Vol.27 ユーザーからの問い合わせ①

掲載日:2014年11月25日 モタード魂    

文/小布施 倫行(CP sports)

掲載日/2014年11月25日  文/小布施 倫行(CP sports)

リバウンドなどの調整項目がない場合
ベーシックなサスペンションの調整法

スーパーモタード車におけるサスペンション、またポジショニングの話を 前回 しましたが、それについてユーザーより問い合わせをいただきました。

文章内に『ダンパーアジャスト』という言葉がでてきましたが、これは『リバウンド』などの設定項目のことを指すでしょうか? その場合は、フロントに調整項目のない国産車の一部は、そのままで乗って、リアだけ標準数値(説明書通り)に調整して乗ってみる、ということでよろしいでしょうか?

はい、それではこれについてお答えしたいと思います。

ユーザーさんの言われるとおりアジャストに関して、標準でフロントもリアもアジャスト機能のないサスペンションでは『スプリングだけでも調整できれば』より良いということで理解して結構です。

この点については、詳しく知りたいとすると、個体別に情報が必要なこととテストランなどの時間も使うことになり、特別な意識を持った方だけが必要なことと思いますが、せっかくご質問いただいたので、少し難しいお話をしたいと思います。

スプリングレートをチェック
オイル粘度もキーワード

スプリングの役目は「サスペンションの動く量」、すなわちストローク長を司ると考えて下さい。ダンパーの役目は、「そのストローク量での動く時間を稼ぐためのもの」と考えて下さい。

ダンパーアジャストについて、ダンパーのことをショックアブソーバーとも呼びますが、現状ではオイルを利用してバネの動きや衝撃を和らげて不必要にサスを動かさないための装置になります。ご指摘のように、スポーツモデルや海外車にはアジャスターが装備されていますが、国産車などの機種にはすべてに装備されているわけではありません。サスペンションが沈む時に勢いで沈みすぎないために調整するのが、『コンプレッションアジャスター』で、沈んだサスペンションがスプリングの力で戻りすぎないよう調整するのが、『リバウンドアジャスター』です。

ダンパーアジャスターの装備されてない機種では、リアのスプリングアジャスターを調整することで、沈み量を見ながら、体重に適したセッティングを行います。スーパーモタード車のリアの場合、その沈み量は90mm~98mm程度を推奨します(サグのことです)。軽量車両(~250cc)ではやや多めに、それ以上では少なめに考えて下さい。

フロントは、スプリングアジャスター装備の機種はほとんどないので、スプリング単体を選ぶことになりますが、体重~65kgの人でおよそ『バネレート4.0N/mm~4.3N/mm』のスプリング。体重65kg~90kgの人で『4.3N/mm~4.6N/mm』のスプリングをお薦めします。スプリング交換を行えば、ダンパーアジャストは標準値で構わないと考えます。つまり、アジャスト機能なしのサスペンションでも性能面で劣っているとは思わないということです。

それに、アジャスターがなくとも、セッティング方法があります。むしろこちらの方が重要です。

国内外のオイルメーカーから、粘度の違うクッションオイルが出てますので、これを混ぜて狙いの粘度を作り、フロントサスペンションはその量を調整することでベストなセッティングを導き出せます。リアは、バルブを調整してセッティングできます(どちらも、分解して行う作業)。

小布施 倫行
Michiyuki Obuse

レーシングカートのワークス/開発を経て、ホンダ系でのワークスマシンの開発とレーシングスリックタイヤの開発を担当。1990年に長野でCP sportsを創業、事業を開始する。CP sports発足後はロードレース地方選手権チャンピオンを輩出、モトクロスでも全日本選手権で上位シングルのライダーを輩出し、1998年の長野オリンピックではボブスレーのテクニカルディレクターを務め、日本チーム史上最上位を得る。その後、モタードの全日本に専念し、レーシングパーツ開発とモタードスリックの開発も担当し、2006年にCRFで、2010年にハスクバーナで全日本モタードProクラスチャンピオンを獲得する。06年より全国各地でのモタードスクール・講座もしていて、受講者の中には全日本モタードの優勝者も出ている。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索