掲載日:2019年01月10日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/ホンダモーターサイクルジャパン
試乗ライダー/小林直樹 写真/長谷川徹 文/小川浩康
記事提供/ガルル編集部
※この記事は『月刊ガルル vol.392』に掲載された内容を再編集したものです。
振動の少なさは高速道路でも発揮される。100km/h巡航は6速化の恩恵でエンジン回転数も低めなので、不快な振動や騒音が出てこない。前後サスは高速域でもフラットな乗り心地で、シートのホールド性もいいから、予想していた以上に快適だった。とくに、シートは硬いけれど、それが沈み込みにくさになっていてポジションがズレにくいのがマシンホールドのしやすさになっている。
都内の編集部から市街地、高速道路を走り、伊豆半島へ向かった。そしてワインディングを抜け、林道からトレッキングエリアまで走破。伊豆半島を選んだのは、積雪の心配が少なく、冬でも林道ツーリングが楽しめるからだ。
アドベンチャーモデルのようなシールドはないので、走行風は身体に当たるけれど、法定速度で巡航していれば問題ないレベルだ。車重の軽さでトラックの走行風などで振られることもあったが、しっかりニーグリップしてマシンコントロールすれば、余計に振られることもなくリカバリーできる。
それよりも気になったのは高回転域の伸び。450という排気量を考えると、もう少し高回転でのパワーがほしくなる。車体が軽いから追い越し加速力は充分なのだけど、パワーがあれば巡航時にもっと余裕ができて、さらに高速道路が楽になると思う。トップスピードがほしいというのではなく、もっと少ないアクセル開度で巡航できれば、自走できてダートも楽しめる林道ツーリングモデルとしての完成度が、さらに高くなるからね。
燃費は高速道路で22.4km/L、渋滞を含めた市街地で21.8km/L、トレッキングを含めた林道で14.5kmL/Lとなった。アクセル開度によって燃費は変化する傾向といえる。燃料タンク容量は7.6Lなので、航続距離は単純計算で170km~110km。給油タイミングはつねに意識しておきたい。
それにアクセル開度が少なければ航続距離ももう少し伸びるし。今回の高速道路での燃費は約22km/Lだったけれど、ガソリンを5L消費(約100km走行)したあたりから燃料警告灯が点灯するんだ。ボディアクションがしにくいビッグタンク化は、ダート走行性能を損なうから本末転倒だと思うけれど、もう少し航続距離が長いと、ツーリングルートの幅は広がるよね。
レーサーベースの軽い車体はコーナリング時の軽快さにもなっている。前後サスは初期からよく動きつつ、途中からはしっかり踏ん張ってくれて、前後タイヤを路面にグリップさせてくれる。高剛性アルミフレームが前後サスをがっちり保持していて、それが乗り心地のよさに反映されていると思う。ブレーキもフェードする兆候もなくコントロールしやすかったし、ワインディングでは乗りやすさを感じると思うよ。
レーサーベースという気難しさがなく、コーナリングを楽しめるからこそ、高回転でもうひと伸びほしくなってくる。1速から4速までがクロスしているので、トルクが立ち上がるパワーバンドの幅も短めなんだ。各ギアをもう少し高回転まで引っ張れるようになると、シフトアップのつながりがもっとスムーズになって、スピードものせやすくなる。
とはいえ、コーナーに合わせてシフトチェンジしたら、トルクの太さを生かして半クラッチは使わずにアクセルだけでクリアしていける。立ち上がりはレーサーらしい加速で軽快そのものなので、ワインディングではマシンコントロールする楽しさを存分に楽しめるよ。
前後サスの衝撃吸収性が抜群で、林道程度のギャップは不安を感じることなく通過できる。ガレ場やウッズにも入ってみたけれど、そうしたトレッキングでも前後サスはよく動き、ダートでの乗り心地のよさはかなりいいね。取りまわしも軽いし、パワーも扱いきれるちょうどよさ。それとレーサーと同形状のワイドステップは足が滑りにくく、ステップ荷重しやすい。そうした操作のしやすさがダートでの扱いやすさになっていて、林道ツーリングを存分に楽しめる乗り味になっているんだ。
トルクの太さはフロントアップのしやすさになっているし、コントロールしやすいブレーキと軽い車体はジャックナイフのしやすさになっている。450レーサーベースとは思えない扱いやすさと、トレールモデルでは味わえないレベルの軽い車体と加速力を両立。そんなレーサー譲りのダート性能を、自走での林道ツーリングで楽しむなら、最高の1台になっていると思う。厳しい環境性能にちゃんと適合しつつ、これだけの走りを実現している。これは本当にすごいことだと思うよ。
今回CRF450Lでダートを走ったのは国道136号の土肥峠(船原峠)と土肥港の間に位置する、土肥中央林道と林道上池線。走り繋げば10kmのダートを楽しめる。松原トンネルから西へ2km進んだ、小松原橋の手前の分岐が林道入口となる。路面は基本的にフラットだが、今夏の台風の影響で落石や土の堆積が多い。深いワダチもあるので、ライン選びは慎重に。見晴らしポイントもいくつかあり、走り応えのある林道だ。
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