【ホンダ グロム 試乗記】日常が輝きだす! どこをどう走っても楽しいファンバイク

掲載日:2021年08月19日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/淺倉 恵介

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HONDA GROM

人気の125ccファンバイクHONDA GROMがフルモデルチェンジ。最大のトピックは、ボア×ストロークが見直され、新たに5速ミッションが採用され、大きく進化したエンジン。絶対性能を追求するカテゴリーではないにも関わらず、なぜこれほどの大改変が施されたのか? 実際に新型GROMで走りこんで、その真意を探ってみた。

125ccブームの火付け役的存在のGROMが
エンジンとエクステリアを全面改良

今、125ccクラスがアツい。かつて、二輪免許が必要なのに高速道路を走れない等、中途半端なカテゴリーとされていた125ccクラス。だが、法改正によって免許が取得しやすくなり、車体価格を含めたイニシャルコストが低いことで、新たなユーザー層も取り込みに成功。そして、小排気量ならではのバリエーション豊かなラインナップも人気の一因。様々なスタイルのバイクが存在しているが、その125cc人気を牽引する一台がホンダのGROMだ。ホンダ伝統の横置きエンジンを搭載、前後12インチホイールを採用したコンパクトな車体は誰にでも親しみやすく、シャープさとユーモラスさが見事にバランスしたデザインも秀逸。そのGROMがエンジンとエクステリアを一新して登場した。

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ホンダ グロム 特徴

エンジンは内部パーツをほぼ新設計
改変箇所は車体の隅々にまで及ぶ

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今回のフルモデルチェンジで最も注目すべきポイントが、ミッションが5速化されたこと。先代モデルまでの4速ミッションと比較すると、トップギヤこそハイギヤ化されているが、1速から4速まで全てのギヤがローギヤ化。二次減速比もローギヤ化されているので、全体的にクロス傾向で加速重視、常用域での扱いやすさ重視の設定といえるだろう。

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また、エンジンのボア×ストロークが、先代モデルのφ52.4mm×L57.9mmから、φ50mm×l63.1mmとロングストローク化され、圧縮比も9.3:1から10.0:1に上げられた。ミッションに5速が追加されたことで、エンジン自体を高回転まで回さずとも最高速が確保され、より低中回転域のトルク特性を重視したエンジン特性を持たせることが可能となったわけだ。

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車体は基本的に先代モデルのそれを踏襲するが、ハンドルとシートの形状が見直されライディングポジションはよりリラックスしたものに変更。ホイ−ルは、マッシブなイメージの5本スポークタイプに変更。1チャンネル制御のABSも標準装備。フルLCDメーターには、REVインジケーターとギヤポジションインジケーターも新採用された。

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ホンダ グロム 試乗インプレッション

5速ミッション化で走りの快適性が向上
大きく進化した”小さな巨人”

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マシンにまたがると、ポジションは思った以上に大柄。いや、もちろんコンパクトではあるのだが、グリップ位置が上げられたハンドルのおかげで、アップライトな傾向が強まった上半身の姿勢は、125ccの排気量を感じさせないもの。ステップに足を乗せた時も、膝の曲がりは意外なほどリラックスしている。もともと、車格に反してポジションには余裕があったGROMだが、新型では更に快適性が増している。

さて、今回の試乗で一番興味があったのは、やっぱり5速化されたミッションだ。125ccという排気量は、どうしてもエンジンが猛烈にパワフルというわけにはいかない。限られたパワーを有効に使うには、ミッションの存在が重要になってくる。5速が追加されたことで、クロス方向となったギヤの設定は、パワーバンドの有効活用に大きな武器になるはずだからだ。

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全体的にローギヤ化されたことで、まず発進がラクになった。もっとも、従来モデルが発進に問題があったわけではないのだが……。街乗りは、2速と3速だけで用が足りる。2速で8,000回転回せば、車速は60km/hを超える。ロングストローク化の効果か、パワーカーブがフラットでトルクが結構粘るので、街中のゴー・ストップでは、ほぼ2速ホールド。車の流れに乗って走る時に3速。時々4速に入れるといった感じ。意識して入れようとしなければ、5速を使うことはなかった。

5速は4,000回転で約60km/h。そこからスロットルを開けても、加速しないとまでは言わないが反応は鈍い。バイパス的な流れの速い道路で流れに乗って走る時や、燃費走行を狙う時には有効だろうが、街中やワインディングで、5速の恩恵を受けられるシチュエーションは多くはないだろう。ただし、もし高速道路を走れるのなら、5速の存在が俄然大きくなってくる。5速の速度域は、100km/hの世界でこそ活きるはずだ。ひょっとして、GROM150なんてマシンが登場するのでは? そんなことを考えてしまったほどだ。

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とはいえ、現状の125ccエンジンであっても、5速化のメリットは少なくない。1〜4速がクロス&ローギヤ化したことで、パワーバンドがより使いやすくなり、走りのスムーズ感が違う。シフトアップ&ダウンのショックが小さいので、乗り手のストレスはかなり軽減されている。自分が、5速と4速どちらのエンジンを選ぶかと聞かれれば、迷わず5速だ。

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バーグラフ式タコメーター上のレッドゾーンは、8,000回転の少し上。実際のパワーも8,000回転から上は、徐々にパワーがタレてくるのだが、9,500回転あたりのレブリミットまで、しっかりと吹け切ってくれる。鈍重なシングルエンジンにありがちな、頭打ち感はない。よく回る、テイストはしっかりとスポーツシングルだ。その分、回しすぎて頻繁にレブリミットに当ててしまったのは、ココだけの話。

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最高出力は0.2PSアップして10PS、最大トルクに変更はない。それぞれの発生回転数は250回転上がっているが、体感できる程の違いはない。だが、パワー特性には変化が見られる。中回転域のトルクは明らかに力強くなっている。5,000〜7,000回転あたりは、スロットル操作に対する反応もリニアで、なんとも気持ちいい。

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ふと思い立ち、学生時代に通っていた峠をGROMで走ってみたのだが、これが面白くて仕方ない。もちろん、凄いスピードが出ているというわけではないのだけれど、マシンを振り回すのがこの上なく楽しく感じられ、必死になってコーナーに挑む快感に痺れた。バイクを操る面白さに、排気量は関係ないのだなと再認識させられた。ブレーキやサスペンションも“それなり”だ。けれどGROMは、パッケージとしての完成度がとても高い。だからこそ、走りの面白さを感じられるのだろう。いや、軽く小さな車体だからこそ、貪欲にバイクの楽しさを追求できる。GROMなら、もっと攻められる。GROMなら、どんな道にも入っていける。小さいけれど、面白さは無限大。新型GROMは、そんなバイクなのだ。

ホンダ グロム 詳細写真

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5速ミッションとロングストローク化で、フレキシビリティとスムーズさが向上したエンジン。トルク特性はフラットで扱いやすいものだが、高回転までキッチリと回る爽快な乗り味。

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マフラーはエキゾーストパイプの取り回しが変更、サイレンサーも大型化された。Euro5排出ガス規制にも対応している。

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燃料タンク容量は、先代モデルから0.3L増量の6.0Lを確保。燃費性能の高いエンジンなので、航続距離は十分以上。ダミータンクカバーとサイドカバーは、デザインのアクセントとなっている片側6本のボルトで脱着可能。

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フロントブレーキは、φ220mmローターと片押しピンスライド2ピストンキャリパーを組み合わせる。フロントブレーキにはIMU装備の1チャンネルABSを標準装備。

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リアブレーキローター径はφ190mm。ホイールデザインは、レーシーな5本スポークを新たに採用。スイングアームはスクエア形状のスチール製。

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リアサスペンションはモノショック式で、リンク機構は装備しない。ショックユニットにスプリングプリロード等の調整機能はない。

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ヘッドライトは上下2段式で、光源はLED4灯。ロービームでは上側2灯のみ点灯し、ハイビームで4灯全てが点灯する。光量は十分だが、ヘッドライトの位置が低いため照射範囲はそれなり。ウインカーはバルブ式。

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テールランプの形状は先代モデルを継承、光源はLED。

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シートはフラットタイプを新採用。着座位置の自由度が向上し、好みのライディングポジションが取りやすくなった。タンデムシートは小さく、エマージェンシー用レベル。

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シートはキーで脱着可能。バッテリー後部に空きスペースが存在するが、収納可能なサイズは小さい。

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フルLCDメーターには、シフトタイミングを知らせるREVインジケーターと、ギヤポジションインジケーターを新装備。走行距離はオド/トリップ切り替え式で、100kmあたりの使用燃料量も表示。

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ハンドルスイッチはホーンボタンが中央に配置された、ホンダの標準タイプ。ヘッドライトのパッシングスイッチは装備しない。

試乗ライダー プロフィール
淺倉 恵介
Web、雑誌を問わず、様々なバイクメディアで活動するフリーライター。カスタマイズやチューニング、レース関連に詳しいが、本人の嗜好は好き嫌いなくバイク全般に及ぶ。バイクの評価で一番重視しているのは”乗って面白いかどうか”だが、身長164cmと小柄なため取り回しの良さにもこだわる。

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