ヤマハの実証実験向け原付二種クラス電動スクーター「E01」試乗記

掲載日:2022年04月26日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

ヤマハの実証実験向け原付二種クラス電動スクーター「E01」試乗記の画像

YAMAHA E01

ヤマハが原付二種クラスの実証実験用EVスクーターとして開発し、大阪、東京のモーターサイクルショーでも展示して話題となったのがE01だ。7月からいよいよ実証実験としてリースが開始されるが、それに先立って4月15日にメディア向けの試乗会が開催された。今回はその様子と実車に乗ったインプレッションをお届けしよう。

ヤマハ E01 特徴

NMAXと同等かそれ以上の性能と
エンジン車から乗り換えても違和感ゼロを目指した

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E01は、原付二種クラスのスクーターとしての実用性と快適性、そして通勤など短~中距離の移動に適した走行性能を備える電動スクーターだ。二輪車専用に開発した高回転型空冷永久磁石埋込型同期モーター(IPMSM)と、大容量・高出力を実現した4.9kWhの固定型リチウムイオンバッテリーを搭載し、1充電での走行距離104km、最高速度100km/hを実現した。

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試乗の前に行われた説明会で、プロジェクトリーダーであるヤマハ発動機CV開発部EM設計グループの丸尾卓也氏は「従来の原付二種、具体的には125ccクラスのNMAXと同等か、それ以上の性能を目指して開発し、シート下トランクや12VのDCジャック、リバース機能の装備など、利便性もしっかり確保した実用的なマシンになりました」と述べた。

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さらに丸尾氏は「従来のエンジン車と同様の乗車姿勢や操作方法とすることで、乗り換えても違和感のないものに仕上げることにこだわりました」と述べ、その上で「EVならではの静粛性やクラッチがないことによるリニアな発進・加速感、回生ブレーキによるエンジンブレーキに近い感覚の自然な減速感を味わってください」と説明を締めくくった。

E01には使用環境に応じた3種類の充電器が用意されているが、コース脇には普通充電器と急速充電器が設置され、普通充電器では実際に充電できる状態になっていた。また、シート下スペースに入れて持ち運べるポータブル充電器も車両に搭載されていた。

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試乗は直線の多いコースと、スラロームを多めに配置した2つのコースで実施され、加速感や旋回フィーリング、取り回しなどを確認できるように配慮されていた。また、エンジン車との比較ができるように、NMAXも試乗車として用意され、乗り比べができるようになっていた。

ヤマハ E01 試乗インプレッション

加速感とリニアなレスポンスは
もはやNMAXを越えた!?

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いよいよ試乗がスタート。バッテリー込みのE01の車両重量は158kgと、ほぼ車格が同じNMAXよりも27kgほど重くなっている。しかし、乗る前の取り回しやスタンドを起こす動作などでは、重心が低いからか、それほど重い感覚はない。まずは、直線の多いコースから試乗してみた。

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メインスイッチを入れ、ブレーキを握りつつスターターボタンを押して離すと、いつでも発進可能な状態となる。E01には3段階の走行モードがあって、まずはスタンダードで走り出してみる。事前説明のとおり、振動がほとんどなく、シュルシュルっというわずかな音がするだけで、とてもなめらかに、しかし力強く車体が押し出されていく。エンジン車と違ってスロットルオンからのタイムラグがほとんどなく、弾かれたように車体が前に進む感覚は、電動アシスト自転車をかなり強力にしたようなスタート感覚だ。続いてパワーモードに切り替えると、加速の鋭さがさらに感じられるようになった。コーナーリングも、違和感が全くない。足元にはバッテリーやモーターなど、かなり重いパーツが詰め込まれているはずだが、それをほとんど意識することなく、何も考えなくても今までのスクーターと同じように走れるところに、非常に高い完成度を感じる。

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パイロンスラロームを走った際に、スロットルを大げさに開け閉めして走ってみたが、グリップの開度にリニアに反応して車体にパワーがかかるため、非常にキビキビした走りが可能だった。「もしかするとエンジン車より速いかも?」。そう思ってエンジン車のNMAXに乗り換えてみた。ゼロスタートから直線部の終端までの到達スピードをメーターで確認すると、なんとE01のパワーモードの方が速かったのだ。スラローム走行も、あらためてNMAXで走ると、スロットルオンからパワーが伝わるまでのタイムラグがとても気になってしまい、モタついた印象が残った。航続距離や充電時間の問題を抜きにして、純粋な走りの面でいえば、E01のほうが抜きんでている、と身をもって体感できた。

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E01はあくまで実証実験用に造られたマシンで、販売予定はないという。しかし、7月から始まる3カ月間のリースによる実証実験は、個人でも参加が可能だ。応募期間は2022年5月9日(月)~5月22日(日)まで、100台限定、リース料は月額20,000円となっている。興味のある方は以下リンクより、ぜひ申し込んでみてほしい。https://e01lease.yamaha-motor.co.jp/top

ヤマハ E01 詳細写真

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開発の狙いや車両の特徴について解説するCV開発部EM設計グループの丸尾卓也氏。

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200V電源を使った普通充電器は自宅等への設置を想定。約5時間で0→100%まで充電可能だ。

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急速充電器は約1時間で0→90%まで充電可能で、ディーラーやシェアリング等への設置を想定している。

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チャージポートは利便性を考えてフロント部分に設定されたという。

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従来のバイクのようにフロントを顔として扱わず、独自性を記号化したという独特のデザイン。

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メインスイッチ両脇には小さいながらポケットを装備。12Vのアクセサリー電源も備えている。

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左側ハンドルにはディスプレイの切り替えスイッチを装備。前側にはリバースボタンを備える。

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ハンドル右側には走行モードの切り替えボタンを装備。左側のリバーススイッチを押しながらこのモードボタンを押すと、1km/hでバックすることができる。

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シート下トランクスペースにはポータブル充電器が収納可能。自宅や勤務先等に持ち運ぶことができ、約14時間で0→100%まで充電できる。

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シート下トランクは約23L。ポータブル充電器なしだとヘルメットを収納できる。

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液晶メーターはバッテリー状態を把握しやすい。GPSと3G/LTE回線を搭載しており、各種車両情報を定期的にヤマハに送り、実証実験の分析や今後のEV開発へのフィードバックを行うという。

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フロントフォークやタイヤ周り、ブレーキなどはNMAXと同等の仕様だ。

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リアショックはがっちりとしたツインタイプを採用。アクスルシャフトにはカバードパーツを用いてEVのクリーンさと先進性を表現したという。

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シートは一般的なロングタイプ。シート高は755mmで、NMAXよりも10mm低いものとなっている。

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テール周りの灯火類は車体と一体化し、スッキリとしたデザインとなっている。

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試乗エリアには比較用として従来のエンジン車であるNMAXが用意され、乗り比べできるようになっていた。

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E01の開発に携わったスタッフ。生憎の天候だったが、様々な質問によどみなく答えてくれるなど、マシンに対する自信と愛が感じられた。

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