掲載日:2025年01月21日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
HONDA GROM
124ccの空冷OHCエンジンと4速マニュアルミッションを持つ初代グロムが発売されたのは2013年。小柄で扱いやすく、個性的なデザインのボディに倒立フロントフォークや前後ディスクブレーキ、ワイドサイズの前後12インチタイヤを装着するなど、原付2種の中でも本格的な装備でたちまち人気となった。
2016年にはヘッドライトのLED化やマフラーがダウンタイプに変更されるなど、見た目を一新。その後2021年にはフルモデルチェンジが行われ、エンジンは新設計の従来よりもロングストロークの123ccを採用。燃料タンクの容量も5.7Lから6Lへと微増したほか、ミッションも4速から5速となり、スタイリングもよりホビー感のあるものに変更された。また、あわせてフロントブレーキに1チャンネルABSが搭載された。
今回試乗した2024年モデルは、基本的な車体構成自体は2021年モデルを踏襲したものだが、外観が変更されている。具体的には、ヘッドライトカバーとシュラウド、サイドカバーのデザインがよりシャープな形状に変更され、グロムらしい個性的で遊び心あふれるスタイリングを継承しながら、よりバイクらしいスポーティなイメージとなっている。
また、この変更に合わせてナックルバイザー、メーターバイザー、アンダーカウル、リアキャリア、サドルバッグ、シートバッグ、USBソケット(Type-C)など、日常での利便性やツーリング時の快適性を高める純正アクセサリーが設定された。これによって、通勤通学の足からツーリングまで、使い方や楽しみ方の幅がより広がったのは嬉しいポイントだ。
パッと見はコンパクトなボディに見えるグロムだが、実際にまたがってみると身長170cmの筆者が乗っても窮屈に感じることはない。実は2021年にモデルチェンジした際、ハンドルが少し高くなり、シートもフラットな形状に変更されている。これにより、上半身がよりリラックスした状態で乗れるようになり、ライディング中のシートポジションにも余裕が生まれたのだ。
走り出すと、車体バランスの良さがとてもいいことに気が付く。タイヤサイズは前後12インチと小さめだが、ニーグリップしやすいタンクカバー形状の効果もあってか、東京都内の混雑する道路でノロノロ運転をしても低速でのふらつきはほぼなく、安定感は抜群だ。
2021年のモデルチェンジでロングストローク化されたエンジンは、十分な低速トルクがあり、信号待ちからのスタートダッシュでもモタつくことなく流れに乗って走れる。アイドリング時はもちろん、極端に回転数を上げなければ音も静かで振動もきわめて少ないため疲れづらく、走っていてとにかくストレスがない。そのまま都心部を離れ、信号が少なく流れの速いバイパス状の道路を走った際も、5速化されたミッションのおかげもあり、余裕をもって走行することができた。
郊外のちょっとしたワインディングを走ってみると、5速ミッションの楽しさと実用性の高さを実感する。勾配の急な山道では排気量ゆえのパワー不足を感じることもあるが、緩やかなアップダウンを繰り返すようなワインディングでは、欲しいパワーを瞬時に読み解き、適切なギアにチェンジするという動作が、バイク本来の楽しみ方をあらためて教えてくれるようで自然と笑みがこぼれてしまう。前後のサスはスポーティな走り方をしても追従性がよく、路面のギャップを乗り越えた際の突き上げも少ない。できればリアサスがプリロード調整可能なタイプならもっといいのにな、と思うのはさすがに欲張りすぎか。とにかく、ガチャガチャとギアチェンジを繰り返しながら軽いボディをヒラリヒラリさせつつコーナーをクリアしていく行為は、パワーあふれる大型バイクで走るのとはまた違った楽しさと達成感がある。
試乗の締めくくりとして河原のフラットダートに乗り入れてみたが、動きのいいサスペンションとコンパクトなボディで足つきがいいこともあり、多少荒れた路面でも不安なく走ることができた。これなら、キャンプ場や山奥の温泉へのアプローチなど、ちょっとしたダートなら無理なく入って行けるだろう。
グロムは小回りの利く日常の足のほか、近場の日帰りツーリングはもちろん、豊富な純正アクセサリーを装着すれば、ロングツーリングも難なくこなすだけの実力を持ったマシンだ。ビギナーの入門用としてはもちろん、ビッグバイクに乗るベテランのセカンドバイクとしても十分におすすめできる、様々なバイク遊びの幅を広げてくれる懐の広いマシンといえる。
ヘッドライトはLEDで、発光部は2段になっており、上がロー、下がハイだ。ウインカーはバルブタイプで、ホンダ伝統のウインカーポジションも装備。
フル液晶のメーターはモノクロだが直射日光の下でも見やすい。ギヤポジションや時計、燃料計、平均燃費などが表示できる多機能タイプだ。
ハンドル左側にはウインカー、ホーン、ヘッドライトの上下切り替えスイッチが並ぶ。
ハンドル右側はスターターとキルスイッチのみとシンプルだ。
モンキー125やダックス125にも採用されているカブ系の横置きエンジン。内径×行程は50.0×63.1mmとロングストロークで、最高出力は7.4kW(10PS)/7,250rpmとなっている。
シートは座面が広くほぼフラットで、シッティングポジションの自由度は高い。
シートを外すとバッテリーやヒューズボックスにアクセスできる。車載工具はないが、ヘルメットホルダーは備えている。
シートの裏側には書類を入れるスペースが設けられている。
ステップは可倒式で、チェンジペダルと共にラバーを備えている。
ブレーキレバーはスチール製のシンプルなタイプを採用。
リアサスはモノショックで、調節機構のない極めてシンプルなものとなっている。
エアバルブはL字型を採用しているため、ガソリンスタンド等でのエア充填もしやすい。
フロントサスは倒立式を採用。フロントブレーキのみABSを備えている。タイヤサイズは120/70-12 51L。
リアのタイヤサイズは130/70-12 56L。銘柄は前後ともにタイ製のVee Rubberを履く。
テール/ブレーキランプはLEDを採用。ウインカーはバルブ式だがレンズが大きく被視認性は高い。
テスターの身長は170cmで足は短め。グロムのシート高は761mmで、片足、両足共にかかとまでしっかりと接地する。
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