掲載日:2012年08月10日 特集記事
文/ダートライド編集部
KTMジャパン株式会社は、2012年7月25日にモトクロッサー・SXシリーズとエンデューロレーサーEXCシリーズの2013年モデルを発表。同時に発売も開始した。アメリカでは450SX-Fを駆るライアン・ダンジー選手が、SX(スーパークロス)でKTM初の優勝を獲得し、MX(モトクロス)では連続ヒート優勝を10回マーク。EXCシリーズは、エンデューロマシンで世界シェア60%にも迫る支持を得ている。エンジン、フレーム共に大幅な刷新を受けた2013年モデルの魅力をモデル毎に紹介しよう。
モトクロッサーシリーズの最大排気量になる450 SX-Fの大きな変更点は、エンジンとシャシー。エンジンは完全な新作で、軽量化とダウンサイジングを企図し、SOHCヘッドを採用(前作はDOHC)。ここに、軽量なチタンバルブやマルチファンクションバランサーシャフト、新型CNC加工スチールクラッチバスケットを導入している。耐久性の向上も目指し、PANKL製プレーンベアリングを採用する事で約2倍のメンテナンスサイクルを実現しているという。高出力と耐久性を両立させるのが狙いだ。質量は2.5kg軽量化している。
シャシーは、剛性の異なるクロモリ製スチールパイプを、位置により使い分けて組み合わせた完全新設計(メインフレーム)。エンジンを取り囲むクレードル部分のパイプ(ロワーチューブ)は2012年モデルよりも薄い素材を使い、軽量化を図っている。シリンダーヘッドとステアリングヘッドをつなぐヘッドステーは、ライアン・ダンジーのリクエストにより新たなガセットが追加され、操縦安定性を向上。スイングアームも新設計となり、コーナリング時のスタビリティに加え、路面追従性が大幅に高まったとの事。また、リアアクスル径は20mmから25mmへ大径化されている。
フロントサスペンションは、新ブレンドのフォークオイル(SAE 5からSAE 4へ)とSKF製シールリングの組み合わせでフリクションを低減。また、今までよりハードなスプリングに変更する事で、特に高速域でのスタビリティを高めたという。トリプルクランプも、CNC加工のアルミ削り出しタイプを採用している。
リアサスペンションも車体全体のリニューアルに伴い見直しが図られ、細かなセッティング変更の他、ボルト&ナットの軽量化もされている。
新設計フレームとスイングアーム | CNC加工のアルミ削り出しトリプルクランプ | 450 SX-F |
排気量レンジ的に国内では主力となる250 SX-Fは、高圧ダイキャスト製法により、堅牢でありながら小型軽量化を実現した新エンジンを導入。2012年モデルとは世代が完全に異なるもので、ウォータージャケットを新設計したシリンダー、バルブサイズの拡大、新設計カム/ピストン/コンロッドの採用に加え、ニードルローラーベアリングを廃してプレーンベアリングを導入するなど、0.5kgの軽量化となった。また、サービスインターバルの倍増、+5PSとオーバーレブ特性の向上など、充実の変更になっている。クランクケースもセル始動専用タイプとなり、エンジン幅がコンパクト化された。
この新設計エンジンに合わせるように、新デザインのエアフィルターと、スロットルボディを44mmに拡大したケーヒン製EFI、エアブーツの剛性強化などの見直しが図られ、より優れたレスポンスと豊かなトルクを発揮するという。
シャシーの変更点は450 SX-Fと同じで、軽量化と高剛性を追求したニューフレームに、新設計のスイングアームとなる。サスペンションの変更も同様だ。
前後ホイールのスポークはブラックのアルマイト処理がされ、見た目の新しさと共に高い耐腐食性を誇る。
ニューエンジンに合わせ新設計されたエアボックス | スロットルボディを44mmに拡大されたケーヒン製EFI | 大径化されたアクスルを中心としたリア周り |
ミニモトの85 SXもフルモデルチェンジ。エンジンはシリンダーヘッド、シリンダー、クランクなど内部機構を大幅にアップデート。ポートとリードバルブの形状を見直し、最高出力をアップしながらパワー特性は滑らかになり、微妙なコントロールの応答性を得たという。
操作系では、フォーミュラ製油圧クラッチとブレーキマスターシリンダーの採用で、軽さとコントロール性を向上させた。
新設計のフレームは、剛性を強化しながら各部を最適化。サブフレームのアルミ素材の見直しなどで、安定性の向上を目指している。ボディデザイン全体もフルサイズマシン同様、大幅に見直しが施され、人間工学のロジックを取り入れた新デザインシートと相まって一体感を高め、扱いやすさを一段と向上させたという。
【その他の変更点】
・新設計フューエルタンク、スポイラー、エアボックス、リアフェンダーを採用
・フレーム剛性を最適化。サブフレームのアルミ素材を見直し、安定性を向上
・人間工学に優れる新設計シートを採用
・43mmφ 倒立フォーク、PDSショックのセッティングを変更
・新設計アルミテーパードハンドルバー
・ブレーキマスターシリンダーは、操作性に優れるフォーミュラ製を新採用
・ボディデザインの変更に合わせて形状変更したラジエーター
・新ポート形状を採用したシリンダー、リードバルブ形状も変更し、最高出力をアップしつつパワー特性も滑らかに
・シリンダーヘッドとフレームの接続部形状を変更し、よりダイレクトなハンドリングを実現
・小型化したクランクピンを採用する新設計クランクを採用。信頼性と共に性能も向上
・イグニッション&クラッチカバーをニューデザインに変更
・フォーミュラ製油圧クラッチを採用して操作性を向上
登場当時は珍しい中間排気量として話題を集め、今や同社の定番モデルとなった350 SX-Fは、250SX-F同様の手法で軽量化とトルクアップを果たし、更に戦闘力を強化している。各部のファインチューニングを進め、部品のリプレイス、剛性を最適化したニューデザインフレームの投入などを行っている。
モトクロス世界選手権で最高峰MX1クラスに350 SX-Fで参戦しているアントニオ・カイローリ選手は、3年連続の世界チャンピオンを射程内に収めつつシリーズ戦を闘っている(第12戦の時点でポイントランキング首位)。
軽量な車体がウリの2ストローク125 SXは、エンジンにV-FORCE4(リードバルブ)を採用、4ストロークモデル同様の新設計フレーム、スイングアーム、フロントサスペンションなど、大幅な見直しがされている。
価格は次の通り(モデル名を選択でスペック)。
SXシリーズ(モトクロスモデル)
450 SX-F 998,900円
350 SX-F 925,000円
250 SX-F 892,500円
125 SX 699,900円
85 SX 499,900円
※すべてメーカー希望小売価格(本体価格・消費税込)。
エンデューロモデルも、国内ではライダー層の中心となる4ストローク250クラス。この250 EXC-Fは、2012年版でフルモデルチェンジ。2013年モデルはそこから更にリファインを進め、より戦闘力を高める見直しが行われた。EFI用のクイックリリース式のマイクロスクリーンが代表例で、より信頼性を高める事で完成の域に達しているという。
クロモリ鋼材で構成されるメインフレームは、プロフィールの異なるパイプを複数使い組み合わされる。リアスイングアームはWP製のPDSショックに合うよう設計され、高いねじれ剛性を誇る。ユニット取り付けは、伝統のリンクレス構造になる。
フロントサスペンションは、SXシリーズと同じく新ブレンドのフォークオイル(SAE 5からSAE 4へ)とSKF製シールリングの組み合わせで、フリクションを低減させている。
2012年モデルで新シリーズとしてデビューした350 EXC-Fは、やはり詳細を見直す手法で、エンジンのアルミ素材を耐久性が高くダメージに強い新素材に変更。クランクケースなどを高圧ダイキャスト製法にする事で、200gの軽量化を果たした。
WP製のフロントサスペンションは、新開発オイル(詳細非公開)を封入し、初期の作動性がよりスムーズになり、繊細に衝撃を吸収して操安性を高めたという。
EXCシリーズのより高性能なモデルとして、ISDE(INTERNATIONAL SIXDAYS ENDURO)に参加するライダー向けに用意される『SIXDAYSシリーズ』は、2ストロークモデルの125 EXC、250 EXC、4ストロークモデルの250 EXC-F、350 EXC-F、500 EXCに設定。
注目は、今期から初採用になるWP製のニューフロントサスペンション、「4CS」。ダンパーの伸側・圧側の機能を左右にそれぞれ振り分けることで軽量化を達成(右:リバウンド、左:コンプレッション)。更に、走行中でも減衰力を調整する事ができる。他にもCNC加工、オレンジアルマイト仕上げのSXSトリプルクランプ。キャメルSXSシート、樹脂製アンダーガードなど実践的な装備を多数採用する。
他、外観的特徴として、高性能の証になるオレンジフレームに加え、2012年のISDE開催地であるドイツを模した専用のグラフィックを与えられている。
【その他の変更点】
・ケーブルコネクターにニューラバーキャップを採用し、防水性をアップ
・新開発フォークオイルを採用したWPフロントサスペンション(SAE 5W > SAE 4W)。より繊細に衝撃を吸収、ダンピングの安定性もアップ
・高性能なSKF製シールリングを採用。フリクションが低減し、初期の作動性がよりスムーズに
・ブラックアルマイト処理された新設計スポークを採用。耐腐食性が向上
・トラクション、コーナリング性能と耐久性に優れるMAXXIS製タイヤを採用
・フューエルライン上のクイックリリースコネクターにマイクロフューエルスクリーンを装着することで、走行前のスクリーン交換が簡単に
・リアブレーキのマスターシリンダーシール部分の耐久性を向上
・操作性、快適性を高めた新設計2コンパウンドグリップ
・よりアグレッシブなイメージとなったNewグラフィック
・チタン製4バルブ(IN:30.9mm/EX:26.6mm)
クロスカントリーレースに的を絞ったXCシリーズは、2モデルが日本に上陸。1台は、軽量・大トルクを誇る300 XC-W。もう1台は、その排気量を凌駕する戦闘力の高さと、扱いやすさでファンバイクとして根強い人気を誇る150 XC。どちらも、多数の設計見直し、素材の変更、新技術の投入とメカニズムの刷新が図られている。それに加え、世界中のKTMライダーの声を反映したマシンコミュニケーションと操作性の向上を果たし、最新にして最高のパフォーマンスを獲得しているという。
リアサスペンションの構造は、300 XC-Wがリンクレス、150 XCはリンク式になる。
価格は次の通り(モデル名を選択でスペック)。
EXCシリーズ(エンデューロモデル)
500 EXC 1,230,000円(STANDARD)、1,330,000円(SIXDAYS)
350 EXC-F 1,090,000円(STANDARD)、1,170,000円(SIXDAYS)
250 EXC-F 980,000円(STANDARD)、1,070,000円(SIXDAYS)
250 EXC 890,000円(STANDARD)、980,000円(SIXDAYS)
200 EXC 850,000円
125 EXC 790,000円(STANDARD)、845,000円(SIXDAYS)
XCシリーズ(クロスカントリーモデル)
300 XC-W 980,000円
150 XC 750,000円
※すべてメーカー希望小売価格(本体価格・消費税込)。
2013年も Ready To Race な KTM がシーンを大いに沸かせてくれそうだ。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!