開度に比例しているのだ。特に250ccモデルのTE250はそのパワフルさゆえに高回転まで使うことが難しかったのだが、2024年モデルではこれまでよりも回転を上げやすくなっていた。

また、150ccモデルのTE150に関しても、以前よりも高回転の頭打ち感が改善されており、まるでモトクロスモデルかのように高回転域を使って走ることができるようになっていた。それでいて低〜中回転域でのトルクもしっかり持ち合わせており、極低回転域でもエンストの気配すらない。圧倒的軽量さからライン取りも自由自在で、楽しさと速さを兼ね備えたモデルに仕上がっていた。

トラクションコントロールが
標準装備された4stモデル

4ストロークモデルのFE250は、2ストロークモデルよりもさらに乗りやすい味付けになっていた。従来モデルからの変更点としてはまず、ボア×ストロークの変更。78mm×52.3mmだったものを81mm×48.5mmとし、よりショートストロークに。圧縮比は13.8:1から14.4:1に変更されている。どちらかというと、高回転寄りの特性に向かう変更に思われるが、従来モデルのまるでトレールモデルかのような低回転域の扱いやすさは健在だった。

また、4ストロークモデルには全車種にトラクション・コントロールとクイックシフターが標準装備されている。トラクション・コントロールは砂利や落ち葉などでリアタイヤがトラクションを失い滑ってしまった時に、コンピューターがその動きを感知して自動的に燃料噴射料を抑え、スライドを抑制するという機能だ。不意の転倒を免れることができるだけでなく、コーナーの立ち上がりで前に出やすいなど、レースを有利に展開することができる。

クイックシフターはクラッチレバーの操作不要でシフトアップが可能になる機構で、2速より上の変速操作に対応している。これによりシフトアップ時にクラッチレバーを握る必要がなく、よりスムーズな加速を可能にしている。さらにシフトミスも減るため、安心してライディングを楽しむことができるだろう。

エンジン以外も進化したTE/FE

今回のモデルチェンジはなにもエンジンに限った話ではない。フレーム、前後サスペンション、その他細かい部分まで仕様変更が施されている。

まずメインフレームは、エンジンのクランクなど回転マスの再配置に合わせてショックマウントの剛性を向上させ、シャシー全体のアンチスクワット性能を改善。さらにステアリングヘッドの剛性向上と、パラレルフレームマウントを新設計にすることでフレックス特性(しなり)を改善している。また、サブフレームは上下のハイブリッド構造となっており、アッパーサブフレームはポリアミド製のインジェクション成型、ロアサブフレームは溶接不要の3D成形のアルミニウム製。剛性を持たせつつフレックス性能を高めている。

フロントフォークにはWP製のXACTクローズドカートリッジを採用。従来モデルではオープンカートリッジのXPLORだったが、大幅に進化を遂げた。正直言って、従来モデルのXPLORでも十分高性能だったのだが、乗り比べてみるとXACTはもはやファクトリーモデルのXPLOR PROにも匹敵するのではないかというくらい滑らかな動作を実現していた。フォークの全長が12mm延長され940mmとなっていることも要因の一つだろう。

リアショックにはWP製のXACTリンク式モノショックを採用。従来モデルに対し全長を15mm短縮し、100gの軽量化を実現している。プリロード、コンプレッション(高速・低速)、リバウンドの調整が可能で、コンプレッションとリバウンドについては工具不要のハンドアジャスター機能を有している。近似モデルであるKTMのエンデューロモデルとの一番大きな違いが、このリアショックだ。KTMではXPLORのリンクレス式を採用している。

ひと目でわかる変更点の一つが、フットレストだ。フットレストマウントを9mm内側にシフトし、厚さを6mm減少。深い轍に入った時に引っかかりにくくなっていると同時に、ブーツが荷重する面積は27%増えており、コントロール性が向上している。

ヘッドライトには軽量なLEDライトを採用し、光量は従来モデルの約3倍、900ルーメンを実現。また、ヘッドカウルはトリプルクランプに直接装着され、フロントフォークに固定していたラバーストラップは廃止された。

シート高は近似モデルのKTM、GASGASと比べて最も低く、車両がコンパクトに感じるほどだ。


Husqvarna motorcycles
TE250
¥1,385,000(税込)
エンジン型式:水冷2ストローク単気筒
総排気量:249cc
始動方式:セルスターター式
変速機形式:6速
車両重量:107.0kg(半乾燥)
燃料供給方式:Keihin製EFIスロットルボディΦ39mm
サスペンション前:WP製XACT 48倒立フォーク
サスペンション後:WP製XACT リンク式モノショック
タイヤサイズ前・後:90/90-21・140/80-18


Husqvarna motorcycles
TE150
¥1,269,000(税込)
エンジン型式:水冷2ストローク単気筒
総排気量:143.99cc
始動方式:セルスターター式
変速機形式:6速
車両重量:100.2kg(半乾燥)
燃料供給方式:Keihin製EFIスロットルボディΦ39mm
サスペンション前:WP製XACT 48倒立フォーク
サスペンション後:WP製XACT リンク式モノショック
タイヤサイズ前・後:90/90-21・140/80-18


Husqvarna motorcycles
FE250
¥1,460,000(税込)
エンジン型式:水冷4ストロークDOHC単気筒
総排気量:249.9cc
始動方式:セルスターター式
変速機形式:6速
車両重量:108.6kg(半乾燥)
燃料供給方式:Keihin製EFIスロットルボディΦ42mm
サスペンション前:WP製XACT 48倒立フォーク
サスペンション後:WP製XACT リンク式モノショック
タイヤサイズ前・後:90/90-21・140/80-18