【SCOMADI TECHNICA125 試乗記】旧くて新しい、スクーターの新たな選択肢

掲載日:2022年08月23日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/淺倉 恵介

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SCOMADI TECHNICA125

今、一番勢いがあるとも言われる125ccクラス。国内外のメーカーが魅力的なモデルを大量にラインナップしている。中でも激戦区なのがスクーターのカテゴリー。取り回しの良い車格や手頃なパワーは、コミューターに最適な要素で大きな人気を集めている。その、125ccスクーターに魅力的なニューカマーが登場。それが、イギリス生まれタイ育ちのScomadiだ。

イギリス発の新興メーカーが作るスクーターは
古き良きイタリアンテイストと現代の技術を融合

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スコマディは、2005年に設立された、スクーター専業の新興メーカー。オーセンティックなスタイリングから、イタリアのテイストを感じるが、実はイギリスにルーツを持つ企業。同地でスクーターチューニングの第一人者として知られるスクーター・イノベーション社とPMチューニングの2社が手を組んで立ち上げたメーカーだ。

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スクーター・イノベーション社は、イノチェンティ時代の旧ランブレッタのスクーターを多く手がけ、スコマディはランブレッタのスタイルをモチーフにしながら、現代的な技術とセンスで再構築したバイクに仕上げられている。生産工場はタイに設けられ、スクーター・イノベーション社代表自らが、現地に移住し工場の運営と生産管理を行っている。

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日本国内への総輸入元は、輸入バイクで多くの実績を持つウイングフットが手がける。スコマディには空冷125ccエンジンを搭載する小型二輪クラスの車両と、水冷181ccエンジンを搭載する軽二輪クラスの車両が存在しているが、まずは125ccクラスの、Technica125とTurismo Tecnica125の2モデルからデリバリーをスタート。今回はTechnica125を試乗する機会を得た。

スコマディ テクニカ125 特徴

大胆なスタイリングが魅力の
メーカーメイドカスタムスクーター

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Technica125で、外観上最大の特徴といえるのが、大胆にカットされたサイドパネル。兄弟車であるTurismo Tecnica125が、オーセンティックなクラシックスクーター的なルックスを持つのに対し、エンジン周りを剥き出しにすることでチューニングスクーター的なスタイリングを演出している。

エンジンは排気量124.6ccの空冷単気筒SOHC2バルブで、最高出力7.2kW/7300rpm、最大トルク9.67Nm/7200rpmを発揮。チューブラースペースフレームを基本骨格に持ち、フロントカバーとサイドカバーの大物外装パーツはスチール製、アルミダイキャスト製やABS製の部品と組み合わせて車体を構成。ホイールは前後12インチで、前後共に油圧式ディスクブレーキを装備する。フロントフォークは乗り心地に優れる、トレーリングアーム式ボトムリンクを採用。

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特徴的な五角形ヘッドライトは信頼性の高いバルブ式、ウインカーとテールランプはLED。レッグシールドにはフタ付きのラゲッジを備えているが、シート下のメットインスペースは持たない。開閉式のシート下には、ガソリン給油口が設けられている。スクーターでは必須装備となっているUSBの給電ソケットは高性能。一般的なUSB Type-Cに加え、対応するAndroid端末であれば急速充電が可能なQC3.0の二つを装備する。

スコマディ テクニカ125 試乗インプレッション

ゆったりとしたエンジン特性と軽快な車体
ツーリングに出かけたくなる

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エンジンは良く言えばジェントルで扱いやすく、言葉を選ばなければ少々鈍い。スロットル操作に対して、回転の上がり方が穏やか。クラッチのセッティングも関係している部分だが、停止状態でスロットルを開けると、実際にマシンが動き出すまでにタイムラグがある。同クラスのスポーティさをウリにしたモデルと比べると“モッサリ感”があるのは否めない。

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ただ、その分扱いやすさは抜群だ。スロットル開度が大きめなこともあり、意識してガバッと開けても、マシンがめくれ上がったりコントロールを失うようなことはない。どんなシチュエーションでも躊躇なく全開にできるのが楽しい。ちなみに、スロットルグリップはかなり太め。個人的には太くてソフトなグリップが好きなので、とても気に入った。

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エンジン特性になかなかの味がある。低回転域では振動があり、渋滞路で四輪の後ろをノロノロ走っていたり、スロットルを閉じて回転が下がりクラッチが切れた時もハンドルにプルプルと柔らかい振動が伝わってくる。その振動が、高回転に行くに従って収束していき、トップエンドでは至極スムーズ。空冷単気筒エンジンでは異例なレベルでスムーズだ。全開領域でも乗り手を急かすようなアグレッシブさはないし、レスポンスが過剰になることもない。高速クルージングというレベルまでスピードは出ないが、バイクなりのハイスピードで流す走りが気持ち良い。例えば、信号がなく交通量も少ない田舎道を、自分のペースで走ったら凄く気持ち良いだろう。そんなことを想像させる走りの“味”を感じる。

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ハンドリングは素晴らしく軽快で、ステップワークに俊敏に反応する。このステップワークがキモで、ハンドルで曲げようとせずステップボードへの荷重でコーナリングをコントロールするのがオススメ。なぜなら、直進安定性自体は良好なのだが、ステアリング操作に対する車体のレスポンスが鋭いので、下半身の荷重コントロールの方が安定感を保ったまま走れるからだ。

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サスペンションはスプリングが勝っている感じで、もう少しダンピングが効いて欲しいとは感じるが乗り心地は良好。ギャップがあっても、ゆったりといなして吸収する感じだ。少し気になったのがブレーキ、前後でフィーリングが大きく違う。フロントはパンパンにマスターが張った硬い感触で、リアはいきなりレバーストロークを使い切ってしまうほど柔らかい。制動力自体に不満はないし、定石通りフロント+リアを組み合わせてブレーキングすれば問題無いといえば無いのだが……。しかし、そもそものところこのバイクは125ccクラスのスクーター。コスト面を考えても、あまり多くを求めるべきではないだろう。そうは言っても“もう少しっ!”が欲しくなってしまう、そんな質感の高さがテクニカ125にはあるのだ。

スペック上の車重は125kg(乾燥)と、125ccクラスのスクーターとしては軽くはなく、シート高も769mmと平均よりやや高め。だからといって、負担に感じるほどの重さではないし、小柄(身長163cm)な自分でも足つき性に不安を感じるわけでもない。一般的な成人男性であれば、取り回しに問題はないハズだ。ただ、体格と体力に自信がないと、足つき性で及び腰になる人はいるだろう。

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こんなにオシャレなデザインなのだから、より多くの人に乗ってもらいたい。ウェアまでバッチリ決めた女性ライダーが、颯爽と乗りこなしている姿などカッコイイに違いない。間口を広げる意味で、ローダウン仕様があれば……と考えてしまうのは贅沢だろうか? ともあれ、そんなことを思いついてしまう程、このスコマディに魅力を感じてしまったのだ。

スコマディ テクニカ125 詳細写真

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スチール製のサイドパネルは大胆にカットされ、他にないTechnica125だけのスタイルを実現している。

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空冷単気筒エンジンは、セルスタート/キックスタート併用式。リアサスペンションは、片持ちシングルショック。リアブレーキは油圧式ディスク。

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フロントブレーキはφ220mmのペータル形状ディスクに、2ピストンキャリパーを組み合わせる。前後連動ブレーキを装備。

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フロントフォークは乗り心地に優れる、トレーリングアーム式ボトムリンク。スリット入りディッシュホイールが個性を主張。

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ヘッドライトの光源は、オーソドックスなバルブ式。五角形のヘッドライト形状は、スコマディのデザインアイコン。

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インスツルメンツパネルはメーターケース一体型。アナログ式のスピードメーターとフューエルメーターを備える。

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右側ハンドルスイッチには、セルボタン、キルスイッチ、ハザードスイッチを装備。

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左側ハンドルスイッチには、ヘッドライトのHi/Lo切り替えスイッチ、プッシュキャンセル式ウインカー、ホーンボタンを備える。

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レッグシールドのラゲッジの上側に、給電ソケットを装備。USB Type-CとQC3.0に対応。電圧計も装備している。

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ラゲッジの容量はかなり大きめで、小さなカバンなど収納可能。

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テールランプとウインカーの光源には、省電力で長寿命なLEDを採用。コンパクトだが被視認性は確保されている。

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フロントカバーのエンブレムには、ベース部分にライトが仕込まれており発光する。

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シートはフラットで薄いが座り心地は悪くない。後端にある金属製のボタンを押すとロックが解除されシートが開く。

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シートを開くと、ガソリン給油口がある。タンクキャップはキー付きなので安心。

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センタートンネルは低く、ステップボードはほぼフルフラット。足を置く位置の自由度が高く快適。

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ビレット仕上げが嬉しいタンデムステップは、可倒式だが収納はできない。

試乗ライダー プロフィール
淺倉 恵介
Web、雑誌を問わず、各種バイクメディアで活動中のフリーライター。バイクチューニング専門誌出身で、カスタマイズやチューニング、レース関連に詳しいが、本人の嗜好は好き嫌いなくバイク全般に及ぶ。バイクの評価で一番重視しているのは”乗って面白いかどうか”だが、身長164cmと小柄なため取り回しの良さにもこだわる。

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