Vol.25 2種類のホイールを使い分けるスーパーモタード

掲載日:2014年10月24日 モタード魂    

2種類のホイールを使い分けるスーパーモタード モタード魂

掲載日/2014年10月24日  文/小布施 倫行(CP sports)

スーパーモタード車のドレスアップ&チューニング
足回りのホイールとブレーキについて

前回までスーパーモタード車について、各社のモデルを例に挙げてこの世界のことを説明しましたが、今回は足回りについてお話をしようと思います。

 

オートバイにとって足回りとは、2つしかないタイヤを路面に伝える重要な要素。また、路面の状況をタイヤ、サスペンション、フレームを通じてライダーまで伝える役目もあり、双方向に情報のやりとりをしながら、ライダーのコントロールする意思を的確に伝達するためにあります。

 

それほど重要な箇所で、優れた足回りでは加速・減速・コーナーリングを確実にし、ライディングが楽しく安全なものになります。モタード車にとって足回りの選択肢は多くあり、ドレスアップのみならず、チューンナップまでと幅広くセットアップする方法があります。今回はこれについて、ライダーの好みや使用環境などを交えて説明をします。

 

まず紹介するのは、キャストホイール。何故最初に紹介するかというと、1番目立つパーツであり、オフロード車では見られないルックスを演出できるという点が特徴的だからです。代表的なブランドでは、マルケジーニやゲイルスピードが挙げられますが、キャストホイールの利点はルックスだけではありません。スポークホイールに比べ高剛性で、高速走行では抜群の安定感をもたらし、路面の状況がリニアに伝わる効果もあり、レーシーな乗り味を感じる事ができる点です。

 

それ以外にも、スポークのメンテナンスが不要なことやチューブレスタイヤを履けること、加えて修理・修正が可能で長寿命、などなど……、多くのメリットが挙げられます。

 

対して、オフロード車では標準的なスポークホイールはと言うと、キャストホイールより柔軟性があり、サスペンション的な働きもしてくれます(スポークホイールは適度にたわむ構造をしています)。それにより、レーシーな鋭さよりグリップ感重視の柔らかさを狙うライダーに好まれます。こちらはブランドのラインナップで、幅のサイズUPやカラーをパーツごとに選択が可能で、ハブ、スポーク、リムのカラーをそれぞれ別々に選ぶこともできます。

 

ブランドを挙げると、ハーンホイール、TGRホイール、アルピナホイールなどです。それから、純正ハブを利用しながらワイドリム化のキットもあります。カラリングはアルマイト仕様のスグレものでもあります。また、スポークホイールでもチューブレスキットを装着すると、その名の通りチューブが要らなくなり、チューブレスのハイグリップタイヤもチョイス出来るようになり、大幅な軽量化にもなります。

 

これらホイールの効果は、もちろん街乗りでも効果を発揮しますが、レースシーンにおいては必須のアイテムで、バトルに必要なワイドタイヤに合わせて必要なサイズをチョイスし、タイムアップに貢献します。また、スライド走行の安定化にも寄与し、走行ラインにも影響します。オフロード車をベースにしたスーパーモタード車の場合、リム幅がワイドでないこともあるので、1度ご自分のマシンのサイズを確認して、ドレスアップやチューニングしてみることをお薦めします。

 

次に挙げるのは、ブレーキシステム。ブレーキ全体の中で1番重要なアイテムは、フロントブレーキローターです。まず変更したいのがローターの大径化。現在の主流は直径320mmが定番となっています。ブランドでは、ブレンボ、ブレーキング、ベルリンガー、モトマスターなどの選択肢があり、キットでマスターシリンダー/キャリパー/キャリパーサポート/ローターをセット交換するも良し、マスター/キャリパーは純正でローターとキャリパーサポートだけ交換するという方法もあります。

 

『キャリパーサポート』とは、320mmローターを取り付ける場合で言うと、キャリパー取付位置が小径ローター時の(オフロード車などの240mm~290mm)位置から320mmの位置まで外径方向に15mm~40mm移動した箇所でキャリパーを取り付けるための部品です。ラグマウント(ローターに対してキャリパー取付け面が平行)と、ラジアルマウント(ローターに対してキャリパー取付け面が垂直)の2種類があります。

 

ローターがブレーキ全体の中で1番重要と言うのの1つがローターの高温発熱防止で、小さく薄いローターで強いブレーキングをすると、摩擦熱の影響を強く受け、高熱で変形したりブレーキフルードの沸騰を招き、正しい制動力を失うからです。1度変形したローターは元に戻らず、交換しなければならないので、注意が必要です。このことからも、本格的なスーパーモタード走行をするのであれば、ロータ径の拡大は必須と言えるでしょう。

 

キャリパー/マスターシリンダーを交換する際も選択肢があり、ブレンボ、ニッシン、ベルリンガー、モトマスター、マグラなどが挙げられます。主流は、ラジアルポンプ(マスターシリンダー)と4ポッド(キャリパー)で、少ない握力でもしっかりブレーキングできる仕様になります。

 

また、ブレーキフルードも点検や定期交換が必要で、使用するスペックはDOT4以上を強く奨めます。ブレーキラインとして、ホースもステンメッシュが良いでしょう。ルックスも良くなり、損傷のリスクも減り、またブレーキのタッチも向上します。取付ボルト廻りをアルマイトカラーでドレスアップすることもできます。

 

フロントブレーキは大変重要で、バイクを減速し止めるためには最も必要なパーツです。リアブレーキとは比較にならないほど効力を発揮しますので、レースシーンおいては必ず見直すパーツであり、真っ先に取り組む箇所です。注意は、ブレーキシステムはこれほど最重要パーツのため、安易な取付・交換は避け、知識と経験のある技術者の作業で行って欲しいということです。

 

今回のまとめとして、これら足回りに重要なパーツを有するスーパーモタード車を解析してみると、アスファルト路面でオフロード車よりグリップの良いタイヤによりアベレージの高い走りが可能で、オンロード車なみのコーナーリング、強力なブレーキ能力を合理的に使い、柔らかく長いサスを利用することによりマシン全体の性能を最大限に引き出せる運動性能を持たせることができます。また、これらの変更は、オフロードセクションを高いパフォーマンスで走れる性能を有することにもなります。

 

街中や峠道、またはサーキットなどのアスファルト路面でより高いパフォーマンスを可能にする足回り、1番の違いはタイヤであり、その性能を発揮させるホイール。コーナーに侵入するブレーキング性能はオンロード車に匹敵するほどになり、フロントフォークを沈ませながらラインをトレースする。この時、強力なブレーキを利用し、その長いストロークを発揮してオンロード車より小回りをすることもできます。フロントブレーキは単に止まるだけのアイテムではなく、曲がるためのツールでもあるのです。ドレスアップや強化したタイヤ、ホイール、ブレーキシステムは、スポーティに演出したそのルックス通り、ワンランク上の走りへと高めてくれるはずです。

 

次回は足回りの続きとして、サスペンションと走りの関係について迫りたいと思います。

 

 

小布施 倫行
Michiyuki Obuse

レーシングカートのワークス/開発を経て、ホンダ系でのワークスマシンの開発とレーシングスリックタイヤの開発を担当。1990年に長野でCP sportsを創業、事業を開始する。CP sports発足後はロードレース地方選手権チャンピオンを輩出、モトクロスでも全日本選手権で上位シングルのライダーを輩出し、1998年の長野オリンピックではボブスレーのテクニカルディレクターを務め、日本チーム史上最上位を得る。その後、モタードの全日本に専念し、レーシングパーツ開発とモタードスリックの開発も担当し、2006年にCRFで、2010年にハスクバーナで全日本モタードProクラスチャンピオンを獲得する。06年より全国各地でのモタードスクール・講座もしていて、受講者の中には全日本モタードの優勝者も出ている。

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