掲載日:2010年12月14日 バイク基本整備のイロハ › 工具の使い方実践
バイクに使われているビスやボルト、ナットを緩めたり締めたりする際に欠かせない工具。カスタムやレストアといった大がかりなバイクいじりだけでなく、日常的な整備やメンテナンス作業でも工具が必要となる場面は多いもの。ここでは、さまざまな工具の種類や使い方の紹介を通じて、楽しくバイクいじりを実践し、トラブルを未然に防ぐテクニックを解説しよう。
雌ねじ製作やねじ山修正に便利なタップを
連続的に使えるようにするタップホルダー
ここ数回、ソケットツールをテーマに話を進めてきましたが、そこで何度となく触れてきたのが「汎用性の高さ」です。ラチェットレンチとソケットを、必要に応じてエクステンションバーやユニバーサルジョイントと組み合わせることで、スパナやめがねレンチでは届かない場所にあるボルトやナットを締めたり緩めたりできるソケットツール。その利便性を知って、さまざまなツールを購入している人もいるのではないでしょうか。
こうした観点からすると、今回紹介する工具はソケットツールの中でもかなり特殊な部類に分類されるといって良いでしょう。何と言ってもこのソケットは、ボルトやナットではなく、タップを回すためのものなのです。タップとは、ボルトやビスをねじ込む際に、相手の素材に雌ねじを製作するために必要な工具であり、自作や工作が好きな人の中にはタップとそれと対になるダイスのセットを持っている人もいるかもしれません。
このタップという工具は、ボルトのサイズに適合したサイズがあって、例えばM6でピッチ1.0mmのボルトが入る雌ねじを製作するには、M6-P1.0というサイズのタップが必要です。ドリルのように、タップは素材に食い込みながら進みますが、ドリルに比べれば極端に遅い回転速度でジワリジワリと進むため、タップで雌ねじを切る作業(タップを立てるとも言います)は比較的幅の広い一文字ハンドルを用いて、あらかじめドリルで貫通させた下穴に対して斜めにならないよう、慎重に行わなければなりません。
一般的なタップハンドルは、タップに直接取り付けて使用するため、平面上に雌ねじを製作する場合は問題ないのですが、タップが加工部分に潜り込んでしまうような深い場所にある場合や、タップハンドルの回転部分に障害物があるような場所では、使用に制限を受けることがあるのが弱点となります。そうした状況に対応するため、軸長の長いタップもありますが、ホームセンターなどで購入できるリーズナブルなタップ&ダイスセットではタップの軸長が短いことがほとんどです。
そんな状況で重宝するのが、ソケットツール専門メーカーのコーケンが製造する「タップホルダーセット」です。タップの軸は丸軸ですが、端部はタップハンドルをセットするために四角になっていて、一見するとショートタイプのソケットみたいに見えるタップホルダーがこの四角部分にフィットするようになっています。この四角部分はタップのサイズによって異なるので、ホルダーもタップサイズに応じて必要になるのですが、ソケット状のホルダーを用いることでいくつものメリットが生じます。
最も顕著な利点は、作業場所が通常のタップハンドルでは回せないような深いところにある場合でも、ホルダーにエクステンションバーを接続すれば届くことです。これはシリンダーヘッドのプラグの雌ねじや、周囲に邪魔者があるクランクケースの雌ねじ修正で絶大な効果を発揮します。また、ここで紹介しているセット工具のハンドルにはラチェット機構が組み込まれているので、ハンドルが回せないような状況でも、いちいちハンドル本体を掛け替えることなく、タップを連続的に回転させることが可能になります。
また、古いバイクのメンテナンスやレストア作業では、錆やゴミの残った雌ねじのクリーニングを目的にタップを立てることがありますが、そんな時にタップをホルダーにセットして回せば、軸を指で摘むよりも大きなトルクで、しかしながらハンドルを付けた時のようにハンドルがどこかに当たるかどうかを気にすることなく、ゴミさらいができるのです。
このタップホルダーの差込角は3/8インチで、付属のエクステンションバーやタップハンドルばかりでなく、すべての3/8インチソケットツールが使えるのもこの工具の特徴です。さらに、8サイズに対応するタップホルダーはそれぞれ単品でも販売しているので、いきなり全サイズは金額的にもちょっと……という場合は、必要なサイズから順番に揃えていくこともできます。
ソケットツールの中では稀な、単機能ツールであるタップホルダー。タップ自体、日常のメンテナンスでそれほど出番が多い工具ではありませんが、より快適にタップ作業を進める上ではとても有効なアイテムと言えるでしょう。
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