

掲載日:2015年01月21日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家健一 衣装協力/HYOD
道端に止めているだけで、美しいデザインが目を惹く。国産、輸入車を含めて最近のバイクは小排気量クラスにも魅力的なモデルが増えてきたが、K-16はその中でも異彩を放っている。車体を横から見るとスカスカで、エンジンを取り囲むフレームはまるで工芸品を飾る額縁のようにも見える。とかく豪華で複雑な方向に進化することが多いバイクをはじめとする工業製品において、このシンプルさ、潔い“切り捨て感”は実に気持ちがいい。
車体はロー&ロングで、一見するとクラシカルだが、よく見るとモダンな雰囲気もあり、低く構えた一文字のドラッグバーや、意外と起きたキャスター角、しっかり作られたスチール製クレードルフレームなど、スポーティな走りを予感させる要素が散りばめられていることが分かる。他ではあまりお目にかかったことがないスタイリングだ。
ライポジは前寄りのハンドル、ロングタンクと相まって極端なリア乗り。これで上体を伏せれば、大昔のTTレーサーのような雰囲気だ。薄革1枚のような本革シートはやや小ぶりで、大柄なライダーにはちょっと窮屈かも。どっかり座る感じではないが、自転車と同じ思えば、まあ納得。ステップは低めにセットされているので足元は比較的余裕がある。
エンジン始動はキック式。キャブレター仕様ということで、特に寒い時期はかかりが心配だったが、燃料コックを捻り、チョークを引いて、上死点を出して、スロットルを閉じたまま一気にキックアームを蹴り下げると、見事一発で目覚めてくれた。昔は当たり前だった、こうした“儀式”もバイクに乗る楽しみのひとつである。エンジンから漂う生ガスの匂い、スロットルを閉じたときのアフターファイアの弾ける音とともに昔の記憶が蘇る。若い人には新鮮であり旧い世代には懐かしい体験だろう。
エンジン出力は10psにも満たずパワフルとは言えないが、軽い車体のおかげでスタートダッシュはなかなかのもの。クラッチにやや唐突さがあるものの、一度発進してしまえば小気味よいシングルエンジンの鼓動感に包まれながら、テケテケと元気よく走り回る。低速に粘りがあり、4速ミッションもワイドレンジが故、排気量の割にはひとつのギヤでまったり流せるところもいい。そして、その気になれば、けっこうスポーティなコーナリングもできてしまう。余談だが以前、スネークモータースのサーキットイベントで、全日本クラスのレーシングライダーがK-16で本気のバトルを繰り広げていたのを見たことがある。タイヤも昔風のブロックパターンで、ステップもすぐに擦ってしまうが、それでもかなりのペースで攻めていた。見た目によらず素性はスポーティなのだ。
リジッドフレームということで路面からの衝撃を覚悟していたが、思いのほかゴツゴツ感は少なく、普通の感覚で乗ることができた。きっとフレーム自体で外乱を吸収しているのだろう。ブレーキは前後ドラム式ということで効きはそれなりだが、実用面での不具合はないはずだ。
このクラスには実用車が多いが、コイツに関しては100%趣味のバイクと言い切れる。1人乗りで何も積めず乗り心地も良くはない。でも、乗っていて楽しいし、心を元気にしてくれる。K-16はそんなバイクだ。
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