掲載日:2017年09月11日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐賀山敏行 写真/井上 演
250ccにしては大柄な車体を持ち、さらにアドベンチャーツアラーというジャンルゆえに、Vストローム250の足つきは果たして……と思いつつ跨ってみると、意外なほどに良い。身長174cmのライダーが跨ると、両足のかかとをべったりと地面につけることができる。また、両手を自然に伸ばしたところにグリップがあり、上半身も非常にリラックスした状態。これなら長時間のライディングでも疲れにくそうだ。
実際に、開発時には風防効果だけではなく、ライディングポジションと足つきには最大限の配慮がなされたとのことで、ライディングポジションは兄弟モデルであるGSR250S(生産終了)とほぼ同じ。ハンドル幅は意外と狭く、リラックスしつつも、スポーティーな走りも楽しめそうだ。
というわけで、いざ走り出す。足つきの良さと車体の軽さ(車両重量188kg)によって、ストップ&ゴーの多い市街地でも不安やストレスはない。前後17インチホイールによる旋回性の高さは細々とした市街地でこそ本領を発揮する。日常的な扱いやすさは秀逸で、ツーリングだけではなく、通勤バイクとしても十分な資質を持っている。
とくに感動したのがエンジンフィーリングだ。以前、発売直後のGSR250に乗ったことがあるのだが、アグレッシブなルックスとは裏腹な、ロングストロークエンジンに面食らったことを覚えている。あまりにもスタイリングとのイメージが違いすぎて、終始ギクシャクした感じだったのだが、Vストローム250はそんなギクシャク感は皆無。初期のGSR250と比べてフリクションロスの低減など熟成を重ねたエンジンはフィーリングが絶妙で、並列2気筒の適度な鼓動感を伴いながら、ピーキーでもなくダルくもない乗り心地のよさを持っているのだ。
そんな心地よさは高速道路でも同じ。決して速いとはいえないが、法定速度プラスαの速度域で流すには十分。安定した鼓動感は気持ちよく、高い風防効果とリラックスしたライディングポジションも相まって、どこまでものんびりと走っていけそうだ。
今回はソロライディングでの試乗だったが、パニアケースに荷物を満載にしてのタンデムツーリングではどうなるかが気になるところ。ちなみに開発時には、エンジンのセッティングを低回転時のトルクに振ったとのこと。不満のない加速と巡航性能を期待してもいいだろう。
Vストローム250を最も楽しく操れたのがワインディングだ。自然体でいられるライディングポジションに前後17インチホイール、さらにトルクフルなエンジン特性によって、車体は右に左にと、まさに意のままに曲がっていく。市街地でのUターンで、すでに扱いやすさは予想がついていたのだが、中低速での太いトルクがワインディングをより楽しいものにしてくれる。
前傾のキツいスーパースポーツとは全く違い、自由気ままに操っている感覚がやっぱり心地よい。真剣にスポーツ走行をしようとすれば上りなどでパワー不足を感じるだろうが、これはこれで丁度いい。「速さ」や「パワー」ではなく「気持ち良い」……これがワインディングでの感想である。
アドベンチャーツアラーなのだから、当然オフロード性能も気になるところだが、Vストローム250が採用するのは前後17インチホイール。トラクションコントロールなども装備していないので、その実力は推して測るべし……である。しかし、ライディングポジションやトルクフルなエンジン特性から考えて、フラットダートであれば難なく走ってしまうだろう。
毎日の街乗りからロングツーリング、そしてその気になればちょっとしたダートまで、まさにオールマイティー。Vストローム250は、気軽にアドベンチャーを楽しめる秀作である。